第2話 異世界に来たよ

 転移したこの場所は、草原で爽やかな風が吹いてる。

 そして草原の横には街道が続いている。


 僕は神様に見送ってもらって、異世界に転移してきた。

 ビックリしたけど、もう仕方がなかったよね?

 だって神様の言う事だし、逆らえなから。


 僕は綾小路 公人(アヤノコウジ キミヒト) 15歳。

 父は国会議員で、母は上場企業の社長をしてる。

 全寮制の私立進学校に主席で入学した、ごく普通の高校生だ。


 「あぁ~、クソがぁ。あのハゲめ。杖と服を取り返されたぜ」

 「クッソ。今度会ったらボコボコにしてやる。あのボケめ。」


 僕は神様から頂いたチートを確認することにした。


 「ステータス」


 目前にゲームみたいなステータスウィンドウが現れた。


 ━━━━━━ステータス━━━━━━

 名前 :綾小路 公人

 レベル:100

 HP :1540

 MP :2447

 攻撃力:3441

 防御力:1446

 ──────呪文───────

 ファイヤ ウォーター


 ──────スキル──────

 鑑定 全言語理解


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━


 僕はウィンドウが現れ、びっくりして思わず声を上げてしまった。


 「ケッ… しけた能力だな。」


 すると近くにいたモンスターが声に気付き、襲ってきた。


 ゴギャオオオ!!


 「ああ? 雑魚が。死ね!」


 グシャ…


 ちょっと怖かったけど、モンスターと戦って何とか勝った。

 前の方に街が見えたから、そこに行って誰かに助けて貰おうと思う。

 僕はこの世界の事を何も知らないから不安だ。


 「きゃあーー たすけてー」

 「グヘヘ、いいじゃねえか。」


 前方に女性が襲われてるのを確認する。


 あっ、大変だ!気分的に助けてあげなきゃ。


 「おい小僧、何みてるんだ。コラ!」

 「いえ。見てません。失礼、横を通り過ぎるだけですから。」

 「きゃあーー、たすけてー」

 「おい小僧、この状況を見て何もしねぇのかよ?」


  僕は女性を助けようと悪漢と闘った気になった。


 「いえ。僕は先を急ぎますので。」

 「おい、この女がどうなってもいいのか!」


 ヤバイ!女性が危険だ!助けたフリをしよう。


 「スタスタ…」

 「おい、なんだ小僧、やるのか?」

 「スタコラサッサ……」

 「お、おい…」


 良かった。女性が助かったか知らないけど。

 僕は良いことをした気がするかもしれない。

 後ろから何か聞こえるけど、女性の感謝の言葉だろうか?


 しばらく歩くと街の入口が見えた。

 そして兵士が入口で入場者の身分確認を確認してる。


 僕も並んで兵士さんに事情を説明しないとな。


 ガラガラ… ガラガラ…


 商品を積んだ商人の馬車だ。生まれて初めてリアルに馬車を見た。


 シュタシュタッ… スルッ…


 「ん? 何じゃ? 変に馬車が揺れたような…」

 「おーい。止まれ。」

 「やあ、ジョン。嫁さん元気か?」

 「やあ、マイク。ああ元気さ。商売はどうだ?」

 「まあ、ボチボチ頑張ってるよ。」

 「そうか、じゃあまたな。行っていいぞ。」

 「またな、ジョン。」


 ガラガラ… ガラガラ…


 兵士と商人は知り合いみたいだ。大人の会話に僕は憧れるなぁ。


 スルッ…  シュタッ… タッタッタッタ…


 「ん? 何じゃ? また、変に馬車が揺れたような…」


 僕は既に街の中に居るけど、ここはレンガと石造りの雰囲気が良い街だ。

 これからここで生活をするのか。もう大人だから頑張ろう!

 そうだ、どこかの機関で身分証を作らないと。

 この冒険者ギルドで確認してみよう。


 あのカウンターで聞けばいいのかな?


 「すみませーん。」

 「はい。ご用件をどうぞ。」

 「僕は15歳なんですけど、登録ってできますか?」

 「はい。大丈夫よ。ちょっと待ってね。」


 新規加入の登録用紙を取りに職員が離席する。


 「チッ… 化粧の濃いババァだな…」


 そして職員が登録用紙を持って戻ってきた。


 「はい。お待たせ。これに書いてね。」


 神様のお陰で字は読めるけど書けない。不思議な文字だな。


 「あら、字が書けないの?」

 「うん。遠くの村から出て来たんだ。村長しか字が書けなかったんだ。」

 「あらあら。じゃあお姉さんが変わりに書いてあげるわ。」

 「お姉さん。ありがとう。」

 「うふふ。いいのよ。じゃあ、お名前と出身は?」


 「キミヒトです。マキャビチャッチュムチャン村から来ました。」

 「え?もう一度言ってくれるかな?よく聞き取れなくて。」


 「マチャムチャムンちょっちゅねー村です。」

 「マッチャンちょっちゅねー村?えっと…、どこにあるのかな?」


 「あの山を越えたずっと先にあります。」

 「ああ、マキルンの村ね。遠いとこから来たのね。」

 「はい。」


 僕は無事に冒険者ギルドでカードを作成することが出来た。


 「はい。これが冒険者カードよ。」

 「無くすと罰金だから気を付けてね。」

 「細かい事はこの冊子をよんでね。字は読めるのよね?」


 「はい。お姉さん。読めます。」


 「困った事があったら私の所まで来るのよ。」

 「お姉さんはエルザって言うの。宜しくね。」

 「はい。エルザお姉さん。よろしくお願いします。」

 「うふふ。」


 職員のエルザからカードを受け取る。ランクはFと表記がされていた。


 今日から僕は冒険者だ。色々な所に行って冒険者しよう!

 あのギルド職員のお姉さん。名前まで教えてくれたな。


 「あのババァ、化粧クセー、何が "エルザって言うのよ" だ。」

 「ブスババアめ。」


 そういえば、神様が生活に困らないようにお金を少しくれたんだった。


 「あのハゲ神もケチくせー。金貨20枚しかねーじゃん。あのボケカスが。」


 冒険者ギルドを出て、次は宿の確保に向かう。


 僕は冒険者ギルドの近くに黒鳥の宿って店を見つけた。

 良さそうな宿屋だ。宿泊はここに決めた。


 黒鳥の宿のドアを開け、中に入る。奥から女性の店員が出てきた。


 「すみませーん。」

 「はいはーい。いらっしゃい。お泊まりですか?」

 「はい。一泊食事付きでいくらですか?」

 「銀貨5枚になります。」

 「じゃあ、10日分でお願いします。金貨5枚ですよね?」


 「はい。そうです。ありがとうございます。

  お部屋は2階の奥になります。

  お食事は朝夕、このホール食堂まで来て下さいね。」


 「ありがとうございます。」


 女性の店員に金貨5枚を渡し、支払いを終える。

 鍵を受け取り2階の部屋に向かう。

 良かった。寝るところを確保出来た。

 少し汚れた宿屋だけど、これで安心だ。


 「しかし、きったねー宿だな。店員もババァだしな。」


 僕は部屋に入って少しホッとした。

 これからが大変だけどお金を稼がないとね。

 冒険者ギルドに行って仕事が無いか早速探しに行く事にした。


 黒鳥の宿を出て冒険者ギルドへ再び向かう。


 ギルドは宿から近いから楽だな。依頼ボードを見て仕事を探そう!


 依頼ボードを見ていると、冒険者と思われる男が近づいてきた。


 「おい小僧、てめえみたいなガキが来る所じゃねーぞ、ここは。」


 突然に怒られた。事情を説明するフリをしないとな。


 「ああん? ガンッ ドカッ ドサッ…」

 「うぅ… た、助け…」 

 「グシャ…」


 男がキミヒトに殴られ、助けを乞いながら床に倒れる。


 この男に身振り手振りで説明したけど分かってくれたかな?

 床で寝転がって何か言ってるけど「風邪引くぞ」って言っておくか。


 そのまま、キミヒトは依頼ボードを見ている。

 仲間と思われる男達が近づいてきた。


 「ピーター!大丈夫か?どうしたんだ!」

 「うぅ… そこのガキに…」

 「おい、小僧! てめえ何しやが…」

 「ガンッ ガンッ ガンッ ドカッ… ドサッ…」


 男達がキミヒトに殴られ、さらに床に倒れている。


 今日は騒がしいね。宿屋に帰ってもう休もう。


キミヒトは床に倒れている男達を踏みつけて冒険者ギルドを出た。

そして一部始終を見ていた者達から「狂犬」と二つ名を付けられた。


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