2日目

 イラストが趣味っつーわりに、ちっとも似てないイラストを描きやがる。


「アナタの似顔絵です✨」

「似てねえなあ」


 こんな顔はしてない。……と思う。コイツにはそう見えるのかもしれない。なんだか不安になってきた。あとで鏡を見よう。


「そうですか?」


 俺、ゲージュツについて詳しいわけじゃないが、ピカソのほうがまだ理解できる。なんだっけか。ゲルニカ?


「へのへのもへじのほうがまだ似とるで。貸してみ」


 サキガケ(仮)から鉛筆を奪い取って、スケッチブックの隅っこにへのへのもへじを描いた。へのへのもへじに上手いも下手もないが、バランスよく描けたんじゃなかろうか。


「おお✨」


 スケッチブックと鉛筆を返してやると、俺の描いたものをマネしてへのへのもへじを描いていた。絵描き歌でも教えてやればええんかな。


「うんうん✨」


 何回か描いて、会心の出来のへのへのもへじが完成したらしい。嬉しそうな表情を浮かべて、何度も頷いている。


「おめえ、森下に『宇宙人』だって言ったらしいな」


 森下は『宇宙人なので、手荒な扱いをすると✨』と脅されたらしい。トラバサミには右足首が引っかかっていて、その時は血のような、赤い液体が流れていたと。実際に捕まえた場所にも案内してもらったが、そのようなものは見つからなかった。だが、森下は嘘をついていないと思う。そんなつまらん嘘をついてもな。


「魁です✨」


 こっちが嘘をついている可能性は、ある。


「魁はなあ、今頃海の藻屑なんよ」

「海はしょっぱかったです✨」


 ――まあ、遺体が見つかっていないんだとヨメさんも言ってたし、ミラクルが起きてあのへんの島に漂着した魁の可能性がある、のかもしれない。


 魁と仲の良かった連中ほどコイツを怖がって会いたがらないんよ。そりゃそうか。一気に遠い存在になっちまった友が、一転して生贄だもんな。そういうジャガイモたちにこそコイツに会ってもらって、魁本人かどうかを聞き出してほしいもんだ。


 本人だったとしても儀式は遂行されるんだが。

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