とある彼女のふたコマ
ジャンル:ラブコメ
キャッチコピー:お題は良いと思うんだよ……っ、ただ自分の力量がないっ涙
紹介文:
大学生のフユは、冬のある日、恋人のハルの家のこたつでくつろいでいた。 そこでぬいぐるみについて聞かれ―― まったり恋人同士のとある日常の一コマ。
お題:「ぬいぐるみ」
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春一番が吹き荒れた次の日には、冬型の気圧配置が強まって寒気がなだれ込んできたらしい。
朝の天気を解説してくれるお兄さんの軽快な説明を聞きつつ、大学生のフユはどおりで寒いわけだ、とこたつに入りながら震えた。
そんな寒暖差のある朝に、みそ汁をすすりながら、恋人のハルはぼんやりと首をかしげている。
今日のみそ汁の具はほうれん草となめこと麩である。
和食派のハルのおかげで、フユもみそ汁の具材にはちょっとうるさくなった。
それはともかくとして、彼女はまた何やら考え込んでいるらしい。
今日は一コマ目に授業があるので、そろそろと出かけなければいけないのだが、のんびりと恋人の食事風景を眺めている。
寝ぐせを整えないままのふわふわの色素の薄い髪の毛がゆらゆら揺らめきつつ、ふうふうと息を吹きかけながらみそ汁をすする姿を眺めながら、癒されているのだ。
うむ、眼福。
この幸せを噛み締めずに大学に行く価値などあるのだろうか。
「あのさあ、ぬいぐるみって欲しい?」
「ん、それは俺が欲しいかどうかを聞いているの。それともハルが欲しくないということ?」
先月終わったバレンタインにハルは手作りのチョコをくれた。簡単に作れるからと言って、フユが大学で授業を受けている間に作っていたらしい。帰宅した途端チョコレートの匂いに包まれた部屋で、タッパーいっぱいに詰め込まれたトリュフを鼻先につきつけられた。それは今でもまだ冷蔵庫に入っていて、毎日少しずつ食べている。それはいいのだ。甘い物は好きだし、おいしいから。
問題は今月に迫っている『白い日』である。
先日ネットで検索して、ハルの好きそうなキャラクターのぬいぐるみを注文したばかりだ。もしかして検索履歴からばれたとか。それで探りを入れられているのか?
恋人との同居の弊害だ。ついうっかりレポート用の共用のパソコンで注文してしまった自分が迂闊だった。
今更それをいらないと言われると、少し焦る。
ハルの趣味は特殊で、あのぬいぐるみを受け入れてくれそうな友人知人がまったく思い浮かばないからだ。
貰い手のないぬいぐるみなどただのゴミだ。言い過ぎた。
けれど、困ったことは確かで。
彼女の返答をフユは固唾を飲んで見守るしかないのだった。
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