第19話

 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 たかが失恋…

 今まで経験が無かったわけじゃない

 いい歳して

 別れにすがって生きたくは無い


 リラックスできるはずの自分の部屋…

 帰宅後も 心身ともに 休まらない

 目の前をチラつく 彼の存在…

 振り切るように せわしなく家事かじ



 あ、そうだ…連絡しなきゃ…



「あら!アミ?元気?

 その後、柾國まさくにくんとはどう?

 仲良くしてる?」



 いつもなら

 この声を聞けば 元気になるのに…

 今日は、…



「お母さん…私、

 まさくんと 別れたよ…

 好きだったのに…別れちゃったっ…

 …ぅ……お母さんっ…っごめんね…」


 会社で気を張っている分

 親の前では

 幼い子供のように泣きじゃくる


 何だか 他人事ひとごとのようで…

 まだ…信じられなくて…

 


 ••┈┈┈┈••



「あなた〜L(°ロ° L)!!!!!大変よぉぉぅぅ!!!」


「何?アミが柾國くんと別れたぁ??!!

 先方に電話して聞いてみる!!!」



 。゜⋆。゜⋆



「どういうことですか?!」


「はい?…どうしました?」


「アミから、柾國くんと別れたと

 聞いたんですが…」


「えっ!?…この前 2人仲良く、

 こちらに顔見せに来てくれましたよ?

 なにかの間違いじゃ…?」


「……えっ?」


「柾國に確認してみます…」


 ••┈┈┈┈••


 両家の両親も混乱…


 でも、早い方がいいでしょ?

 何事も切り替えが大事…


 期待に応えられなくて

 ごめんね…お父さん、お母さん…



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 時間は少しずつ 私を落ち着かせる…


 彼と 別れてから

 半月はんつきが過ぎた


 事務所で 名前を呼ばれること、

 仕事を回されること、

 怒鳴られること…

 もう、すっかり無い…


 事務所の皆も

 何となくわかっているのか

 あえて 部長とひよ子の様子も

 見て見ぬふり


 じんしゅんが居てくれたから

 立っていられた…



 "同じ空間に 一緒にいる…"

 それだけで 嬉しかったのになぁ


 毎日毎日、懲りずに

 ひよ子の 気持ち悪い猛プッシュを

 見せつけられる

 …ここから消えたくて仕方ない


 別れて 日にちは経っても まだ…

 あの2人が視界に入ると…

 この2人の会話を耳にしてしまうと…


 腹も立つ~~~(ง"`‎罒´)ง

 虫唾が走る……(((;°Д°;)))カタカタカタ

 我慢してんのよ、私だって!!!



「部長ぉぉぉ♡」


「…何?」


「今晩、食事に行きませんか?♡」


「……今、仕事中だ…後にしろ!」


「はぁ〜い( ˙꒳​˙ )/♡」



 まさくんに相手にされてないくせに

 いちいち アピるな!!! (`Д´) ケッ!…



 ブーッ、ブーッ…スマホが震える


「あ、もしもし…てっちゃん?…」


 スマホを耳にあてながら

 事務所から出た



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜柾國まさくにside〜



 "別れたのは アミを守るための選択"

 そう言い聞かせて ひたすら

 ひよ子の猛襲にも耐えている


『好きでもない女と

 食事になんて行くわけないだろ!』



 アミは もう…

 目を合わせようともしない…

 嫌われて当然か…

 俺は…今もまだ 苦しんでいるのに…

 


 "てっちゃん"というワードに

 作業する手が止まる



てつ、…っ……』



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 給湯スペースで

 てっちゃんと電話していた


「ご飯?…うん、いいよ!

 じゃあ、終わったら連絡する!は〜い!」



 電話を終えて

 事務所に戻ろうと振り返ると

 部長やつが仁王立ちで

 こちらを見ていた


『…偉そうに こっち見んなし!(◦`꒳´◦)フン!』


 視線を そらして

 無言で通り過ぎようとしたら

 ガシッと腕を掴まれた


「……痛っ…」


「へぇ〜、次はアイツか…

 早いな〜…ヨリ戻したんだ?」


 私を見ずに、正面を向いたまま

 部長やつは言った…


 は?何それ……


「私の次は…ピヨピヨ女ですか?

 キスより先へは、進みましたか?」


 嫌味は 嫌味で返す


「あ゛?…何だって?…っ…」


「私が誰と一緒にいようが、

 もう、アンタに関係ない…

 鬱陶うっとうしいから話しかけないでっ!!!」



 久々に言葉を交わしたのに…

 自分でも呆れてしまう…

 こんなこと 言いたいわけじゃない…

 

 もう…いっその事

 思いっきり嫌われたい…


 掴まれて熱くなった腕を

 力一杯 振り解き

 事務所に戻った



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



「自分から離れておいて

 何 言ってんだ、俺は…」


 アミに振り解かれて

 冷たくなっていく掌…



 心が崩れていく…壊れていく…



 ── どうしてなんだろう…

 どうして アミなんだろう…

 どうして…離れられないんだろう… ──



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



『好き勝手言ってんじゃねぇよっ!

 私のことを振って

 ひよ子と付き合ってるくせに!

 ムカ~~~(ง"`‎罒´)ง』


 アミはイライラしながら事務所に戻ると

 ひよ子がキョロキョロと探している



 あとから戻ってきた柾國に


「あ!いたいた♡…部長ぉぉぉ♡

 この部分なんですけどぉ〜♡」


 書類を片手に

 まるで 飼い主に甘える猫のように

 柾國に擦り寄っていく



 ふつふつと、何かが沸き出す…



 ・・・これからも ずっと

 ・・・この2人のことを

 ・・・見なきゃいけないの?




「ねぇ、聞いてますぅ?部長ぉぅ♡」


「…何だよ!」




 ・・・今は、素っ気ないけど

 ・・・いつかは笑顔で

 ・・・ひよ子と会話する日が来るの?




「あ、それとも いつもみたいに

 "柾國さん"って

 呼んだ方がいいですか?(*´艸`*)エヘッ♡」


 いつも…みたいに……っ…


「…………」


 ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙…もう…


(((((*`Д´)))))プルプルプルプルプルプルプル



「柾國さ〜ん♡」



 …ダメだ



 ──── プッ…ツン…… ────



「はぁ〜…ウッザっ…(ボソッ)」



「…先輩?…何か言いました?…」


 私の横を通り過ぎようとしたしゅん

 立ち止まった その時



「てめぇら!

 イチャイチャするなら 外でやれよっ!

 ゴルァァァァァ(ノ`Д)ノ:・'∵:.┻┻」



 あぁ…終わった……



「イチャイチャなんかしてねぇよっ!!!!」

 柾國も言い返す



 私の雄叫びで

 静まり返った事務所の中…



「おい、アミっ!!!!」

 じんが慌てて 止めに入る


 完全にキレてしまった私は

 ひよ子を睨みつけ


「みんな仕事してんだよ!

 ガキじゃあるまいし!空気読め!

 毎日ピヨピヨ うるせぇんだよ!

 恥ずかしげもなく

 色目使って イキってんじゃねぇよっ!

 この【ピーーー】がっ!!!!」


 一度噴火すると、止まらない…

 どす黒くて 汚い言葉が

 ドロドロと流れ出す



「アミ、やめろっ!!!!」

 制止させようと

 私の前に出る仁の横をすり抜けて

 ヅカヅカと部長あのひとの元へ



 声のトーンを下げた捨て台詞…



「こんなクソみたいな会社…

  こっちから 辞めてやるよ…」



 まさくん…幻滅してくれていいよ…

 私は、こんな女なんだよ…っ…



「さようなら…部長…」



 これで、ホントのお別れ…

 振り返って その場から離れた



「……っ…」

 柾國は、アミの言葉に絶句した



「先輩っ!!!!」

 俊が張り上げた声も、

 私には、もう届かなかった…



 1秒でも、こんなところに居たくない…



「ごぉふ!!!! 郷布ごぉふ専務っ!!!!」



「ァ、アミさん…落ち着いて!!」

 専務もビビっちゃって…



「私、会社辞めます!!!!

 退職届、後日郵送しますから!!!!」



「アミ、待てって!少し落ち着け…な?」

 仁が駆け寄ってきたけど


「ごめん、仁…っ……」



 荷物をまとめてアミは事務所を出た…



「仁さん、どうしよう…先輩がぁ……」

 今にも泣きそうな俊



「久々に見たわ、噴火したアミ…

 。゚(゚ノ∀`゚)゚。アヒャヒャ

 入社した時も、理不尽なことあれば

 爆発してたんだよ、ね!アキコ先輩!」

 仁がアキコに話を振った


「そうそう!

 私なんか何度もアミちゃんを

 羽交い締めして止めに入ったことある!

 懐かしい〜!」



「アイツは、1回キレると

 手が つけられなくて

 大変なんだよ(ノ∀≦。)ノアハハ…」


 仁は 俊に笑って見せた



「やったぁ〜♡

 邪魔者がやっと居なくなった♡

 私の勝ち(*^^)v」


 ひよ子が喜んでいる…


 誰もがザワザワしだした、その時



「人のモノ奪ったって、

 幸せになんかなれねぇよ…」


 ひよ子に向かって仁が言い放った…



 そして…

「おい、部長っ!!!

 アミに あそこまでを言わせておいて

 アンタは何とも思わないのかよっ!!!!!」



 ザワザワしていた事務所が

 仁の声で、再び静まり返る…



「しゃ、社長に報告してくるよ…」

 青ざめた郷布専務が、柾國に告げた


「僕も行きます…」


 ……専務と柾國は 社長室へ向かった

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