黒ずきんちゃんと闇ずきんちゃんの巻

 私、闇ずきんちゃんに憧れているの。


 だっていつもダークな雰囲気を醸し出していてかっこいいんですもの。

 片目に眼帯をしていて、いつも闇の組織と戦っているんですって。


 そんな彼女だけど、じつはとても優しいとこがあるの。

 常にみんなに気を配っていて、ある目的のために観察をしているみたい。



 ある日のこと。

 闇ずきんちゃんが道端に隠れて何かをしていた。


「闇ずきんちゃん、こんなところで何をしているの?」


「はっ! なんだ黒ずきんか。脅かさないでくれ。あそこを見ろ」


「防災ずきんちゃんのお家がどうしたの?」


「静かに。さっき強盗が入ったんだ」


「ちょっと、大ごとじゃない!」


「しっ、大声を出すな。俺は今から潜入し、彼女を救出する作戦を決行する」


「気をつけてね」


「ああ、危ないからお前も家に帰るんだ」


 帰ったふりをして樹の裏に隠れていたら、チャイムを鳴らして防災ずきんちゃんのお家に入って、すぐに出てきた。


 姿が見えなくなってからお家まで確かめに行ったら、保存食をくれたと言ってた。

 優しくて憧れる。



 次の日。

 闇ずきんちゃんがビニールの袋を抱えて、こそこそと歩いていた。


「闇ずきんちゃん、こんにちは」


「やあ黒ずきん、元気にしてるか」


「その大きな荷物、何が入っているの?」


「……例のブツってやつだ」


「え、なあに? なんのこと?」


「すまんが巻き込みたくない。俺のことは放っておいてくれ」


「あっ!」


 闇ずきんちゃんは突然、私に背を向けて走っていった。

 こっそりあとをつけていくと、裏道で小さな人影にそれを渡していた。


 闇ずきんちゃんが去ってから確認しにいけば、そこにいたのは黄ずきんちゃんで、紙おむつをもらったみたい。

 優しくて憧れる。



 また次の日。

 闇ずきんちゃんが棒を支えに足を引きずりながら歩いていた。


「闇ずきんちゃん、どうしたの! ボロボロじゃない」


「くっ、黒ずきんか。奴らが、奴らがついにやってきたんだ」


「え! 奴らって誰? 何が起きたの?」


「俺のことは放って、逃げるんだ。闇の組織がすぐそこまで……はうっ」


「闇ずきんちゃん、大丈夫? 目を覚まして闇ずきんちゃん!」


「黒ずきん、お前は俺に似ている。どうか、この意思を……継いで……」


「いやあっ! 死なないで闇ずきんちゃん、闇ずきんちゃーん!」



 お花を供えてから樹の裏に隠れていたら、起き上がって帰っていった。

 倒れてたところに戻ったらメモが残されていて、ポストの下とあった。


 お家に帰って地面を掘ったら、瓶の王冠が出てきた。欲しかったやつだった。

 やっぱり憧れる。

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