第31話 それぞれの告白

「はあぁ。」


「そのため息。無くならないね。初めて会った時からずっとじゃない?何か悩み事でもあるの?」



ウソクと出会ってから2ヶ月が過ぎたが

まだ、ユンを思うと胸が痛い。

忘れた日など1日も無い。

ソウル体育大学の近くまで行ってみようかと

考えたりする事もある…。




「何も無いよ!癖みたいな物だから気にしないで。」


「いや、普通気になるでしょ。アミちゃんが辛かったら僕も辛いよ。」


「ごめんね。ありがとね…。」 

「あのさ、今日、お母さんがご飯食べにおいでって言っでるんだけどバイト終わってからどう?」


「バイト休み入れてるから大丈夫だよ。」


「バイト休んだの?じぁダメじゃないの?」


「今日アミちゃんの誕生日でしょ?」


「え?何で!?」


「ごめんね。学生証拾った時に生年月日見ちゃったからさ。」


「もしかして、覚えててくれたの?」


「うん。だから休み入れたんだ!お邪魔させてもらいます(笑)」


――――――――――――――――

「はい!これ、プレゼント!」


「あらぁ。ウソクくん、そんな物までぇ。アミの為にありがとねぇ。」


「いえ。プレゼントを選ぶの楽しかったです。」


「ホントに良い子。」


「あははは!」


母親が涙を拭うフリをしてウソクを笑わせた。

プレゼントの中身はスマホカメラ用のレンズだった。



「これ、良いやつじゃ無い?こんなの貰って良いの!?」


「その為にバイトしてんだよ。気にしないで。」


「ありがとう。使わせて貰うね。」


「映画風とかドキュメンタリー風とか、メモリで変えられるみたい。」


「じゃあ、一緒に撮ってみようね!」


「うんっ」



――――――――――――――――

「じゃあ、そろそろおいとまします。ごちそうさまでした。」


「はい。またいつでも来てね。」


「はい。あの、ちょっとアミちゃん借りて良いですか。」


「ん?」


「どうぞ。」


「ちょっといい?」


・ 


――――――――――――――

徒歩3分のところにある、ブランコと滑り台だけの小さな公園に移動した。



「あのね、もう、アミちゃんはわかってるとは思うんけど。」


背筋を伸ばし、深呼吸してから続けた。


「僕、アミちゃんが好きです。付き合って下さい。」


「ぅ……」


「ダメかな?」


「えっ…と。」


「学生証を拾った時、写真を見て可愛いなぁって思ったんだ。実際に会ったらやっぱり可愛くて。僕、アミちゃんが大好きだよ。ダメかな?」



いとも簡単に『好き』という気持ちと、『付き合う』という選択を差し出すウソクを、凄い人だなと思った。

初めて告白されて、体がふわふわする。

ウソクの気持ちが嬉しい。


でも…



「ごめんなさい。今はまだ、そういう…付き合うって事が難しくて。ごめんなさい。」


「理由…聞かせてくれないかな?」


「聞かない方が良いと思う。」


「アミちゃんの事知りたいから教えて。」



迷って…、でも、話すことにした。



「……高校生の時に…好きだった人が…いたんだけど。まだ忘れられないの…。」


「付き合ってたの?」


「付き合って無い。私の事、好きかどうかも言ってくれなくて…。」



不覚にも泣いてしまった。



「アミちゃん…。」


「ごめんね。ウソクくんと付き合えたら、絶対に楽しいと思う。…だけど、今は…」


「わかった。待ってる。」


「?」


「忘れられるまで待ってるから。僕はずっと好きだから大丈夫だよ。」


「…ありがとう。」



台所で洗い物をしている母親に、後ろから抱きついて泣いた。

エプロンで拭いた水滴の残る手で、腕をトントンと叩いて慰めてくれた。

泣き顔を見られ無い様に、下を向いて部屋に戻った。


ノートパソコンを開いて、映画のDVDの棚からBlu-rayを取り出し、見ようか悩んでやっぱりやめた。


(私の誕生日を覚えていてくれたら良いのにな。)


この日私は、ブレスレットを着けて眠った。



――――――――――――――――――

7月中旬から9月中旬までの長い夏休み。

ウソクと、ハミンは田舎の実家に戻って行った。

私はウソクの様な長期で休む人達の代わり、に沢山シフトを入れて貰ってバイトを頑張った。

バイトの休みの日にはハナ2人でとヒョヌ先生のサークル部屋に入り浸り、部屋を片付けながら、時々構内でドラマや映画の撮影があったので見せて貰ったりした。


女2人きり色んな話をした。

ユンの話も…。


「お互い好きなのがわかっていたのに、付き合えてないんだからそりゃあ引きずるわよ。付き合って別れたならそんな風にはならないと思うよ?忘れられない事を責めて、無理に忘れようとしなくていいよ。」


「連絡手段も切って、引っ越しまでしたのにずっと好きなのも辛いよ…。」


「ずっと好きなのは流石にあれよ。やめた方がいいと思う。忘れるんじゃなくて、新しい人好きになりなさい。ウソクくんのいい所を沢山見て好きになればいいじゃない。忘れる努力じゃなくて、ウソクくんを好きになるのよ。いまは、それが1番じゃなぁい?女ってね。愛するよりも愛された方が幸せだよ。」


「忘れるんじゃなくて、好きになる…か…。」



――――――――――――――――

《LINE》


ウソク:帰って来たよ

    マンションの下来てくれる?


アミ :行くね



「アミちゃーん!会いたかったよー!」


思いっきりハグされた。


「アミちゃんいい匂い。ふふっ」


「ウソクくん…」


「アミちゃん大好きだよ。」


「ひ、人、来ちゃうよ…」


「来てもいいじゃん。」


「ふふふっ」


「アミちゃん可愛い。」


強く抱きしめられた。




あの人も、抱きしめてくれた事あったな…。


記憶の上書き…


した方が良いよね…。



ウソクの胸の中で安らぎを感じた。

毎日、LINEや電話で好きだと言ってくれる。

好きだと言われ続けると、自分もだんだん好きになっている様な気がした。



「あ。お土産渡したいんだった!」


大きな口で笑った。


「いつも、美味しいご飯ありがとうございます。ってお母さんに渡してね。」


と、沢山のお土産を貰った。


(この人もきっと、モテたんだろうなぁ)


と、お土産の説明を受けながらぼんやり考えた。

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