第2話 『フェイク』



 私たちは落ち合う駅近くにある目についたカフェに入り、

テーブル席で向かい合い対峙した。


『え~っと、取り敢えずお互いに自己紹介からよね。

 それで何注文しようかな~』


 などと、考えていたのに……。



 フロアスタッフが注文を取りに来る前に、遠慮もへちまもなく、

いきなりである。



『然る合コンがキッカケで桑山くんと知り合い、付き合ってる。


 桑山くんの気持ちは私よりも自分のほうへ大きく傾いている。

 やさしい桑山くんはなかなか別れ話を私に切り出せないでいる。

 だからきっぱりすっぱり桑山くんと別れてほしい』


と、そうその女性は涙ながらに私に訴えてきた。



 『はぁ~なんだそれっ!!  

 あきれたっ……。 


 くそっ、なんだっ、この女も圭介も。 


 なんだっ、なんだっ。 


 なんて身勝手なんだっ』




 私はその女に言った。



「とにかく突然の話で、まずは圭介と話しないとはじまらないと思う」と。


「圭介から何も聞いてないし、一方的にあなたからだけの

お話で何が本当なのかも今の私には判断しかねるわけで……。


 ひとつ質問してもいいかな?


 圭介は今日のこと知ってるの? 


 自分の口からは言いにくくてあなたを通して別れ話に持ち込もうと

しているの?」



 女は私の質問に大きく左右にかぶりを振った。




 「もうひとつ質問、付き合うキッカケだけど、どちらが

積極的だったの?」



 

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