魔王討伐、開発コンソールで攻略します

エルス

眠ると異世界へ

第1話 レトロゲームの夢?

 土曜日の日中、仕事も休みだし久しぶりに部屋の掃除をしていると押し入れの奥から、古いゲーム機が出てきた。

 その昔、社会現象にまでなった伝説のゲーム機で親に頼んで買ってもらった物だ。


 今だとレトロゲーム機ブームで再び脚光を浴びているけど現存してまともに動く本体は少ない。

 この本体も二十年以上動かしていない。


「このゲームもやりこんだな」

 一緒にセットになっていたゲームカセットを手にとり眺めた。

 出てきたのは現在ではシリーズ十三まで出ている大人気RPG。


 誰もが知る伝説の魔王討伐シリーズの第三作目だ 


「久しぶりに電源を入れてみるか……ちゃんと動くじゃん、キャラ名はエドかバックアップデーターが残っているんだなぁ」


 ゲームが動作するのを見て少しだけ懐かしさに浸るが、そのままTVの電源を落とし、部屋の掃除に戻ったのだった。



 *****



 時間は夜だと思うが気が付いたら覚めない夢の中?


 異世界漫画とか異世界小説とか異世界ドラマまである時代、俺もそんなに毒された一人でもあるが、まさか夢の中で異世界を体験するとは思わなかった。



「久しぶりだ、勇者よくぞ戻って来られた」


 目の前に居るのは王冠を被ったヒゲ面のオッサン。

立派な椅子に座っているから王様なのか?どっかで見たような顔なんだけど思い出せない。


「そなたが魔王を倒すと、魔王城に向かったのが10年前、魔王の気配は消え平和な日々が訪れていたのじゃが、再び魔王が復活したようなのだ」


 えっと、俺って魔王を倒しているの?


「また勇者殿に魔王討伐を行ってもらいたい、そして世界を平和にしてほしい」


 俺の考えを無視して強制的に話が進んでいく。


「旅の支度もあるだろう、宝箱にある金と道具を手に取るが良い」


 側近達が俺の前に宝箱を置くと、部屋の隅に移動していった。


 状況が掴めないが、宝箱の中身をくれるらしいので、宝箱を開けると


 ・100ゴールド

 ・回復ポーション 1個

 ・旅人の服


 が入っていた。


 夢の中だけど、内容はなんだか物足りない感じだ。


「旅の方法はわかっておると思うが、冒険者組合で旅の仲間を探し、魔王を討ち取るのだ!勇者」


 これで王様の話は終わりとし、側近達にさっさと出て行けと謁見の間から追い出された。


 追い出された理由は、他の勇者が待っていたから。

 耳を澄ますと、だいたい同じ台詞が繰り返されている。

 俺の場合は十年ぶりに戻って来た設定で、他の勇者は初めてやってきた設定みたいだ。

 出口と入り口が違うみたいで、他の勇者とやらには会わなかったが、なんだこの夢は。


 城から出ると、規模は日本の城よりも大きく石作り。

 城下町が広がっているが、やっぱりどこかで見た風景。


 所々に俺と同じようにポーションの瓶と旅人の服を持っている人がチラホラと見られる事だ。

 城の前で立っていると、さっき謁見の間に入ったと思われる別の勇者が城から出てきてキョロキョロとしていたので声をかけてみる。



「おーい、あんたちょっといいか」

「なんだ?オレに用か?」


 エドの声に、向かい合った勇者は振り返りながら眉をひそめた。

 王様が十年ぶりと言っていたからエドは彼よりも十歳以上年上の設定になっているはずだ。


「あんたも勇者なんだろ?」

「そうだが、それがどうした」

「一緒に行動しないか?この街は初めてなんだよ」

「悪いなオッサン、勇者は勇者同士でパーティを組めないんだ他を当たってくれ」


 その勇者は、そう言うと街の中に消えて行った。


「夢の中でオッサン扱いかよ……でもずいぶん素っ気ない奴だったな」


 断られたことで気分転換にもなり、エドはとりあえず夢の中を堪能しようと思った。



 どこかで見た街並みなので、エドは何となくの記憶をたどりながら街の中を移動していく。

 やっぱりどこかで見た事があるが、どこで見たのかは思い出せない。


 ”ジャック・ダニーの店”


 店の名前を見て吹き出してしまった。

 昔やったゲーム「魔王討伐3」の酒場の名前と同じで、もちろんこの店も酒場だ。


 あのゲームは酒場に集まる冒険者に声をかけると仲間にする事ができる仕様だった。


 ここで見つけたのも何かの縁だろう、とりあえず店の中に入ってみる事にした。


 薄暗い店の中では数人の男女が酒を飲んでいるようだ。

 真っ昼間だが酒場なんてそんな物だろう。


 バーテンの男はカウンターで花瓶に花を生けながら俺に話しかけた。


「いらっしゃい、何にする」

「いや、仲間を探しに来ただけだ」

「ここは酒場だぜ、何か注文しろ」


 水1ゴールドを注文すると、バーテンの男が木のジョッキに水を注ぐ。


「冒険者ならそこら辺の奴等に声をかけるといい」


 バーテンの男はそう言うとカウンターの横に移動していった。


 なんか本当にゲームみたいな流れだが、実際のゲームも水を注文するとバーテンの男が声をかけるように説明される。


 このゲームでは裏技として、実際は冒険者組合に行って最初の仲間を登録して旅を始める仕様なのだが、酒場にいる冒険者の方が若干強力で、初期の冒険を有利に進められるというイベントがあった。


 このゲーム自体は何度もクリアして、遊び倒しているので遊び方はわかっているが、まさかゲームと同じ展開になるとは思わなかったのだ。


 ただ、俺の想定と違うのは 十年後で二回目?の魔王討伐となっている。


 そんな事は置いておき、一人カウンターで酒を飲んでいる女に声をかける事にした。


「どうも、旅の仲間をさがしているんだが、話いいか?」

 女はこっちを上から下まで見て返事をした


「あんた、勇者かい?」

「ああ、そうだな」


「旅の仲間探しとはナンパにしちゃダイレクトだね、私も一稼ぎしたいと思っていた所だ、付き合うよ」


 ナンパじゃねぇし……。

 小さく呟くが、目の前の女に自己紹介をする。


「俺の名前は……エドだ」

 握手のために手を差しだすと

「我の名はフレイアだ、よろしく」


 俺の名前のエド、ゲームで良く設定する名前。

 関東地方に住んで居るからこの名前を付けているだけだ。東京に住んでいる訳ではない。


 フレイアは女戦士だ。

 高身長の180cmほどのスタイルは、女性らしい曲線と共に、鍛え上げられた筋肉が全身に通っている。

 その姿勢はまるで自信と力強さが溢れ出ているようだ。

 彼女のブラウン色の髪は肩まで伸び、ウェーブのかかった髪をポニーテールのように一本に纏めていた。

 その髪型は彼女の強さと同様に爽やかでありながらも凛とした美しさを感じさせ、革のインナーを身にまとい、その装いは彼女の体型にぴったりとフィットし彼女の魅力を一層引き立てている。


 彼女には自分の魅力がわからないのだろうか?、大きく突き出た胸まわりに細く締まったウエストにキュッと上がっているお尻。

 今の状態では目のやり場に困る、活発な感じのの美人だ。


改めて見ると、何となく声をかけた女性がスタイルの良い美人だったので声が止まってしまう。


「ところでエド、連れが居るんだが紹介してもいいか?」

 仲間が居たのか、声をかける手間が減ったな。

「ああ、かまわないから、紹介してくれ」

 フレイアが声をかけると女性二人が現れた。

「インテグラとセレスだ」


「初めましてですわ」

「初めましてっす」


 女三人組だとは思わなかった。


 インテグラは魔法使い「ですわ」調のお嬢様風

 セレスは聖職者で聖職者にしては元気な言葉通いの「っす」調の言葉使い。


 三人が仲間になった所で、夢から目が覚めた。

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