第5話
私は未だあの時の事を夢に見る。そして、あの時の判断が本当に正しかったのかを分からないでいる。幼かったのだから、その時の状況判断、そして感情に流されてしまっても仕方がないじゃないかと思いもするけれど、もし仮にあの時、間違った判断をしているのなら、裏切ったのは、見捨てたのは彼ではなく私なのだから。
だから、私は泣いている彼の夢をたまに見る。
高校になって再開してからは特にみるようになった。
あの時の彼の泣き顔を、そして睨みつけている幼い私の姿を。
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その日も変わらず私は、学校へと行く準備をしてそれなりに身形を整えて学校へと行く。
友達との待ち合わせに合流し、他愛のない話しをしながら歩いていき、教室へとついた。
何となくだが、彼へと視線を向けると机に突っ伏していて表情は見えなかった。いったい何を考えているのだろうか。
彼の周りには人はいない。彼の中学の噂や良くない噂が流れているからだろう。近づく人と言えば鏡音鏡花さんくらいである。
鏡音さんもまた私と同じ小学校に通っていた人で、正直小さい頃から何を考えているかわからない人だ。こういうことを言うのは自意識過剰だと思われても仕方ないが、私よりも彼女の容姿は優れていて、美しかった。
それに加えて、何故この高校にいるのか分からないぐらいに頭がいい。
この学校も県内の中でもかなりの学力を有していないと入れない学校だが、模試でも全国10位以内に入る程の実力である。
そんな鏡音さんは友達は数人ほどいるものの、不愛想なことから関わろうとする人は少ない。たまに調子に乗った男子学生が言い寄るくらいでほとんどと言っていい程人と関わろうとしない。その男子学生も漏れなく撃沈して二度と近寄らないほど淡々と、その男子学生の悪い点を挙げていき心を折っているみたいだ。
何故、鏡音さんがこの学校にいるのだろうかと考えたが、もしあるのだとするのならもしかしたら彼...........結人がこの学校に入学したからなのではないだろうかなんて考えもするけれど、実際のところはわからない。あんまり話したことも無いし。
私は友達の話に適当に相槌を打ちながらそんなことを考えていた。
放課後になり、部活もしていなかった私は友達とカラオケに行くことになった。どうやら他校の男子生徒もくるみたいでどうにも気乗りがしない。
私はあんまり恋愛とかに興味がないのだ。私が最後に誰かの事を好きになったのは、たぶん結人だった。自覚はしていなかったが、今になって思えば彼の事をあの時は好きだったんだろうなって思う。
好きだったからこそ、裏切られた反動が大きかったのだが。それを今でも引きずっているのかは分からない。
そんなことを考えながら、カラオケにしに行くと予想外の出会いを果たすことになった。
「え、結束さんじゃん」
「え、もしかして岡山君?」
小学校の時の同級生だった岡山君とであったのだ。
まさかこの時の出会いがあの時の判断が間違いであり、これから先、私の人生がくるっていく事になるなんて思いもしなかった。
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