第18話 反旗⑱

「…信用しすぎるのだけはやめてくれよ」


「わかっている」


そうこうしているうちにイズミルが見えてくる。本当ならこのままゆっくりしてしまいたいところだがそうともいかない。アイリス公爵家の使者がそろそろつく頃だとしても不思議じゃない。


きちんと勝てるような作戦を立てることができなければアイリス公爵家を味方にすることができない。


ヘリが訓練場のヘリポートに着陸すると俺はカースと師団長らを引き連れて館のリビングに作った臨時の指令室に向かう。


カースたちが連れてきた部隊の対応のために陸戦隊が出払ってしまっているので今は非常に静かになっている。


「ここが指令室か!なかなか様になっているじゃないか!」


「まぁ、臨時だ。どこかのタイミングで移す」


「それでこれからは何をするんだ?」


「今ある戦略だけで勝ち筋を見つける。そうしないとアイリス公爵家をこちらわがにつけることができない」


「わかった。それじゃ、地図を使って今の戦力を簡単に作るか!」


ということで俺たちは現在帝国内に配備されている部隊を一つ一つ駒に見立てていきながら、現在いると思われる場所にそれを立てていく。士官学校では必須のスキルであるため全員が簡単にできる。


俺たちは完成させるとそのまま駒を動かしていきながら戦術を考え始める。


「どこが今回の戦争で一番のターニングポイントとなる場所だと思う?」


「そうだな、、、やっぱりここじゃないか?」


カースが指をさしたのはバクー。エーデルワイス公爵家が治めている地域で立地的にも相当重要な場所で資源的にも相当有利になる。ただやはり公爵家。しかも内部事情などを含めてあまりわからないところに攻め込むのはリスクがありすぎる。


「そうだよな。でもそこはエーデルワイス公爵領だ。正直危険じゃないか?」


「間違いない。だが、ここがとれないと東部戦線で憂いが残ることになるぞ?」


「エミル最高司令官、バクー側からではなくイスタンブール側から帝都まで攻め込むのはどうなのでしょうか?帝都までの道のりで大きな敵師団と接敵することもなさそうですし比較的簡単に行けるのではないでしょうか?」


「いや、逆に何回も敵師団に当たって各個撃破したい。もし残った師団が帝都に集結して対抗してきた場合に人数差が激しくなる。戦い全体での人数差はどうにかなるが、一つの決戦での人数差は正直厳しくなる」


「なるほど。それならば帝都防衛隊をまずは確実に粉砕したいところですね」


「あぁ、帝都防衛隊の動きはわからないが、空軍が協力することはないはずだ。イズミル周辺海域には哨戒機を飛ばして海を警戒する。そして陸上から攻めてくるのなら今回カースたちが布陣したところが濃厚だ」

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