レベル5

 あの後、ティアに振り回されへとへとになった俺は、グラハムにおぶられて家に帰ることになった。


「……子供って無限の体力持ってるのか?」


 そんな感想が出るのも仕方ない事だろう。

 因みに次の日、筋肉痛になった。

 めっちゃ痛かった。


 ……

 …………


 そしてそんなティアとの出会いから、半年の時が流れた。


 俺は何時ものように森に入り、魔物を狩りに出かける。

 この世界に転生してからずっと同じように繰り返しているからか、既に俺の日課になっていた。


 まあ、これ以外することも殆どないないってのもあるが……ほかにやることと言ったら定期的に村に行ってティアと遊ぶことくらいだし。


 うん。まあ、暇なのだ。


 とはいえ、暇つぶしの狩も強くなるための努力は努力。

 そのかいあってか、いつの間にかレベルは5に上がっていた。


 本当にいつの間にかだった。気がつけばレベルが上がっていた感じだ。

 ……それにしても、半年でようやくレベル1上がるなんて……結構レベルを上げるのは大変そうだ……が、ここで諦めたらただ死ぬ未来が確定するだけだからな。

 気を引き締めていかないと。



 ……

 …………

 

「……よし、討伐完了」


 そう言って俺が止めを刺したのはいつものウサギ……ではなく、巨大な蛙だった。


 当たり前のことだが、毎日森に入って毎回兎と遭遇するわけではない。


 森の中にはほかにも複数の魔物が生息していることが、この半年で分かった。

 

 例えば、今倒した蛙だったり、巨大な1mの蜂だったり、木に擬態してこちらを狙ってくる食人植物らしき存在も確認できた。


「……最初はびっくりしてたけど、今はもう慣れたよね」


 そう言いながら、ツタを切り裂き、流れるように懐から取り出した投げナイフを投げた。


 ナイフは、食人植物の核へ命中し、植物はみるみるうちに枯れていった。


「……結構、超人的な技術だよな。これ冷静に考えたら」


 しかも四歳児がだ。

 

「……さすがは、グラハムの血を引くだけはある」


 そう言いつつ、俺はナイフを拾い上げ、ついでに壊れた核を拾っておく。


 何でもこの核は母さん……ティア―シャさんの言うところによると、いい薬になるらしい。

 だから、倒したら取っておいてと言われた。


 そうそう、始めは狩りに行くのに反対していた母さんも、今ではすっかり俺が魔物を狩りに行くのを許可してくれた……っていうか、たぶんあきらめにも似た感じなんだろう。


 本当に、この半年でいろいろと変わったなぁ。


 そうしみじみと呟きながら、歩いていくと、湖に出た。


「……そう言えば、ここでゴブリンと会ったんだよな」


 ふと半年前に遭遇したゴブリン達の事を思い出した。

 あれからあのゴブリン達とは遭遇してない。


 今は何をしているのやら……


 そう思いつつ、俺は湖の周りを歩く。

 今日俺は、この湖にとある目的があってきていたのだ。


 今はその絶好の場所探し中。


「よし、ここらへんでいいかな」


 しばらくしていい感じの場所を見つけた俺は、新ウェポンを取り出しもう一度周りを見渡す。

 見晴らしよし、水草もいい感じ……魚が隠れる場所が多い。


「……よし、釣り始めるか」


 そう言って俺は、竿を振ったのだった。

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