第7話 試験 ~美人オぺレーターと、“入団試験”~

『直接、会場に来たのか。遅れてきた奴の中では、根性があるな、“首輪付き”。』


 無線機から、低い男の声がする。

 大型輸送機が、近づいてくるのがわかる。

 声の主の試験官が、そこに、いるのだろうか?


「“IFF”のマーカーは、正常に作動しているか?

 入団希望の、“首輪付き”。

 敵と味方を、間違えるなよ?」


 首に銀色の首輪を持つ若者は、自身や敵味方を識別する機能を、チェックした。

 モニター画面を確認し、問題なく動作していることを、確認する。


 試験官が、入団希望者たちに、向けて、話し始める。


「それでは、入団試験を、開始する。

 このチャンスに、二度目はない。」


「旧市街に、陣取る、武装勢力を排除しろ。

 奴らは、“国”側についた、裏切り者だ。」


「お前たちを攻撃してくる、車両、ヘリ、“作業用機械”、全て敵だ。」


「“自由”の尊さを、忘れた連中に、制裁を加えるのだ!」



「投下!!」

 輸送機から、2機の“機動兵器”が、降下してくる。



「“首輪付き”、先行しろ! “入団試験”、開始だっ!!」


 試験官から、“前に行け”と、言われた。


 陽動か、それとも囮役をやらせるつもりか?

 こちらの、行動を観察して、俺の“所属”や、"真意”を探る魂胆だろう。


 問題ない。

 これでも、俺は、“プロ”の兵士なのだ。


 こいつらのような、“アマチュア”の、民兵どもとは、違う!


 


 「 戦闘システム 起動シマス 」



 高速道路のガード下にバリケードを作っている連中に狙いを定める。

 “ブースト”で間合いを詰め、左手のブレードで薙ぎ払う。


 車両は、踏むだけで、爆発する。

 なんと、脆いものだ。



「敵襲ゥ!! 敵襲だぁー!!!」


 “敵”の無線が、混乱しているのがわかる。



 むっ!


 巨大な盾を持った“歩行兵器”が、ビルの影から、飛び出してくる。

 2機一組の彼らは、互いに盾で、庇いあいながら、マシンガンを斉射してくる。


 彼らの動きは、それなりに訓練されているようだ。

 敵の背中の、近接武器が、赤い光を帯び始める。



 “ローラーダッシュ”を駆使し、間合いを詰める気か?

 

 俺の“機動兵器”は、意外にも防御が薄く、強力な爆発や、近接武器に、弱い。



 愛機の“ブレード”チャージには、時間がかかるな。



 俺は、右手のアサルトライフルで牽制しつつ、一度退き、間合いをける。


 "盾持ち”は、やはり固いな。この実弾では、貫通できない。



 ビルの影から、相手の死角に回り込む。

 相手は、こちらを見失ったままだ。


 完全に、背中が、がら空きだぞ?


 奴らの1機目に、チャージが完了したブレードを浴びせる。

 重厚なブレード音が、鋼鉄の“歩行兵器”を両断する。


 2機目は、振り向いて、盾を構えようとするが、わずかに間に合わなかった。

 “首輪付き”は、アサルトライフルを、至近距離からコックピットに叩きこんだ。


 “首輪付き”は、動きを止めた“歩行兵器”に、2発ずつ打ち込む。

 確実に、頭部と、コクピットを、破壊しているのだ。


 「“国軍”の“機動兵器”ッ!! 味方じゃあ、ないのかッ!?」

 「撃てッ、撃てぇッ!!」



 「ピーッ!ピーッ! ビィイーッ!!」

 コックピットに警戒音が響く。 


 ビルの谷間を縫って、武装ヘリが、ミサイルを発射してきた。

 横からも、戦車が、こちらに砲撃してくるのが、わかる。

 

 回避するのは容易い。

 

 灰色の巨人は、ブーストを吹かして、垂直に上昇すると、新たな目標に狙いを定める。

 武装ヘリに、銃弾を打ち込みつつ、右肩のミサイルを発射した。

 ミサイルは、トップアタックで、戦車を吹き飛ばす。


 墜落していく武装ヘリの回転翼が、高層ビルの壁面にあたった。

 回転しながら墜落するヘリは、周囲のビルの、窓ガラスを、盛大に割っていく。



 ククッ。

 俺の“初陣”にしては、派手な演出だな。



 首輪付きの若者は、満足そうに悦に入った。



 「“これ”にッ! これに、生き残れば、オレはッ!!」


 声変わりしたばかりの少年の、少し高い声が、響く。

 

 新兵だろうか?

 コールサイン:“ピーチ・ボーイ”は、“作業機械”の群れと正面から、やりあっているようだ。



 若者は、かつての自分の姿を、思い出す。


 『動けッ!! “機動兵器”は、動き続けなければ、タダの的だぞ!?』


 訓練生時代、教官に、口酸っぱく教わったことを、思い出した。

 

 懐かしいなぁ。



 ふと少年が、心配になった。

 “首輪付き”の若者は、少年を、後ろから援護することにした。


 アサルトライフルで、少年の後ろから近づきつつあった敵機を、沈黙させる。



 少年は、彼が、援護した様子にも気づかなかったようだ。

 

 まあ、新人は、そんなものだろう。

 眼前の敵で、一杯いっぱい、なのだ。



 俺は、試験に合格して、"入団”する必要がある。

 しかし、本来の任務は、バレずに"潜入”することだった。


 あまり、新兵の手柄を奪って、目立つのは良くない。



 もう一体の新人は、どうだろうか?

 

 武装ヘリが集団で、ミサイルを発射し、“機動兵器”を追い詰めている。

 


 「……ツッ!!」


 誤って、敵のキルゾーンに、迷い込んだ新人は、回避に集中しているようだ。

 ぴょんぴょん飛び跳ねて、ジャンプ移動を繰り返しては、左右に逃げ惑っている。

 

 新人が、必死になって、ミサイルのロックを、外そうとしているのが、わかる。



 水平直角に動くのは、2世代以上前の"機動兵器”の特徴だ。

 

 まったく、ヘリなど、突っ込まなければ、脅威と、ならないのに。

 どいつも、こいつも、前に出すぎだ。


 普通の新兵は、臆病なものだが……。

 

 それとも、敵に、誘い込まれたのか?



 愚かな“反乱軍”の、ひよこ共め。

 今は、反乱分子からの、信用を得るため、助けておこう。



 武装ヘリは、肩ミサイルで、ヤるか。

 

 ミサイルには、ミサイルで、応戦したくなる。

 


 右肩武器のミサイル発射口が、ゆっくりと開いた。


 マルチロックで、ミサイルを、複数の目標に叩きこむ。




「サンキュー、助かったわ!」


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