第27話 すれ違う心

 インターハイを最後に3年生は引退した。

キャプテン、副キャプテンと共にユンの行きたがっているソウル体育大学の推薦をもらったらしい。

ユンも推薦を貰うために、3年では絶対にキャプテンになって活躍しなくてはならないと、テヨンとユリに教えてもらった。


テヨンとユリは私たちの展開に頭が追いついておらず、痴話喧嘩の類いだと思っている様だった。


2人の話によると、ユンは夏頃から監督に呼び出されて何か言われている様で、決して褒められている様には見えなかった。と言った。

嫌な予感がする。


クラスでの私たちは相変わらずで挨拶程度しか話さなかった。

マフラーも着けている所を一度も見ない。

ソジンからの報告も無い。



――――――――――――――――

3月。

(これは人としての道理だ。)

と思い、意を決してLINEをした。


《LINE》


アミ :お誕生日おめでとう。

    良い一年になります様に。

    《happy birthdayスタンプ》


ユン :ありがとう。

    嬉しいよ。

    《thank youスタンプ》



(無視されなくて良かった。)


――――――――――――――――

ソジンと話してから3週間程が経った。


(いくら何でも遅すぎる。)


放課後、意を決して声をかける事にした。




「ソジンくん!」


「あ、あぁ…、アミ…ちゃん。」


「話しはどうなったのかなって…思って…」


「そうだよな……前の公園に行こう。」



「ごめんね。引き止めて。」


「いや、早く話さなきゃだったのに。ごめん。」


「で…話は出来たのかな…」


「あ、うん…」


「…………」


「結論から言うと…」




「付き合いたく無い。  そうだ。」




心臓が破裂するかと思うくらいに痛かった。

息が切れる。




「はぁ、やっぱり、そうなんだ…。私のこ、はぁ、好きじゃ」


「違う!絶対に違う!ユンはアミちゃんが好きだよ!」


「じゃあ、何で?…付き合えないの…?」


「好き過ぎて…」


「え?」


「好き過ぎて付き合えない。の、一点張りなんだ。」


「何?それ…。好きなら付き合えば良いじゃん!そんなの言い訳だよ!」


「信じてよ!本当にあいつはアミちゃんが好きなんだって!」


「もう良いよ!! ごめんね。当たったりして。ごめんなさい。もう、わかった…。」


「ユンは、ずっとアミちゃんと居たい。って。 前みたいに…何するにも2人で、一緒にいた時に戻りたいって言ってるんだ。俺だって何言ってんのかなって思うよ? だけど、アイツの望みはアミちゃんと2人で居る事。それだけなんだよ。」


「そんなの…無理だよ。今更元になんか戻れないよ。ずるいよ。それは。キッパリ好きじゃ無いって言われた方がマシだよ。その方が友達に戻れるかも…しれない…よ。」


「役に立てなくてごめん。だけど、アイツの気持ちも理解してやって。」


・ 


到底理解など出来ない。


自転車に乗る気力もない。

泣きたくないのに涙が出る。



(好きなのに付き合えないってなんなの?あれ?好き〝なのに〟だっけ?好き〝だから〟だっけ?もう、そんな事どうでもいい。)



私は振られたのだ。

〝付き合いたく無い〟

その一言が全てだった。


心が傷付いた。


(私の恋が、こんなふうに終わるなんて…。

片思いが1番楽しい。

って、誰か言ってた気がするなぁ。

誰だっけ…。

それ、もっと強く言ってて欲しかったよ。)



――――――――――――――――

次の日の朝、ユンはわざわざ私のところへ来て


「おはよう」


と、声をかけた。


私は無視をした。



[友達に戻る作戦]なのが見えて腹が立った。

ここで私が折れたら、まんまと言いくるめられて何もなかったかの様に6人の輪が出来るのかと思ったら腹が立って仕方がなかった。


(惚れた弱みってヤツ…。バカにしないで。)


帰りも声をかけられた。

それも、無視した。



その日の夜からLINEも電話も来る様になった。


《LINE》


ユン :電話で話せないかな?

    聞いて欲しい事があるんだ。


――ピロロロロ♪ピロロロロ♪


絶対に出ない。

「付き合いたく無い」なんて、直接聞きたくない。

付き合わないけど、一緒に居たい。

そんな事を言われてOKしたら、ずっと苦しいままだ。

そんな、生殺しの状態に自分から飛び込みたくはない。


次の日も、その次の日も話しかけてくるし

LINEも電話も来る。

LINEだけ既読をつけて全て無視をした。



1週間が過ぎた頃、読書感想文全国コンテストの結果が出た。


――――――――――――――――――

全校集会で私は先生の列に居た。

ユンがまた見ている。

視線は感じるが目が合わない様にした。



「では、続きまして今月の受賞者の発表です。前に出て来てください。」


今日はミンジュンは居ない。

1人で舞台袖に立った。


「今年の読書感想文、地方コンテストで金賞を獲ったキム・アミさんが全国コンテストにて入賞を果たしました。表彰式を行います。」


「2年5組キム・アミ」


「はい。」


「読書感想文全国コンテスト、銅賞。あなたは読書感想文全国コンテストにて優秀な成績を収められましたのでこれを賞します。」


校長先生に賞状と記念品を貰い一礼した。


「では、一言お願いします。」


「はい。…全国でも賞を頂けて嬉しく思っています。ありがとうございました。」


静かな拍手を貰った。



「おめでとう。」


これは無視したらいけないと思った。


「ありがとう。」


一言答えて席に戻った。



――――――――――――――――

毎日毎日、懲りもせずユンは私に話しかけた。

私も懲りもせず、無視を続けた。



終業式の日、下校しようとした私にユンは腕を掴んで詰め寄った。


「アミ!頼むから!聞いてくれよ!頼むよ!」


「ごめんね。何も聞きたくない。」


掴まれた腕を振り解いて背中を向けた。

歩き出す私に、ユンが叫んだ…


「ずっと続けるから!3年になっても!」


泣きながら歩いている事を、悟られない様に

足速にその場を去った。



自分の性格が嫌になる。

このままでは嫌われる。

嫌われてしまう。

だけど、もう、どうにも出来ない所まで来てしまった。

今更、どんな顔をして向き合えば良いと言うのか。



(次は、同じクラスじゃなきゃ良いな。)

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