オタクなギャルを助けたら、他校で一番人気なギャルだった件。

あげもち

第1話 『オタクなギャル』

 部活で少し帰りが遅れてしまった放課後。


 日が暮れて明かりが灯った街灯と、ベンチの横でぼんやりと光る自販機。


「あ、あのっ!」


 そんな可愛らしい声に、俺は振り返る。


 そこには、隣町の女子校のセーラー服に身を包んだ、金髪のギャルが立っていた。


 パチリとした大きな目とその中心の蒼色と、長いまつ毛。


 鼻翼が小さい筋の通った鼻筋や、桜色の薄い唇。


 それらがバランスよく配置された顔は、控えめに言って綺麗な顔をしてるなって。そう思った。


 そして何よりも、彼女の特徴とも言うべき長い金髪と、おそらくサイドテールというのだろうか。彼女の右側頭部からは黒のヘアゴムで結われた髪の毛が揺れていた。


 視界の少し先。街頭でぼんやりと照らされた彼女に、俺は言葉を返す。


「ん、どうした?」


「……こ、ここら辺で大切なものを無くしちゃって……、急に、しかも赤の他人からの失礼なお願いかもしれないんですけど、一緒に探してくれませんか?」


 そう言って、胸の前で握った彼女の華奢な手は、少し震えていて。


 何よりも、綺麗な瞳の目尻には、うすらと涙が浮かんでいる気がした。


 ……だからなのか、もしくは違う理由なのか。


「……それってどんな物なんだ?」

 

 俺の言葉。


「……え、あ……」


 そののちに、彼女の顔に困惑の色が浮かぶ。


 「えと……あの……」


 なんでそんなふうに困惑するのだろうか。探していたものが見つかるかもしれないのだから、本来はもっと喜ぶべきだろう。


 でも、そうしているうちに、だった目元の潤みが、白い頬に筋を引く涙に変わって。


「あはは……あり……がと……」


 そう鼻を啜りながら、彼女は目元を袖で拭った。


 そして、その手のひらが、土で汚れているのを見て、なんか分かった気がした。


 きっと、彼女は無くし物をしてから、ずっと不安な気持ちで探していたのだろう。


 そして諦めがつかなくて、誰かに助けを求めても、知らないふりをされて。


 だから、


「ありがと……本当にありがとう……」


 そんな風に、嗚咽を漏らしながら、可愛い顔を歪めてまでも涙を流すのだろう。


 そんな彼女に近づき、俺はポケットティッシュを差し出す。


「その……安心してって言葉が、あってるどうかは分からないけど、俺も見つかるまで探すから。だからほら、涙拭いて」


「……うん」


 鼻を啜り、子供みたいに大きく頷くと、ポケットティッシュを受け取る。


 それで雑に目元を擦ると、


「よっし、絶対に見つける」


 そう意気込んで、覇気の戻った表情は彼女に似合ってるなって、そう思った。





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