第6話 反旗⑥

カエサルは王宮を後にすると自身が所属する帝都防衛隊の基地へと向かう。


「カエサル様、お疲れ様です」


カエサルにそう挨拶するのは帝都防衛隊の副隊長、そしてこれまた王家の血を引いた貴族でもある。


「今すぐに部隊の用意をしておいてくれ。準備ができ次第出陣する」


「了解です。それでどこに出陣するんですか?」


「イズミルだ。そこに反逆者であるエミルが逃げ込んでいる」


「エミルというと最高司令官のエミルですか?」


「あぁ、そうだ。帝王の暗殺をもくろんでいたが失敗してイズミルに逃げた」


「そうですか。私達の初めての実戦です。腕が鳴りますな」


副隊長の男はそういうと基地の中に駆け込んでいった。副隊長は帝都防衛隊ができてから初めての実戦ということでやる気に満ち溢れている。もしここで活躍をすることができれば軍人としての昇格だけでなく、貴族としても昇格もあるかもしれない。


ただ帝都防衛隊は一応陸軍の管轄にはなっているが、陸軍と同じような装備を使っているわけではない。基本的には陸軍ではもう使われなくなった武器などが払下げられているような形で装備が用意されている。


それに帝都防衛隊は戦闘を想定している部隊ではないため、銃などの軍隊として最低限のもの以外は持っていない。なのでヘリコプターや艦艇もない。そのせいでイズミルに行くためには帝都近くにあるほかの基地から輸送を手配してもらわなければならない。


そのためたとえ帝都防衛隊を派遣することになったとしても現地につくまでにそこそこ長い時間がかかることになるのだが、今ここにいる遊ぶ感覚で軍人をやっている貴族、そしてそれを命じた皇帝もそれには気づいていなかった。もしこの中に1人でも士官学校をちゃんと卒業しているのまともな軍人が居ればどうにかなったのだがここは帝都防衛隊だ。貴族様の軍隊ごっこと揶揄されるここにはそんな人材がいるわけもない。


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父さんは俺のことを抱きしめるとなかなか話してくれない。


「父さん、少し話したいことがあるのですが」


「あぁ、そうだったな」


父さんはそういうと少し恥ずかしそうにしながら俺から離れて椅子に座る。


「それでどうしたんだ?いろいろ仕事が忙しいんじゃのか?」


「それは…もう気にしなくても大丈夫です」


俺はそういう時暗い顔をしていたのだろう。父さんは俺の顔を見ると不安そうな表情を浮かべる。


「どうしたんだ?最近あった戦争もちゃんと勝ったと聞いたぞ?」


「実は…王宮で近衛兵と軽い戦闘になってしまいました」


「…は?、、、いや、最近はずっと仕事をこなすのに精いっぱいだったからな。少し、聞き間違えてしまったようだ。もう一度言ってくれるか」


「王宮にて…近衛兵と軽い戦闘になりました」


「…」

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