第23話 告白


「ご主人様は随分おモテになるんですね…」


冒険者ギルドから戻ってからのマヤさんの機嫌が少し悪い気がする。


「多分、モテて無いよ! あんなのお金目当て見え見えじゃない?」


「そうですか…ですがラバーガールは珍しい愛人冒険者のパーティです! ポーターからちゃんと神様から祝福を貰った冒険者まで沢山います…沢山の男性の冒険者がパーティメンバーになりたい、メンバーを貸し出して欲しい。そう依頼しますが、その殆どが断られます…向こうから声が掛かるなんてまず無いのです!」


「そうなのか?」


その割には随分、簡単に声を掛けてきた気がするけど…


「はい、中にはラバーガールのパーティに入るの事に憧れる男性冒険者も多いと聞きます」


「そう?!だけど、興味無いな…それにマヤさん以上に綺麗な相手なんてそうそう、居ないと思うし、うん興味ない!」


大体、僕位の人間が美少女サイボーグ? のマヤさんのご主人様で居られるのがそもそも分不相応な話だ。


「そうですか…ご主人様は変わっていますね!それでお聞きしたいのですが…ご主人様はお金を持つ事を嫌っている様に思えるのですが何故でしょうか?」


「そうだね、別に隠していたわけじゃないんだけど、僕に祝福をくれた女神様、雪乃様は『貧乏神』なんだ…だからお金を余り持つ訳にいかないんだよ」


「貧乏神? どんな神様なのでしょうか?」


どうやらこの世界には貧乏神は居ないらしい。


雪乃様について簡単に説明した。


「こんな感じの神様なんだ…」


「貧乏になるけど、他の幸せを沢山くれる神様ですか…凄くレアな神様ですね」


「確かにそうかも知れない…だけど僕は小さい頃に出会って死にかけの所を救って貰ったんだ! 少し変わっているけど、凄く優しくて素晴らしい神様なんだ…」


「私にとってのご主人様みたいですね…多分あそこでご主人様に出会わなければ私は死んでいました、同じですね」


言われてみれば、確かに似ているかも知れない。


「確かに似ているかもね」


「私もそう思います…ですが、流石にもうすぐ全てのメンテナンスは終わりますよ! 沢山お金を頂いたので不安のある部品は全部交換しました、多少の改造はまだありますが、それももう終わります…その上で結構な金額が溜まっています」


「マヤさんが欲しい物があったら自由に買って良いんだよ! それはマヤさんのお金だから」


「あの…最初からご主人様の取り分は1/3~1/5、今に至っては1/10以下です! 勿論、ご主人様が困ったときは全額差し上げますが、私の口座のお金がどんどん増えていく事に、罪悪感を感じます…」


「あははっ、それは諦めて」


「ご主人様の事情を考えたらそうですね…ですが、ご主人様も何か考えて下さい! 欲しい物とか無いんですか…高価な物を持つのが良くないなら、私が作りますよ!」


それは悪くないかも知れない。


「だったら、価値が低くて凄い物を作ってくれるとありがたいな」


「そうですね、ジークの技術で作る物はこの世界では嫌われているので価値は低いので良いかも知れません…何か頑張ってみますね」


最初から話して置けば良かった。


「それじゃ悪いけどお願いするよ」


「任せて下さい!」


しかし、僕もマヤさんも基本的に質素だから、お金が溜まってしまう。


上手い使い道を考えないとな。


◆◆◆


夜になりマヤさんが寝たあとに雪乃様にお伺いをたててみた。


『お金が溜まっていくって? 大丈夫マヤは僕の信者じゃ無いからね、幾らお金を持っても問題は無い!』


「そうですか、それなら安心ですね」


『確かにそうだね!だけど、そろそろもう一人仲間を増やしたらどうだい? 二人とも前衛だから僕は心配だよ…マヤはしかも前衛としては弱いんだから』


「まぁ、だけど僕は雪乃様の教えの通り『無難』を旨に生きていくつもりですから、そこそこで良いと思っています」


『まぁ、そうなんだけど、ダンジョンの浅い所で討伐をしていても、稀に強い魔物が上がってくることがあるんだ…君は前にオーガに相手に殺され掛かった、あの時は無病息災で助かったけど、君から戦いを選んだ場合は駄目なんだぜ…だから、もう少しだけ戦力は強化した方が良いと僕は思うんだ』


雪乃様が此処迄言うんだから、かなり危なっかしいのかも知れない。


「それなら雪乃様に仲間の件はお任せします」


『ああっ、任せてくれ!ぼ.く.の翼くんの為にとびっきりの仲間を用意するさぁ…大船に乗った気でいてくれよ…ああっ、また邪魔が入った…それじゃ頑張ってくれよ』


頭から声が消えていった。


新しい仲間か…


本音を言えば、今のままで充分なんだけど、雪乃様が言うのだから必要なんだろうな…


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