11月11日

「今日は11月11日です! さて、何の日でしょう?」


 ヒカリちゃんがにっこにっこで、いきなり質問をしてきた。


「うーん? わから──」


 いや待て! 女の子がこういうことを聞いてくる時は、大抵何か特別な日だ。うかつに答えれば機嫌を損ねてしまうかもしれない。


 考えろボク……! 


「し、新台入れ替え日……?」

「違います……。ヒントは食べ物です」

「分かった! 串カツ田村の日だ!」

「ああっ、惜しい! 理論は間違ってないです!」

「今度こそ分かった! うめー棒の日だ! ちなみにボクはめんたい味が好きです」

「ああっ、近い! ちなみに私はたこ焼き味が好きです」

「うーん……」

「正解は──じゃーん! ポッキィの日でした!」


 ヒカリちゃんはポッキィを、目の前でかざす。


「あっー! なるほど! ポッキィの日があったねー!」

「そうなんです!」


 ヒカリちゃんは箱からポッキーを1本取り出す。


「という訳で、恋人とポッキィが揃えば、それはもうポッキィゲームをするしかないのですよ!」


 ヒカリちゃんは目をキラキラと輝かせて、そう言った。


「ポッキィゲームって、聞いたことはあるけど、どんなルールだったっけ?」

「お互いに一本のポッキィを両端から、くわえます」

「ふむふむ」

「そしてお互いに端から、ポッキィをガジガジと食べてですね〜、照れてしまって、途中で止めてしまったら失敗です!」


 ボクはその光景を想像してみると、カァーと頬が赤くなるのを感じた。


「うっ……/// 結構、恥ずかしいね、それ……」

「その羞恥心しゅうちしんがこのゲームのキモですよ! やってみましょう!」

「う、うん……!」


 ヒカリちゃんとボクは、お互いにポッキィを咥える。


 目の前のヒカリちゃんの綺麗な小顔に、ドキドキする。


「ふはーとれふ! (スタートです!)」


 合図と共に、お互いに端からポッキィをかじり始める。

 

 何口かすると、すぐにヒカリちゃんの顔が近づいて、口と口が──


「は、恥ずかしい///」

「あっー!」


 ボクは思わず、顔をそらしてしまい、ポッキィがポキリと真ん中で折れた。


「失敗です……」

「めちゃくちゃ落ち込んでる!?」

「いえ、まだまだポッキィは残ってますよ!」

「う、うん……!」


 そこから何ゲームプレイしても、ボクは羞恥心から、顔を晒して、ポッキィを途中で砕いてしまう。


「ううっ……全然、成功しないですね……」

「ご、ごめん……。だってヒカリちゃんが可愛いんだもん……」

「もぅナギサ君ったら/// そうだ、照れないように、事前に慣らしておきましょう♡」

「んっ!?」


 ヒカリちゃんはボクに抱きついて、チュッチュッしてきた。


「ナギサ君、大好きです♡」

「んっ……ボクも……んんっ!?」


 たっぷりとヒカリちゃんにむさぼられる。


「じゃあゲーム再開ですね!」

「これポッキィ、間に挟む必要あるのかな!?」


 さんざんキスで慣らしたお陰か、ようやくポッキィゲームが成功した。


 照れ臭かったけど、これはこれで新鮮だった。


「ふふっ、まだポッキーの残りはたっぷりありますよ!」

「これ残りのポッキィ、全部やるの!?」

「はい、そうです♡」


 脳がとろけそうなほどに、甘々なポッキィの日でした……。



 







 

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