第12話 新たな目標

僕はファーレンさんの家に来ていた。

久しぶりに夕食を頂いていたのだ。

もちろん、塩をしっかり使っていた。


「旅に出てみたくなった…。」


俺は遠い海に思いを馳せていた。

海を見たくなったのだ。


巾着袋を眺めて、この量を作るのにどれだけの労力を使ったんだろう。

お金で買ったとはいえ、少し申し訳なく思えてきた。


「な、何言ってんの!」

アンが狼狽うろたえている。


「男にはそういう時があるものさ。」


「お父さんは黙ってて!」


「いや‥マリー花もここら辺にないようだし、遠くに足を延ばしてもいいかなって。」

とはいえ、旅行気分で旅ができるほど甘い世界でも無いかもしれない。


近くの森にはシルバーウルフなんてものがいるくらいだし。

盗賊?とかいる世界かもしれない。


「できれば、もう少し力をつけたほうが安全な旅ができると思うが。お金で護衛を雇う事も出来るぞ。」


流石にお金で雇うって‥いくらかかることやら。


「路銀も多少は持っていないと移動も出来んだろうし。」


あ、お金もいるよね。

当然ながら。


俺の新しい目標ができた。

多少の力をつけて、お金を稼ぐこと。

それで海に行くこと。


「海ってどの位で行けるのですか?」


「さあ?行ったことないから分からん。」


何と未知数だった。

まあ、最悪旅先のギルドで依頼をこなすという手もある。

何とかなるだろ。


「む~。」


アンはむすっとしていた。

なんか変な事言ったかな?


「旅か~。私も、もう少し若かったらな。」


あれ、ファーレンさんも妄想に入ってしまったようだ。

若い頃を思い出しているのだろうか。


「昔はこれでも冒険者として頼られていたものだよ。」


人それぞれ生きていれば人生があるのだろう。

俺はそんなに長く生きてきたわけじゃないけど。




****




さしあたって今俺が出来ることをしていこう。

先ずは依頼をこなしてお金を貯める。

今日もギルドに通って依頼を見ていくことにする。


「俺のランクで出来そうな事…。」


Fランクだと‥薬草採取‥違う依頼もやってみたいな。

家事手伝い?

こんな依頼もあるのか。

個人の人が依頼。

割と高めで6000ネルだ。


俺は家事手伝いと書かれた依頼書を持って行った。


「これ、やってみたいのだが。」


今日は、リアさんはいないのかな?


「貴方が噂のミライさんですね。よろしくお願いします。」


茶色の髪のギルド職員はネムと名乗った。

髪が自然な色だと落ち着くな。

ネムさんは依頼書を確かめて質問してきた。


「料理とか出来ますか?掃除とかは?」


出来なかったら、持って行かないのに何を言っているのだろう?


「出来ないのに、請け負うと後で罰金になってしまいますからね。一応確認です。」


「簡単な料理なら大丈夫。掃除も人並みには。」


「わかりました。よろしくお願いしますね。」



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