ロボットS〜夕暮れの太陽〜

如月つきこ

第1話 廃盤を拾ったヒーローが現れた▼



【キャラクター紹介】

・主人公:満天メテオ

今どき珍しい 『流行りのロボット」を持っていない少年。 もともとは金銭的な余裕がなく、廃品やジャンクパーツなどを掻き集めてロボットを作っていたが、 ある日、 自分が幼少期に見かけた旧個体のパーツの一部を発見する。 それを機に旧型のロボットにも興味を示すようになり、 現行型や現代の流行りとは明確に異なったそれに、強いロマンと好奇心を感じた。

しかし一部のものはその希少性から価格の高騰が起きており、旧型マニアの間ではコレク

ション的な存在として大切に保管されている。 メテオの持つものは大半が 『ただの古いパーツ』 であったりするが、彼はそれに、 人とは違う個性と独自性を感じ楽しんでいた。


元気はつらつな少年であり、 打ち込んだことにはとことん興味と好奇を深めていく。 勉強には関心がなく、さして良い成績を残すわけではないものの、 技術工作に関しての知識と好奇心は人以上にあった。 そのため定期テスト期間中でもロボット製作に打ち込むなど、 行動にはやや問題が見られる。 他にもロボット製作に失敗し、部屋をめちゃくちゃにしたなどの理由でよく親に怒られ家を追い出されるが、 本人は至って気にしておらず、 メテオとは別の理由で外に入り浸っている親友のミノルのことを“野宿仲間” と呼んでいる。

④ 情報

・廃盤となったロボット: “タイヨウ

野宿中、メテオを襲う存在から彼のことを守ったロボット。 既に廃盤となったはずの旧個体だが、その素性はほとんど不明。 実際の隕石から採掘された素材を使っていることが判明している。“タイヨウ”という名前のとおり、 腹部に太陽を模した刻印があり、 マントを装着、オレンジと黒が特徴的なカラーをしている。 メテオを助けたのは、 実はメテオの父こそがタイヨウの設計者であり、彼の見守りを兼ねて、 父の仲間に依頼することで遠隔操作を実現させていた。このことはメテオには秘されているが、やがて正式に彼に譲られる。

ラスボス: 天王寺雷都

・ヒロイン:浅野ハル

メガネそばかす三つ編みという典型的な地味系女子の割にニーハイソックスとミニスカー

トをはいている良く分からない(?) 少女。 ゴリゴリのインドア派であり、それゆえに優等

生キャラは伊達ではない。 運動はからっきしだが勉学の才能はどれをとってもすこぶる良

文句なしの豊富な知識を持ち合わせている。 その割に行動力はあるため、メテオの火付

け役になったり、メテオと一緒に突っ走ることもしばしば。 彼に冷静に教えることも多ければ、 後ろからサポートして行動させることもあり、どちらにせよ相性は良い。

ハルの所有ロボットは“ヨザクラ スペースシリーズではないが、小型かつ機動型の戦士。

両手で忍者のようにクナイを扱うのが特徴。 そのスピードは素早く、 まさに忍者を彷彿とさせる。 振り袖を身にまとっており、 夜桜の衣装がほどこされている。


スペースシリーズのなかでも最強の “COSMOS" を所有しており、 とある理由から主人公の在籍する学校に転校してきた。 実はハルの幼馴染であり、ハルから好意を寄せられていた。しかし 「宇都宮の雷事件』 をきっかけに、 彼女の前から、 いっときは姿を消すことに。 『宇都宮の雷事件」とは、 宇都宮で呼称されている、 埼玉県で確認されたとある雷のことである。

埼玉で観測された中でもいちばん規模が大きいといわれており、ある時、彼はそのエネルギ

ーを模してロボットに内蔵された“雷都”を打たれたことで火傷を負った。 ハルやクラスメイトにその姿を見られたくなくて、姿を隠すようになったのが失踪の経緯。 そして、そのロボットや雷都”を秘密裏に開発していたのが、 メテオの父、 満天流星であった。

④ 情報

・野宿仲間 : 登崎ミノル

メテオの野宿仲間。 素行不良で家を追い出されて野宿をしているメテオと異なり、 ミノルは自分で築き上げた確固たる信頼から、 親からの野宿を許されているという異端。 学業の成績は至って普通だが、 『嘘をつかず、 できない約束をせず、その約束を守り続けてきた』ため、親からの信頼が絶対的なものとなっている。 ちなみにミノルが野宿をしている理由は、「親に迷惑をかけずロボット製作に没頭する」ため。 空いている小屋や隠し収納スペースなどを

利用し、 自分の制作場所を持っている。 メテオからは明確に憧れられている。

・メテオを襲った敵対者

メテオの持っているロボット・パーツの一部を目当てに、 彼がそれを持っていると聞きつけさて、精神攻撃のために奇襲を仕掛けた。 本来なら 『対決で負けたほうが(どちらかの) 持っているなかで希望する個体パーツを提供する」 という条件で交渉に持ち込む予定だったが、タイヨウの妨害により失敗に終わる。 特に陰謀があるわけでもなんでもなく、情報づてにメテオの資産を狙ったイタズラ的な犯行でしかない。 隣町の同年代など。

【ストーリー概要】

メテオは自宅でロボットの試作に大失敗をし、家に帰れず5日間も野宿した。 新しいロボ

ットを開拓しようと出た矢先、その間にロボットに襲われたり、廃盤となったはずのロボ

ットを手に入れたりと忙しい5日間だった。 結局新しいロボットは開拓できたのか······?

廃盤になったロボットシリーズを持つ子供たちの話。 雷都が主人公の学校に転校してきて

から、主人公の周りには廃盤シリーズを持つ子供たちが現れはじめる。 その子供たちと1人

ずつバトルする。

① 夏休み中、 夕方、 いつものように自宅でロボットの制作を行っていたメテオだったが、

またもや制作に失敗し部屋をめちゃくちゃにしたため、 数日間のロボット製作禁止と家

への進入禁止を親から言い渡された。 財布とロボット一つを片手に、彼はふらふらと家

をあとにする。 避暑のために行き着いた裏山を散策している途中、彼は奇襲される。


② いきなり敵対してきた少年の存在にメテオは警戒する。 少年が告げたのは、 『自分と決

闘をし、勝ったほうが、 相手の持っている個体やパーツを奪うことができる」という内

容だった。少年は情報づてにメテオの持っているパーツに目をつけており、それを奪お

うと考えていた。 しかし突如現れたロボットかつて廃盤になったはずのロボットに

よる介入が入り、少年はその場をあとにする。 直後、 メテオは自分が助けられたことに

気がついた。 そしてそれが、 旧個体の希少種であることを察知する。


④ 情報

③ 突然のことに驚いていると、騒動を聞きつけたミノルがやってくる。 メテオとミノルは

タイヨウを不思議に思い観察するが、 特に収穫は得られなかった。 その代わり近況の話

になり、メテオは自分がまた家を追い出されたという話題をあげる。 ミノルの秘密基地

としている小屋で野宿をすることとなり、その日は無事に過ごした。



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第1話


今年に入って六回目の野宿を、親に言い渡された。

別になんていうことはない。育児放棄だとかそんなものではなくて、ただ単に俺が、ロボットの試作に失敗して、部屋をめちゃくちゃにしてしまったから──という理由だ。

失敗は成功の元、なんてよく言うのにな。

九十九パーセントのひらめきと一パーセントの努力だっけ?

夢を追い求める子供を見て、少しくらい寛容になってほしい。

「あっつ……」

街の裏山に涼を求めながら、枝葉の合間から射し込む陽光を避けていく。

靴が砂利を踏んで、重たい足取りの音がした。

頬を伝う汗を拭いながら、財布に入れた全財産、その一部で買った麦茶を呑む。

「野宿は慣れっことはいえ……さすがに昼間は暑いな」

ぶつくさと呟きながら、木陰に腰を下ろした。

一瞬だけ吹き付けた夏風が、ひんやりとして心地よい。

「……こんなんなら、海に行きゃあよかった。真反対じゃん」

ここも、そこそこ登った高台だ。ちょっと見下ろせば、すぐに海が広がっている。

堤防。古臭い商店街のアーケード。学校の校舎に、変わらない家並みの住宅地。

そんな雰囲気と融合するように、新開発された近代的な駅、ショッピングモール、広場やらなにやら──。無理して未来に追いつこうとしているような、異質な風景だった。

「だいたい、いつも五日間の野宿なんだよな。今は夏休みだし、いいんだけど」

ポケットから落ちかけた財布を戻しつつ、また麦茶を一口あおった。

「山ん中にある小川で涼むか、ショッピングモールのエアコンで涼むか……」

悩ましい。ただ、ショッピングモールに行って、知り合いに会える可能性も低そうだ。

一人はインドア派、一人は俺と同じ野宿仲間……どうしたものか。

「……行ってみるか、野宿仲間の秘密基地」

それが無理なら、どうせ引きこもっているインドア女子の家にでもお邪魔しよう。どうせ真面目に宿題を終わらせつつロボット製作の研究でもして、せっせと作ってんだろうな。

どうせ手のひらサイズのロボットだ。子供のお遊び──と思っていたら、いつの間にか大人までハマりだして、今や世代を超えたブームを巻き起こしている。この街にもカスタムショップが増えてきたし、世代関係なく気軽に対戦できる環境も、よくよく揃っている。

「よし……っ、──!?」

「動くなッ! そのまま止まれ!」

「逃げんじゃねぇよ、お前に話があんだ」

木陰のどこからか現れた二人組が、立ち上がった俺の左右を挟む。

二人とも、真夏のくせして黒いパーカー姿だ。身長は……同じくらいか。

顔はよく見えない。二人とも声が似ているが、知ってる声じゃない。

こんな小太りと痩せぎすのなんて、俺の知り合いにもいないしな。

「……隣町とかのやつか? いきなりなんだよ。この暑いのに」

「俺だって暑いんだよッ! なんの用か分かるか、満天メテオ」

「よく知ってるな、俺の名前。ちなみに用なんか知るわけないだろ」

「じゃあ理由を教えてやる。っていうわけで、ポケットに入ってるもん出せ」

財布じゃねぇぞ、と付け加えられて、俺は薄々勘付いてきた。そこそこ面倒臭い。

内心で緊張しているのを気取られないように、余裕ぶって小さく溜息を吐く。


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「さっさと出せよッ。お前も持ってんだろ?」

「分かった、分かったから肩を掴むな!」

間違いない。この二人の狙いは、俺の持ってるロボットだ。

ポケットに手を入れて、指先でそっと触れる。

これだ。家を追い出された時、財布と一緒に持ってきたもの。

恐る恐る、取り出した。

「こんな旧式のガラクタ、どこが欲しいんだよ」

「おっと、騙そうったってそうはいかねぇぞ」

二人組の片方が、いかにもお見通しというかのように笑う。

「確かにお前のは、現代の主流じゃねぇ旧式だ。知らねぇやつが見りゃ、ガラクタとジャンクパーツの詰め合わせだが……今じゃ手に入らねぇ希少なもんも使ってる」

「だから俺らはお前に交渉を申し込むッ! 俺たちの持つロボットがお前に全勝したら、なんでもパーツを一つくれ。逆にお前が俺たちに一回でも勝てれば、この話は無しだッ」

ほらな、そういうことだろ。どこから噂を嗅ぎつけたかは知らないが、このロボットは俺が丹精込めて作った、愛着のある個体だ。どうあろうと他のやつに譲ることはできない。

──こういう交渉は、もちろん無いわけではない。あくまで、推奨されない裏の手口だ。

……隙を見て逃げてやろうか? ロボットの攻撃で足止めくらいはいけそうだ。

と思ったが、二人の手持ちが既に展開されている。操作する気満々だな。

「……お前らの、バリバリに最新パーツだな」

「あぁ、お前に勝つつもりでカスタムしたからな」

俺が逃げるのを警戒しているのか、包囲するようににじり寄ってくる。

遠隔操作用のスマートフォン端末もいつからか取り出して、臨戦態勢に入られていた。

「……分かった。受けて立つ。俺のチャンスは二回だな?」

「そういうことだ」

心臓が緊張と期待で早鐘を打つ。端末を持つ手が、少し震えた。

地面に影が落ちる。自分の輪郭を形作るそれが、二人に挟まれている。

「よし」

遠隔通信で繋げたそれぞれのロボットが、土を踏んだ。試しに動かしてみる。前後左右、ジャンプ、宙返り、武器パーツの接続も問題ない。必殺技も、よし、大丈夫だ。

「じゃあ、まずは俺からいかせてもらうッ!」

どこからどこまで現代調、最新パーツの詰め合わせだ。俺のがロマンと懐古趣味の旧式だとすれば、あっちは非常に合理的な、勝つためだけの完全新式。それが手のひらサイズのロボットに詰まっている。古風な騎士と、近代式のアンドロイドという見た目の対比がいいな。

お互い数メートル離れたところで対峙する。

「号令は俺がかける。勝負である以上、忖度はしない。五秒後に始めるか」

五、四、三、二──一、と言いかけたところで、途端に砂埃が舞った。

一瞬だけ早く、向こうが端末を操作したのが見える。

「おい待て、フライングだろこれ!」

くそ、ハメられた! こんなんじゃ前も見えないし、どう対抗すればいい……?

俺の動揺を期待しているかのように、砂塵の中から足音が聞こえる。土を踏んで駆ける音。砂利の鳴き声。それを吹き払うような──モーターの駆動音が、風を巻き起こしてきた。

端末の画面を見るが、風圧のせいで上手く操作ができない。なんとか踏ん張りながら、メインウェポンである剣と盾を構える。砂塵を切り裂いて飛び出してきた相手のパンチをなんとか盾で受け止めながら、繰り返される連撃を盾と宙返りで防いでいく。

カウンターで剣を振るう。足払いをする。それをことごとく防がれて、けれど相手の攻撃だけは着実に積み重なっていく。明らかに劣勢だ。でもこれ、フライングだし不正だよな?


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「いや、ダメか……!」

審判のあいつが何も言わないってことは、どうせ規定路線だ。

最初っから真っ当に勝つ気はないってことか……!

「どうしたッ、動きが鈍いな!」

「フライングしたお前のせいだろっ」

「騙されんが馬鹿なんだよッ! 勝てばなんでもいい!」

近距離の揺さぶりを耐える。このままじゃ防戦一方だ。

向こうも徒手格闘だけでは埒が明かないと判断したのか、その機械的な関節を開いて、しまい込んでいた小型の鎖を展開してくる。それが機体をかすめて、一瞬で巻き取られた。

「くそっ……」

動きが止まる。剣も盾も微動だにしない。向こうも動けないのは同じだが、この近距離で確実に仕留めるだけの隠しダネは持っているだろう。やられる前にやるしかない──!

手元の端末からメニューを展開して、そのままスワイプで発動させた。

「必殺『レインバレット』──っ!?」

機体の腹部が稼働し、内部に収まっていた弾がスプリングで射出される。

そのはず、だったのだが──。

「なんだよ、また不発かよ……!」

「ふっはは、せっかくの必殺技が不発とかありえねぇッ……! やっぱりガラクタみてぇなロボットしか作れないっていう噂は本当なんだな!? そんなもんなら俺にくれよッ」

向こうも指先で端末を操作している。こっちは頼みの綱が不発、しかもどれだけ抵抗したって身動きがとれない。フライング云々を除いても、性能差がありすぎる……!

「ラストウェポン──『MH・01』ッ!」

胸部が展開されると同時に、細長い何かが視界に入る。ミサイル……を模した金属か? あれをスプリングで射出──いや、それじゃ済まない。モーターで出力を調整するくらいはやってくるか? チャージしている間に逃げたいのに、くそっ、どうにもならない……!

「暴れても無理だッ! いざ、射出──!」

「やばっ……!」

心臓がプレッシャーで暴れまくっている。締め付けられるような苦しさが喉に走って、それでもなんとか鎖を解こうともがいた。ミサイルの角度調整がされている。やばい。このままじゃ本当に負けることになりかねない……! 震える手が、操作を止めたその刹那──、

「おい、なんで他のロボットが割り込んでくるんだ……!?」

「ッ、なんだコイツは……!? 勝手に入ってくんじゃねぇ──うわッ!?」

──それが現れたのは、一瞬だった。

マントをなびかせて飛び降りるように。いつの間にか、そこにいたことすら気付かずに。

軽風に揺れる影が地面に落ちて、それも、炎陽の日射しを燦燦と浴びていた。

機体に反射する眩しさに目を細めたのも一瞬、二人の狼狽する声が聞こえてくる。

「コイツ、重いし速い……ッ! ミサイルの調整も間に合わねぇ!」

「なんだか知らねぇが俺も加勢する。二対一だ」

さながら救世主だった。たったの一撃で、動きを阻害していた鎖が解ける。

俺のロボットを守るように、黒とオレンジの目立つそれは、目の前に立った。

お互いに向こうは、新式のアンドロイド。あいつは……スーパーマン、か?

「いきなり出てきて守ってくれるとか、どういう話だ……?」

俺の声が聞こえているのか、横目で一瞥してくる。心配するなとでも言うような態度だった。素性の分からないたった一機に、数の有利があるはずの向こうでさえ、たじろいでいる。

その隙を突くかのように駆け出した。動作は俊敏、数秒で一気に肉薄すると、反応が遅れた二機の機動力を潰しにかかる。徒手格闘で対抗する様は本当にスーパーマンのようだ。


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ラストウェポンすら発動させない連撃が繰り返される。一対二で完全にいなしている。二人の焦燥を俺は感じながらも、どこか他人事のように眺めていることしかできない。

足払いでバランスを崩すと、そいつは数歩、距離を置いた。

──と思ったのも束の間、

「やべッ……!」

「……光ってる?」

あいつの機体が──いや、正確には、胸部のあたりがオレンジ色に光っている。

必殺技だ、と直感するくらいだ。それも、俺たちのとは数段レベルの違うもの。

「っ……逃げるぞ」

「仕方ねぇ、戦略的撤退ッ!」

またもや一瞬で土煙が立つ。そこに光が淡く射して、しかしどの方角に逃げているのか、そいつは分かっているようだった。即座に方角を調整していた、その刹那──!

「うわっ!?」

フラッシュバンのような閃光と、何かが爆ぜたような音。遠ざかる二人の悲鳴を呆然と聞きながら、薄れていくオレンジ色の眩しさで、ふと我に返った。あいつが俺の足元にいる。

「……強いな、お前」

正直な感想、というか、それしか思いつかなかった。よく分からないあの二人を相手に、しかも、かなりの高性能パーツで組んでいるあれを、二つまとめてやり返すなんて。

「んー……?」

得意そうに胸を張っている……ように見えたそれを、しゃがんで観察してみる。光がどこから出ているのか謎だったが、胸部のところに太陽のような刻印が入っていた。

「見たことないやつだな、これ」

俺のロボットと一緒に拾い上げて、手元で見比べる。特に抵抗する素振りもなく、というか、自分から稼働を停止するかのように動きを止めた。ロボットが自我を持って稼働するなんて聞いたことない。となると、誰かが遠隔操作で俺を助けてくれたってことか……?

「……ん?」

端末の通知音。塞がった手を傾けながら、なんとか画面を見る。

『該当機体“タイヨウ”との接続を許可しますか』

そのポップアップが、明滅するランプとともに映し出されていた。





「──で、メテオを助けたのがこのタイヨウってやつだと」

「そういうこと」

それほど広くはない山の中の廃小屋で、俺と、野宿仲間のミノルは顔を合わせていた。あの騒動を聞きつけたのか、近くを歩いていたところで声をかけられたわけで。

だいたい八畳くらいのこのスペースに、ミノルはよく野宿をしているんだよな。しっかりと住む場所と寝る場所を確保しているあたり、めちゃくちゃ羨ましい。誰の小屋だったかは知らないけど。壁際はずらっと棚と机があって、ロボットの制作スペースだ。


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