第9話 天敵? ②

「と、言う訳で、今日も新電波塔タウンのモールに来ておりますっ!」


「……………………誰に向かって実況しているのかな?」


「…………………………つい、ノリで?」


「……………………まあ、いいわ、じゃ、それらしいデートコースと相応しいコーディネートをご指導願います。」


「まあ、最初は定番の水族館ね!」


「まぁ順当よね。」


朝イチに由紀から突然呼び出されたと思ったら、『お見合い』ですって!

まあ、この子には恋愛結婚よりもお見合い結婚の方が幸せになれそうだから良いのかもしれないわね。

また、『変な男』に引っ掛からないとも限らないしね。


「年パス、持ってるのよね?」


「今も持ち歩いてるわよ、ほらっ!」


顔写真付きの、パス。

この子は、『そういう娘』なのよね。


「水族館入ったら、自分が興味ある水槽の前に1日中座ってるんじゃぁないのよ?」


「…………なんで、知ってるのよっ!」


「中坊の時に、あなたに紹介してデートさせた男の子からの苦情を私が貰ったのを忘れたとは言わせないわよ?」


「……………………あの時は、悪かったわよ。」


「わかれば、よろしい……………………っ」


「ん?どうしたの?」


モール入口前のイベント広場。

反対側の水族館入口に、見つけてしまった。

無視しようとしたのに、視線が、合ってしまった。

………………………………………奴だわ。

軍用レーザー光線並みの、強力な、視線。

昨日の、ヤリチンっぽい派手目なチャラ男だわ!

この距離から、視線が外せないなんてっ!


先に逸らしたら、背後から犯られるっ!


「……………………ねえ、どうしたの?」


「……………………なんでもない、行くわよっ。」


呼ばれて一瞬視線を切ると、ヤリチンっぽい派手目なチャラ男は、もう見えなくなっていた。


動悸が、冷や汗が、止まらないわっ!

犯されるかと、本気で、思わされたの。


天敵を、見つけてしまったようだわ。


「どうしたの?汗が、酷いよ?」


「……………………っ何でもないわっ!」


「……………………少し、休もうね。」


「……………………あぁ、悪いわね?」


座って、由紀が買ってきてくれたコーヒーを啜ってたら、少し落ち着いてきた。


「ありがとう。ところで、お見合いの後でもいいから、『トーさん』に会わなくていいのかな?」


「……………………何よっ、いきなりっ?」


「チャトの時に、感じたのよ。今彼もフリーみたいだし。好きなんでしょう?『トーさん』を。」


「……………………わからないのよ。会ったこともないし、トークルームで会話して声を聞いたのも初期の頃に一度だけだしね。」


「だったら、お見合いの後でもいいから、一度は?」


「ん、考えくとわ。今は、お見合い相手に失礼だしね。後でね。」


「……………………それで、後悔しないようにねっ!」


「ん、アリガト。」


昨日までの二人のチャットの反応を見ただけでも、両思いにしか感じられないんだけどな。

そういえば、『トーさん』のお友達の『まおー』はどうしてるかしら?

『トーさん』が作家活動に行き詰まっていた時にキャラ原案出してくれたから、印税分配したかったのに居なくなってしまったのよね。

まあ、私は彼を気に入らなかったけどね。チャットルームで会話しただけでも合わなかったしね。性格とか以前に、雰囲気がねっ!


「そうだ、俊と美穂に昨日内容証明送ったそうだから、何か言ってきても無視してね。弁護士通すように指定してあるから。

接触してきたら、通話は録音、直接来たらこのレコーダーで録音しておいてね。」

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