第26話 嵐の血戦

西暦2032(令和14)年3月1日 ゾルシア共和国南部 パルタス州ラーグ沖合


 海上自衛隊護衛艦隊は、決戦を挑んでくるであろうガロア皇国海軍の大艦隊と、交戦状態に入ろうとしていた。相手は100隻近い大艦隊で勝負を挑んできており、先手を取らなければ数的不利で敗北の憂き目に立つ事になるだろう。


「よって、ダキアの者の力を借りて、姑息ながら有効な手立てを打つに至ったという訳だ」


 艦隊旗艦を担う広域打撃防衛艦「やまと」の戦闘指揮所CICにて、艦隊指揮官の海将補はそう呟く。外に目を向けて見れば、空には曇天が広がり、ごうごうと風が吹きすさぶ中、甲板は大粒の雨で濡れていた。


 手段は科学技術を十分に解する者達からすれば奇怪な事この上ないが、一体何を起こしたのかは理解出来た。ダキア王国から数人の魔法使いを招いて、魔法で人工的に風と雨を発生。さらにその規模を強化させて、人為的に台風を起こしたのである。


「今頃、敵さんは突然の嵐で動揺しているでしょうが…我らにとっては日本海と夏の太平洋で十分に見知ったもの。荒天の海とはどういうものか、皇国の皆さんには知ってもらいましょうか」


「ああ…だが、こちらも慢心は出来ん。自分達の立場も不利に陥れている上で戦いに挑むからな…自衛艦隊司令部に打電、『我、これより敵に死闘を挑む』」


「…正気じゃない…わざわざ海を荒らした上で戦いを挑むなど…」


・・・


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