第16話 魔力の存在
「あれってどういう原理なんですか?」
落ち着いたところでナツミンに魔法について訊ねてみる。一応詠唱もあったし、あれだけしか使えないって事も無さそうだ。
「あ、あれはですね、私の魔力を言葉に乗せてステッキに伝えたんです」
「魔力?」
思ったよりファンタジーな話になってきた。魔力ってなんぞ? もし俺にもあるなら使ってみたいんだが。
「ぐ、具体的に説明するのは難しいのですが、身体の奥底で感じる力みたいなものですね」
身体の奥底……。胸に手を当てて探してみるが何も感じない。ナツミンの胸ならいけるんかな? 嘘です、ごめんなさい。
俺がまだ未熟なだけなのか、判断は出来ないが、とりあえず俺にはまだ使えない事だけはわかった。まぁ無いものは仕方ない。俺には狐火がいるし、無いものねだりしても意味がないだろう。
「きつねびがいるからあるじさまはだいじょうぶなの!!」
俺の感情に反応したのか、狐火が突然刀から幼女に戻り、そのまま勢いよく抱きついてきた。
「か、かわいいっ!!」
その姿を見てナツミンが思わず腕を広げてこちらに寄ってきた。近い! 近いから!!
「きしゃーなの!!」
恥ずかしがってる俺をよそに、近づいてきたナツミンに対して、狐火が威嚇をしている。
‘‘おい、メェくんから離れろや!‘‘
‘‘狐火ちゃん可愛い‘‘
‘‘威嚇してるのも可愛い‘‘
‘‘ナツミン✕狐火よき‘‘
‘‘メェくんが恥ずかしがってるの可愛いんだが‘‘
‘‘メェくん、その場所ワイと変わらんか?‘‘
リスナー達もコメント欄で大騒ぎになる。狐火が威嚇してるのもあってナツミンが慌てて離れると、狐火もやっと落ち着いてくれたようで俺から降りてくれた。
「き、狐火ちゃん可愛いすぎですね。思わず抱きついちゃうところでした」
それ結果的に俺にも抱きつくやつだよね!? 駄目だろ!? いや、いいのか!?
「だ、抱きつかなくてよかったです」
動揺する気持ちを何とか抑えてる為に、狐火の頭を撫でる。あぁ、アニマルセラピー最高。
「ふぅ。それにしても素晴らしい力ですね。俺には出来なさそうなのがちょっと残念です」
「緒日辻くんは十分強いでしょう……」
ナツミンに呆れられたようだが、それは甘い。強くなれるなら可能性があるなら挑戦するべきだ。さっきのナツミンのやつは、グレイウルフの頭を一発で貫通させてたからな。まだ俺が出来る技の中であれは再現出来ない。使えるようになれるなら是非使えるようになりたい。
今のナツミンの強さは、他の配信者の戦いがほとんど見れてない為、強さの比較が難しいが、とりあえず最低でもこのダンジョンで生き残る事は出来そうだ。
ボスと戦わなければ……だが。
俺の体感ではあるが、残念ながら今のナツミンでは前回のボスだったゴブリンウォーリアには勝てない。そうなると今回のボスが前回より弱くない限り勝てないと思われる。まぁ普通に考えると厳しいだろう。
「あ、ありがとうございます。え、えっと、それでなんですが、私達は……これからどうしましょう?」
ナツミンの言葉に俺は顎に触れながら考える。選択肢はこのままナツミンと一緒に進むか、お別れしてそれぞれで頑張る。この二つだ。
まぁ普通に選ぶなら――――
「これからの事を考えたら……一旦お別れして頑張るべきでしょうね」
このままずっと一緒なのもありだが、今回はコラボをしてる訳ではない。今のままだと、お互いに戦う度に殴っていいのか確認しなければならない。そうなると細かいミスが出てしまうし、もし万が一、規約違反になってしまった時のペナルティが怖い。
それにナツミンが普通に戦えるとわかった今、ただ俺が子守りをするのは違うと思う。
「そう……ですよね」
俺の言葉に一瞬暗い表情になってしまったが、すぐに笑顔を向けてくる。まぁナツミンからすれば俺といる方が安全だし、安心出来るのだろう。だが、俺の考えが伝わったのか、無理矢理にでも気丈に振る舞っている。その姿に俺の拳にも思わず力が入ってしまった。
最初はオドオドしてるだけの人だと思っていたが、それは俺の思い違いだったようだ。だが、それでいい。ダンジョン配信はこれで終わりではないのだから。むしろいつ終わるのかもわからない。この理不尽な世界を生き抜く為にも自分自身が強くなるしかないんだ。
「それでは頑張ってください」
「今回はありがとうございました。おかげで戦う勇気がわいてきました。緒日辻くんも気を付けて頑張ってくださいね」
最後に握手をして、俺達は別れたのだった。
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最後まで読んでいただきありがとうございます!
ここで一旦ナツミンとはお別れです。きっとどこかでバルンバルンさせながらダンジョンを配信していくでしょう笑
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