第2話 目標を決めまして

「さてと…これからどうしよう…」


ひとまずメイドさん(リネさんというらしい)に用意してもらった朝食を食べた後部屋に戻ってきた。


これからのことを考えながらベットへダイブする。


これからアシェリーとして生きるのはいい。


戻り方は一切分からないしそもそも転生っぽいから元の体はもうなさそうだし。


問題なのはアシェリーとしてどう生きるかだ。


アシェリーはストーリーにはほとんど…というか全く干渉しない。


主人公の仲間になるのはサブクエストでのみだし。


それはいいんだけど問題はアシェリーの最期だ。


アシェリーは最期、父親を恨む平民の男の手によって呼び出された魔物に父親と共に蹂躙されて殺される。


それはもうぐちゃぐちゃのバラバラになって殺されて。


最終的に肉片になった後で主人公に発見される。


私はそんな最期は絶対にごめんだ。


「確かアシェリーはあの時魔法が使えなくて魔物になす術もなく殺されるんだよね…


じゃあ魔法が使えるようになればいいのでは?」


しかしそれも問題がある。


アシェリーは魔法適正が一切ない。


この世界がゲームと同じならば適性がなければ魔防は一切使えないはずだ。


困った…これじゃどう頑張っても挽肉エンドを避けられない…。


「いや…?あるな…アシェリーでも魔法を覚えられる方法…」


ルミナスファンタジアの主人公は最初、無属性魔法しか使えなくて戦闘には参加できないのだが


途中のイベントをこなすと全属性の魔法が使えるようになる。


そのイベントというのが『虹色の泉』の探索だ。


その虹色の泉の水を飲むとどんな魔法が使えない人間でも全ての魔法が使えるようになる。


その力を求めて戦争が起こるほど貴重なものだった。


それを見かねた虹色の泉の管理者は泉を隠した。


試練を与え、資格を得たものにのみ泉の水を与えると条件を提示した。


主人公はその試練を乗り越えて全属性の魔法を使えるようになるわけなんだけど。


その試練に挑むのにも条件があって、


①レベルが30以上


②無属性魔法が使える。


③管理人が用意した番人を倒す。


主人公のレベルが上がりにくい設定になってるから①が一番難しかったけど…


この世界ではレベルは関係ない…よって①は問題ない。


③もゲームと同じなら弱点はわかってるから問題ない。変わってる場合もあるかもだからちょっと注意しないとだけど。


問題は②だ。


今の私は主人公ではなくアシェリーだ。


アシェリー…私は魔法が使えない。


無属性魔法が使えないと試練を受けられないから泉にもたどり着けない…。


ううむ…どうすれば


「コンコン…失礼します…どうしたんですか?そんな顔して?」


ドアをノックして入ってきたのはリネさんだった。


「あ、リネさん…魔法ってどう使うの?」


「どうって…ああ…アシェリー様は使えませんからね…習ってないから…」


「…ん?ああ…習ってない?」


アシェリーは体質とかで魔法を使えないんじゃないの…?


もしかしてアシェリー自身が努力を怠ってたから?


だとすれば…


「リネさん。魔法って教えて貰えないかな?」


「私が…ですか?構いませんが…もっと教え方が上手い人を紹介できますよ。」


「ほんと!?」


「はい。…でもなんで急に魔法を?この前は魔法なんてつまらないから嫌って言ってたのに」


「つ、強くなるのは将来のため!それだけ!」


「そうですか。では彼女には私から連絡しておきますね。」


「う、うん。ありがとう。」


虹の泉を探しに行くなんてリネさんに言えないからね…。


これでしばらくの目標は決まった。


虹色の泉を目指すべく魔法を覚える。


これに集中しよう。


剣なんかはそれが終わってからだね。


「あ、そうでした。これ届いてましたよ。アシェリー様宛に。それでは」


リネさんは私に荷物を渡すと部屋を出て行ってしまった。


「私宛…?重さは…普通かな。ガラスとかでもないみたい。」


受け取った荷物を持ち上げてみると軽く音もしなかった。


差出人は…イーレイン=オーガウス。


オーガウスはゲームにも出てきたモブ男爵だ。


たしか息子が一人いたはずだけど…まさかお見合いの…ってそんなわけないか。


私宛ってどういうことなんだろう?


父親宛とかじゃなくて…?


とりあえず開けてみようか。


中を見るとそこには首輪が入っていた。


『私の家畜にならないか?待遇は保証する。』


という手紙と共に。


「…フン!!!!」


手紙を破り捨て首輪を壊して捨てた私はそのまま眠りへつくのだった。

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