1.3.3 小泉詩音の異世界転移

 聖剣。


 魔物のコアを唯一打倒することのできる精霊の兵器。


 聖剣という名前だが剣でなくても構わない。


 聖剣の性質があれば槍でも弓矢でも銃でも良い。


 神聖七星位聖剣や準神聖星位聖剣などいくつかシリーズがある。


 初心者には量産剣から使うことが推奨されている。


 ☆


 ピンポーン。


 インターホンが鳴った。玄関に出ると凪波とサーシャちゃんがいた。


「兄貴、今日もお邪魔します」


「お兄様、お相伴に預かります」


「よく来たな。2人とも。今日は生徒会の仕事、無かったのか?」


「はい、今日は早く済みました」


 そうしてリビングに入る。


「ええええ!? 詩音ちゃん!?」


「本物!? 本物の詩音ちゃん!?」


 2人は詩音ちゃんを前にして興奮していた。


「はじめまして。私は小泉詩音です」


「ファンです!! 大ファンです!! サインください!! 握手もお願いします!!」


「ん? なんで本物の小泉詩音ちゃんがいるんですか? ここは現実世界ですよ。」


「ああ、それはだな……」


 2人に今日あったことを話す。


 俺が瑠夏と一姫とスーパーに買い物に行った後、部屋に小泉詩音ちゃんがいたこと。


 詩音ちゃんは自分のことをライトノベルの精霊と言ったこと。


「ええええ!? ライトノベルの精霊!?」


「ということは詩音ちゃんも異世界に召喚されるんですか?」


「ああ、たぶんな」


 ピンポーン。


 俺が玄関に出る。藍那だった。


「会いたかった!! 会いたかったよう、光覇兄。」


 藍那が抱きついてくる。


「くんくん·····くんくん。光覇兄に新しい女の匂いがする」


 え?


「また女!? また女なの、光覇兄!?」


 匂いで分かるとか犬かよ!?


「藍那にとってサプライズになると思うぞ」


 そうして俺たちはリビングに入る。


「え·····。嘘·····。詩音ちゃん?」


 藍那は驚きのあまり言葉を失っているようだ。


「はい、私は小泉詩音です」


「詩音ちゃんが·····現実にいて·····動いて·····喋ってる!? なんで!?」


「ああ、実は·····」


 それで俺は藍那に凪波とサーシャちゃんにしたように同じ説明をする。


「ライトノベルの精霊!? 嬉しい!! 会えて嬉しいよ、詩音ちゃん!!」


 そう言って藍那は詩音ちゃんに抱きつく。


 藍那もキミキセのファンで詩音ちゃん推しなのだ。


「藍那さん離れてください。詩音ちゃん困ってますよ」


 凪波が藍那をたしなめる。


「はっ、ご、ごめん。痛かった? 痛かったよね?」


「痛くないから大丈夫ですよ。こんな熱心なファンがいるなんて私、嬉しいです」


「キャー!! かわいい!! かわいすぎるよ、詩音ちゃん!!」


「はいはーい。みなさーん。夕食できましたよー」


 今日も瑠夏の夕食のカレーライスはおいしかった。


 ☆


 異世界。皇国。シュタットフェルト家の屋敷。


「おはようございます、コウハ様。今朝精霊の兆しが出たようですね」


 精霊の兆し。


 特別な水晶で精霊の召喚ができるか分かる現象だ。


 水晶とスマホはBluetoothで繋がっておりスマホでも精霊の兆しの通知が出ていた。


 そうして俺は精霊召喚の儀を行った。


 召喚されたのは案の定詩音ちゃんだった。


「光覇君? 光覇君なの?」


「ああ、俺は宮内光覇だ。こっちの世界ではコウハ・スカイマークっていう名前だ」


「ここが異世界なんだ·····!! コウハ君、異世界でもよろしくね」


 こうして詩音ちゃんが無事に異世界転移できたのだった。

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