坑道を進む
坑道を進み始めてどれくらいの時間が経ったのか……それにしても――
「……くらい」
「ゴブゴ」
「しかもじめじめしてる」
「ごぶご……」
「ってか本当に何も見えないし……」
「ゴブ~ゴ~?」
「……ありがと、心配してくれて……」
そう言って俺たちは、ゆっくりと手をつなぎながら進んでいく。
「……本当に、暗いし、じめじめしてるし……キプロスが暗いところで目が見えてなかったら詰んでたよ」
「ゴッブゴー」
そう言ってキプロスはたぶん胸を張った。
あの後、坑道を進んでた俺達だがすぐに坑道は暗くなって、俺は全く前が見えなくなってしまった。
始めはしまったと思ったが、キプロスはどうやらこれだけ暗くても見えるらしい。
「……そう言えばグラハムが、ゴブリンは洞窟を住処にするから夜目が効くって言ってたな……」
キプロスと友達になった後に俺は、グラハムにゴブリンっていう魔物について質問したことがある。
何でもこの世界のゴブリンという物は、思っていた物と少し違うらしい。
グラハム曰、魔物であることには変わりないらしいが、中には極稀に人間と仲良くなる個体もいるんだそうだ。
なんでも、ゴブリンの知能は非常に高く、経験を積んだゴブリンだと人間以上の知能を持った物も存在するらしい。
そんな知能の高い魔物だからこそ、人間と仲良くなり、友情を育むことがあるそうだ。
まあ、人間と仲良くなる個体と遭遇するのは、本当に極まれであり、人生百回繰り返してようやく一回会えるくらいの確率らしい……よくわかんないけど、とにかく低いらしいな。
「……本当、凄い確率だよ」
「ゴブ?」
「ん……ただの独り言、気にしないで」
「ゴブゴ~」
あ……あと、他にもなんか言ってたような気がするけど……あの時は眠たすぎてあんまり覚えてないんだよな……進化がどうこう言ってたような気がするんだけど……
「……あ」
考えながら歩いていたからか、俺は足をぶつけて思い切りつまずいてしまった。
「……おっとっと」
「ゴブゴ~?」
「ん、大丈夫……ちょっと転びかけただけ……ん?」
バランスを崩し、壁に手をついた瞬間、何かに触れた。
ツルツル、ごつごつ……
足は細く、六本。
頭から、二つの細い何かが生えてて……
「……っ⁉ 虫?」
「ゴブゴ―?」
そう言って思わず、手を放した俺だったが……何か、おかしい。
そう思って、俺はもう一度同じ場所に手を触れた。
「……ん? コレ、虫……じゃない? ねえ、キプロス俺が触ってる場所に何があるか分かる?」
「ゴブゴ―……ゴブー? ゴブゴ―」
そう、たずねてみたが……流石に分からなかった。
なんていうか、言葉が全く分からなかったんだ。
……今更だけど、感覚だけでよくキプロスの言葉分かってたもんだな。
なんて思って、ペタペタと触っていたら、ガコンッと腕が壁に埋まった。
「んっ⁉」
思わず俺が驚いて飛び去ると、壁がギギギと音を出して動き出す。
「ゴブゴ―⁉」
「一体何が起こってんの……?」
そう俺が呟いた瞬間、壁から大量の光が漏れ出したのだった。
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