オカルト探偵 No.8

1+1≒2

episode 0-1 大学生活

ふと目が覚めるとベッドの上で眠っていた。最近買ったベッドであるため、寝心地はあまり良くなかった。

高校生活も終わり、いざ大学生活へとなりかなり憂鬱な気分になっている。僕は、何かに興味を持って取り組んだり、目標を持って行動したりすることが苦手な性格である。それゆえに、何か自由に学べる大学生にあまり夢を感じていない。


「支度するの面倒だな。9:00の講義には間に合わないと。」


そう愚痴を言いつつ、支度を整え2週間前から入学した斎戒大学に向かう。


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定時に出ることができ、いつものように電車に揺られていると五月雨悟という友人が話しかけてきた。


「うっす。おはよう。お前…ハハッ。いつも通り冴えない顔してんな。そんなに大学生活つまらないか。学年1位の頭脳なんだからもうちょっと胸はれよ。」


そう言って、背中を叩いてくる。


「おはよう、悟。お前はいつも通りうるさい奴だな。登校しているだけ偉いだろ。」


「まあ、そうだな。偉い偉い。そういえば、今日の一限って生理学だっけ?あの鈴木っていう教授クソだるくね。ハゲてるし。」


「確かに、課題多いしね。ザビエルって感じではあるけど言ってやんなよ。」

ハハッっと悟は笑い。その後も電車で他愛もない会話をした。


そうしているうちに、大学の最寄り駅に到着した。改札を出て、信号機で青になるのを待っていると悟が申し訳なさそうにこっちに話しかけてきた。


「悪り、孟。一限の後の必修の授業なんだけど、用事ができちゃって…なんとか誤魔化してくんねえか。この通りだ!」


「お前、今日で何回目だよ。流石にやばいぞ。まあ本当に今日までだからな。」


「ありがとう!じゃあ一限終わったらよろしく!」

そう言って、彼は嬉しそうな表情をして教室に向かっていった。


_______________________


生理学の授業が始まった。一限は必修ではなかったため、選択授業の一つとして、生理学を履修した。生理学では、人体の脳から出る分泌物やそれの機序を学び、そこから治療につながる研究の紹介を聞くような授業であった。

横を振り向くと、悟が必死こいて講義を受けているのがわかる。僕は、昔から勉強は得意であったため、メモなどは取らずに教授の話をゆっくり聞いていた。


「…ということで、今回は視床下部から下垂体の内分泌について学べたと思います。来週は、下垂体ホルモンからスタートするので復習はしておくように。では、講義を終わりにします。」


そう教授がマイクで話し、授業が終わった。終わるとすぐに悟が話しかけてきた。


「孟、朝のことよろしくな。これから少し用事行ってくる。」

「オッケ、任せて」


そう言って、早々に教室を出ていった。

二限からは必修の授業であるが、今日はオリエンテーションだけである。教授の都合で、最初の授業が遅れてしまったのだ。それに加えて、僕が所属している経済学部の顔合わせも今日が初になると聞いた。

我が大学の経済学部の人数は100〜200人ぐらいで、基本的に顔見知りとなるケースが多い。


(悟以外の友人も早く作らないとな…)


そう思いつつ、教室に向かっていく。


______________________


教室は、200人入るぐらい大きなホールであった。席も決まっており、自分の席に座った。


(悟の欠席バレそうだな…まあその時はその時か)


時間になると咳のほとんどに生徒が座り、教授を待っている。周りを見渡すと、席がひとつだけ空いていた。


(おそらく悟の席だな…流石にバレそうだな。あいつ、どんまいだな。)


そう思っていると教授が教室に入ってきた。出席簿を見て特に何も言わずにオリエンテーションを始めていった。


「諸君らは……ということで……このような人間になるように講義を受けていってくださいね……良い大学生活が送れることを願っています」


そう言って、オリエンテーションが終わった。最後に教授が喜びの表情をして


「皆さん、今日は止むを得ない事情以外に全ての人が講義に出席してくれてありがとう!この代は真面目な人が多くて嬉しい!」


その言葉を最後に教室を後にしていった。


(悟のやつ、きちんと事情説明してたのか。ならよかったが…どう説明したんだが)


悟のことを思いつつ帰りの支度をしていると、ある二人の女の子の話が耳に入った。



「あの噂知ってる?」


「なになに」


「先輩から聞いた話なんだけど、この大学の経済学部の新一年生は毎年一人行方不明になるらしい」


「それ本当?笑」


「本当、本当。一昨年は一人で、去年は二人かな。その前にも毎年一人はいなくなっているらしい」


「まあ大学生活で病んじゃっただけじゃないの?嘘っぽい〜」


「いや、それがみんなあの自殺谷で死体として見つかるらしいよ」


「何それ?ウケる。本当?」


「それが、行方不明になった人全員、同じ大学の生徒でもない謎の経済学部生と友人と関わりがある共通点があるらしいよ」


「え〜毎年なら流石にバレるんじゃね。嘘っぽいな〜」


「嘘って思うならそれでもいいけど、気をつけようよ。私たちは幼馴染だからいいけど、同じ学部だったら名簿に名前も載っているだろうしね。確認がてらね。」


「美香、めっちゃビビってるじゃん」


「うるさい!こう言うの苦手なの知ってるでしょ…そうそう、もうひとつあって…その行方不明になった人って結構有名人が多くて、一昨年とかは陸上で100m走日本一とかなんとか優秀な人がターゲットにされるらしい。」


「じゃあ、私たちやばくね。」


「………」


「ハハッ!!私たちこそ何もないわ。ウケるー」


そう言って、彼女らは帰りの支度をして教室を出ていった。友人はできなかったが、面白い話を聞いた気がした。少し悲しい事と言うと、自殺谷は自分の借りたアパートのすぐにあると言うことだ。幽霊とかオカルトチックなことは信じないようにはしているが、話に嘘っぽさがなく怖さを感じていた。

そう思いつつ、ふと悟のことが気になった。


(あいつ。やけに構ってくるし、謎の経済学部生だったりしてな)


そう思った瞬間、気になりすぎて名簿に手を伸ばた瞬間に、後ろから声をかけられた。


「お疲れさん、孟。出席大丈夫そうだったかな。」


「お前、事前に教授に伝えてたんだよな。大丈夫そうだったよ」


「じぜ…あーそうだった。昨日止むを得ない事情でって伝えてたんだ」

そう少し焦ったような口調で話しだした。

オカルトは全く信じないが怪しいと少し感じてしまい、悟が謎の経済学部生かどうか気になった。


「そういえば、この大学で行方不明になる事件って知ってる?」

そう吹っかけてみたが、悟は冷静な表情で返事をする。


「知ってる、知ってる。毎年おこってるやつな。お前も気をつけろよ。…って、お前俺のこと疑ってるな。これ見ろこれ。」

そう言って彼は、携帯を見せてきた。そこには「出席番号90番 五月雨 悟」の名前が綴られていた名簿が映し出されていた。


「なんだお前じゃないのか」


「なんで少しがっかりしてんだよ。」


「お前が変なやつなのはデフォなのか」


そう言って、教室を出ていった。今日の講義は終わりのため、悟と昼食を食べてそれぞれ帰宅した。


つまらない大学生活はまだまだ続きそうだ。






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