第7話 隣国に行くよ

僕は墜落した小型の竜(飛竜)に向かって全力で走る。

墜落地点と思われる付近に近づくと、飛竜と燕尾服を来た赤目の男が立っていた。


 「貴様、王国の手の者か?」

 「あ?誰だお前は?」


 「は?貴様こそ誰だ?」

 「僕はそこの飛竜を頂きに来た。ただし盗賊では無い。」


 「は?貴様、物を盗むのは盗賊のすることだろ!」

 「僕は違う。ただ、その飛竜が欲しく魔法を撃っただけだ。」

 

 「今し方、国王の所へ魔国の使者として向かったこの私を撃墜しただと?」

 「違う。僕は飛竜が欲しくて撃った。お前は知らない。」


 「き、貴様とは話にならん。もうよい。私は急ぐのでな。」

 「なら、その飛竜を置いて行け。」


 「貴様はやはり盗賊か!」

 「違う。僕はその飛竜が欲しいだけだ。」


 「貴様は上位魔族である私を愚弄しているのか!!」

 「いや、だからお前なんて知らない。飛竜を置いてけ。」


 「断る!」

 「ふーん。魔族だからモンスターと同じ扱いでいいのかな?

  じゃあ、ちょっと殺そうか!

  ナイ、俺が押さえるからコイツの首を切ってくれ。」


 「あい。ご主人しゃま。」

 「貴様、サラッと恐ろしい事を言うな!!」


  スッ… ガシッ!!


 「な、なにをする!! う、動かん!!」

 「ナイ~、しゅぱっと切っちゃって。」


 「あい」

 「ま、待て!話せばわかる。ちょっと待ってくれ!」

 「ん?飛竜おいてくの?」


 「そ、それは出来ん。魔王様の所に一刻も早く報告に向かわねば。」

 「ナイ、切ってい…」


 「わ、わかった。貴様達を魔国に招待して飛竜を1羽授けよう!」

 「えー、面倒だからヤダ。お前を殺してこの飛竜を貰う。」


 「わ、わかった。そこの娘の右腕も義手になるが治してやろう。

  あ、あとは…、あとは金も出す。好きなだけ魔国に滞在してもいい!」


 「うーん。どうしようかなー。嘘ついたら全員殺すよ?

  魔族はモンスターと同じだから殺しても罪にならないし。」


 「き、貴様は随分と歪んだ考えを持っておるのだな…」


 僕たちは飛竜に乗って、魔国に招待された。

 王国の隣に魔国は有った。歩いて向かった先と同じだった。


 そして飛ぶこと数時間、僕たちは魔国の王城に到着した。

 すると護衛のトカゲ兵士が出てきた。


 「ラーク様、魔王様がお待ちです。

  この人間たちは一体?」


 「う、うむ。私の客だ。丁重に持て成せ。」

 「はっ」


 「僕たちも魔王のところに行く。」

 「な、なにを!それは無理だ!困る!」


 「僕も報告と聞きたいことがあるし。」

 「何をしておるラーク!魔王様がお待ちかねだ!」


 後ろから骸骨の男が声を掛けてきた。


 「はっ。キャメル宰相、すぐに向かいます。」

 「おい。この人間はなんだ?」


 「あ、あのー、その…」

 「ご主人しゃま。お骨が喋ってましゅ。」

 「ああ、そうだな。骨が喋ってるな。

  どこから声が出ているんだ?」


 僕は骨男に近づき、頭蓋骨を掴んで引っ張った。


 「な、なにをするか!無礼者!」


 僕は頭蓋骨から声が聞こえたので外そうと力を入れる。


 「ちょ、ちょっと、痛いって、駄目、取れるから!」

 「ナイ、この頭蓋骨を外したいから切り取って」

 「あい。ご主人しゃま。」


 「ちょっと待って、止めて、痛いって。」


 骨男を押さえて頭蓋骨を鷲掴みにする。 

 すると後ろからトカゲ兵士が僕を槍で刺してきた。


 「いってーな!」 ドゴン!!


 僕はトカゲ兵士を殴り、ぶっ飛ばす。兵士は気絶した。

 腹が立ったのでラークと言う男も殴った。彼は腹を押さえて倒れた。

 後ろから女性の声が聞こえた。


 「ちょっとすまぬが、彼は私の部下でね。

  許してはくれまいか?」


 「ああ? 誰だお前は?

  僕はこの頭蓋骨の中を見たいんだ。」


 「そ…そうか。じゃが頭を取られると彼は死ぬのじゃ。

  許してはくれまいか?」


 「もう死んでるだろ?骨だし。」

 「骨でしゅ」


 「言いたいことは分かる。

  しかし彼も生き… 」


  バッ シュタッ ぐりぐり!!!


 「あ、ちょ、ちょっと、ツノを引っ張らないで!」


 僕はこの女性の頭部にある2本のツノに興味が移った。

 

 「このツノって本物か?」

 「ちょっと!やめてよ!

  もうぉぉぉぉーーーー」


 彼女が叫んだ瞬間、大きな火の玉が出現して僕に直撃した。

 近くにいた、キャメル宰相とか言う骨男と

 ラークと言う赤目の男が爆風で吹き飛ばされた。

 ナイは僕の後ろにいたので、爆風から逃れられた。


 「いてーな!おい!お仕置きだ!」


 僕は彼女が室内で危険な事をしたのでお仕置きをする。

 彼女を屈ませ、ズボンを脱がす。そして生尻を叩いた。


  スパァーーン


 「ちょっと私は魔王よ!なにするのよ!」


  スパァーーン スパァーーン


 「う、動けない… くっ… 」


  スパパァーーン スパパァーーン


 「い、痛い… ちょっと止めて…」


  スパパパァーーン


 「みんなが見てるから恥ずかしい。やめて…」


  スパパパパァーーン


 「あうっ… やめて…」


  スパパパパパァーーーーン


 「ぐすん… ごべんなざい、もうやべて…」


 「こんな屋内で火の魔法を使ったら危ないだろうが!

  わかったか!」


 「はい… ごべんざざい…」


 僕は彼女を叱り、謝ったので許してあげた。良い事をした。

 きっと彼女を叱る人が居なかったんだろう。


  ドガッ…


 「おい、ラーク?だったか?起きろ!

  魔王の所へ行くぞ。そこの骨男もだ!」

 

 ラークが僕の蹴りで目覚めたみたい。いつまで寝てるんだか。

 この隙に骨男の頭蓋骨も取ろうかなと思っていたとき。


 「う…うぐっ…ま、魔王様、ご無事でしょうか?」

 「ぐすん… なんで死なないの… 私、爆裂魔法を直撃させたのに…」


 「なに?お前、僕を殺すつもりだったんだな!

  よし、ここの全員を皆殺しにしてやる。」

 

 「ナイ、ラークの首を切れ!

  俺はこの女のツノをもぎ取る!討伐証明部位だ!」

 「あいさー。」


 「ちょ、ちょっと待って。許して。ごめんなさい!」

 「駄目だ。殺しにくるヤツは殺される覚悟のある者のはずだ!!」


 「ナイ、ラークの首を切ったら短剣を貸してくれ

  このツノをえぐりとる。」


 「わかったわ。ごめんなさい。

  降参よ、言うことを聞くから止めて。」


 「そんなの知らない。僕はこのツノが欲しいんだ!」

 「きゃあぁぁぁーー」


 ラークとキャメル宰相になだめられ、僕はツノを諦める。

 それから王座の間に向かい、魔王と話す。


 「おい、お前、なぜ偉そうに見下ろしてる」

 「いや…あの…ここ私の席だし…」


 「駄目だ。僕の横に来い。」 

 「あの…なぜ魔国に来たのでしょうか?」


 「飛竜を貰うのとナイの右腕を治すためだ。

  あと金を寄こせ。寝るところも用意しろ。

  飯も出せ。飽きたら帰る。」


 「「「……。」」」


 「あと、大教会を襲ってたガーゴイルは全部殺した。」

 「え?あの精鋭部隊を?」


 「弱かったぞ。ナイと二人でちょんぱした。

  何をしてる! 早くナイの義手を用意して治せ!」


 「「「は…はいっ」」」


 「おい、そこのトカゲ、部屋に案内しろ。」

 「我はトカゲでは無い!土竜の一族だ!」


 「もう1回殴るぞ?」

 「あ、部屋はこちらです。」


 僕とナイは寝床と食事を無償で確保した。

 世の中にはいい人もいるもんだ。



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