強くなろう

その日の深夜、俺はベッドの中で寝返りを一度、二度打った。


 が……


「……眠れない」


 そう言って寝付けない俺は上半身だ毛起き上がらせると、ぐるりと一周家の中を見渡した。


「見た感じ、コテージみたいな……感じっぽいな」


 そう言って、ベッドから這い出た。



 立った時、少しクラっとしたが問題ない。


 俺は動きやすい服に着替えると、そっと窓から家の外に出た。

 ふと空を見上げれば満天の星空。

 都会だと一切こんな景色は拝めないだろうな。


「星が綺麗だ……」


 そう言いながら、ふと自分の手を見た。

 小さく……頼りない子供の手。


「強くならなきゃ、駄目だよな」


 少なくとも序盤の貴族たちを倒せる力を……

 一応、貴族たちが襲来してくるのは俺が十二歳かそこら辺の時。

 だが、今の俺はまだ四歳くらい猶予はまだ六年くらいある。


 だが、六年……か。

 長いようで短い時間だ。


「その期間で貴族を倒せる力、か……やれるのか?」


 きっと護衛の騎士もいる事だろう。

 つまり少なくとも、序盤の貴族を蹴散らす力というのは易々と騎士を葬り去れるくらいの力が必要という事になる。 


「騎士相手に勝つ……それも易々とできるのか?」


 仮想相手は戦闘に慣れた騎士だ。

 世紀末な世界じゃさぞや実戦経験豊富な事だろう。

 しかも相手は、フル装備だ。

 

 MMORPGで例えるならば相手はプロゲーマーの上に課金装備をふんだんに装備しているような状況だ。


 それに対してこちらは現状、無課金初心者。


 無理ゲーにもほどがあるというものだ。

 倒すなんて本当に無理ゲー。


「だけど……どうにかして強くならなきゃいけない」


 じゃなければ詰みという奴だ。

 

 だって、逃げる選択肢なんて……端からないのだから。


 ――――

【閑話休題】

 ――――


 次の日……

 ベッドに戻って二度寝していた俺は、いい匂いで目を覚ました。


 俺がベッドから這い出してリビングに行くと、そこには母さん特製の料理が置かれていた。


「ん……(ぐー)」

「あ、ラプラスおはよう」

「ん、おはよう」


 そう言って、俺は席に着く。

 昨日の夕飯は美味しかったから、朝ごはんも期待大だ。


「それじゃ、ご飯食べよっか」

「ん……父さんは?」

「お父さんは、今仕事よ。遅くなるらしいから先に食べちゃいましょう」

「ん、そういう……分かった」


 そう言うと俺は食卓に着く。


「それじゃ、いただきます」

「ん、いただきます」


 そう言って、食卓に並んであるジャガイモを手に取り頬張る。

 ペースト状にしてあるため、非常に食べやすく……そして、おいしい。


「あらあら、凄い食欲……もう体は心配ないのかしらね?」


 そう言って母さんはどこかホッとした様な表情を浮かべていた。

 まあ、確かに雷に打たれたのなら障害なりが残っていそうなものだが……今のところは何の問題もないな。

 

 もしかしたら、グラハムの息子だから異常に体が頑丈ってことかもしれない。火とか魔法喰らってもピンピンしていたわけだし……な。


 そう考えると、この身体が持つスペックは結構高いのかもしれないな。


 ま、それでも何もしなければそんな才能も意味をなさずに死んでしまうことになるわけなんだが、だからこそ……


「もぐもぐ(今日から、強くなるための計画を練らないとな)」

「ちょっと、食べながら話すのは行儀悪いですよ」

「ごっくん……ごめんなさい」

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