ラブラブなお買い物

「そう言えばヒカリちゃん」

「はい、何でしょうか? ナギサ君」

「今日から、一緒に暮らすって言ったけど、荷物とか大丈夫なの?」


 彼女は学園用のカバンしか持っていないように見える。


「ご心配なく。そろそろですね」

「?」


 ボクが疑問に思うと、ピンポンとチャイムが鳴る。


「はーい」


 ボクがガチャッとドアを開けると、メイド服を着た女性がいた。


「失礼します。お嬢様のお荷物をお届けに参りました」


 彼女は大きなキャリーケースを横に置き、慇懃いんぎんに、ボクに向かって礼をする。


「あっ、はい、お疲れ様……です?」


 ボクが戸惑っていると、ヒカリちゃんもこちらに来たようだ。


「ご苦労でした」

「お嬢様これを」


 彼女はキャリーケースをヒカリちゃんに渡すと、そのまま去っていった。


「私の家のものです」

「ほ、ほんとにお嬢様なんだね……ヒカリちゃん」


 今更ながらに、とんでもない家の人と婚約をしてしまったのだという実感が湧いてきた。


「ボクとの同棲は、ヒカリちゃんの両親は認めてくれてるの?」

「はい、私のやまいの治療は気力との勝負でした。ナギサ君との約束がなかったら、耐えられなかったと思います。その事に両親は深く感謝しており、同棲も結婚も認めてくださいました」

「そっか。認めてくれているだね。ボク達のこと。だったら、結婚する前に挨拶に行かなくちゃだね!」

「はい! 私もナギサ君のご両親にご挨拶したいです!」


 未来のことを語るヒカリちゃんは、とっても嬉しそうで、眩しいくらいに輝いていた。

 




「そろそろ夕食の時間ですね」


 ヒカリちゃんが時計を見てそう言った。


「うん、どうしよっか?」

「普段は何を食べているのですか?」

「うん! カップラーメンが主食だよ!」

「!?」


 彼女は絶句していた。


かたよりまくってるじゃないですか!」

「そんなことないよ! 塩とか醤油とか味噌とか豚骨とかペペロンチーノとかバランスよく食べてるよ!」

「味の話じゃなくて、栄養の話です! 全く……結婚した途端に、旦那様が病気で倒れるなんて嫌です。もう離れたくない……ですよ?」

「ヒ、ヒカリちゃん……」

「という訳で、今日から私が栄養たっぷりの食事を作りますね!」


 彼女はむんと力こぶを作る。できてはなかったけど、そこがまた愛らしかった。


「ヒカリちゃん、料理作れるの?」

「ふふっ、花嫁修行でたくさん練習したんです! 何が食べたいですか?」

「わぁ、スゴイよヒカリちゃん! じゃあ、ボクはカレーが食べたいかなぁ!」

「了解です! じゃあ、ちょっと冷蔵庫を──」


 冷蔵庫はものの見事に空っぽだった。


「……それじゃあ、近くスーパーに買いに行きます?」

「うん、それじゃあ行こっか!」


 ボクは彼女に手を差し伸べる。


「は、はい……」


 彼女は照れくさそうに、手を取った。もしかしたら、ヒカリちゃんは自分からは積極的だけど、相手から何かされるのには弱いのかも?


 ちょっと試してみようかな……。ボクの中のイタズラ心がふつふつと沸く。


「ヒカリちゃんは本当に可愛くなったよね……」

「きゃあああああああ! な、な、な、何言ってるんですかぁ!///」


 彼女の顔が真っ赤になる。やっぱりそうみたいだ。ふふっ、いい事を知ったな。


「大好きだよ、ヒカリちゃん……」

「きゃああああああああああ! も、もうらめぇ……か、勘弁して下さいよぉ、もぅ///」


 照れてるヒカリちゃんも、めちゃくちゃ可愛かったのでした。





 スーパーに行く途中に、ヒカリちゃんが両腕で、ボクの右腕に抱きつく。


 彼女の豊かな胸の感触が、ダイレクトに右腕に伝わる。


「ちょっ、ヒカリちゃん!?」

「ふふっ、どうしたんですか?」

「あ、当たってる……」

「ふふっ、何が……当たっているんですか?」


 ヒカリちゃんは小悪魔的な笑みを浮かべている。


「お……」

「お……? なんです?」

「おっぱ……」

「おっぱ?」

「おっぱっぴー?」

「…………」

「ううっ、ヒカリちゃんの意地悪ぅ……」

「くすくす、さっきのお返しです!(照れてるナギサ君も可愛いですね)」


 一枚、上手うわてなヒカリちゃんでした……。


 

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