犯人捕縛作戦 2
「ねえシンシア、これなんだと思う? 遥か東の国の遺跡から出土するって言う土偶にそっくりな気がするんだけど、どこで売っているのかしらね」
「……あんた、本当に他に言うことはないわけ?」
頭上から降ってきて割れた妙な陶器の人形の破片をつまみ上げて言えば、シンシアが額に手を当てて空を仰いだ。
移動教室のために中庭を歩いていたとき、例のごとく空から降ってきたのが、今日はこの可愛いのか可愛くないのかわからない妙な形の陶器人形だったのである。
「あんた、これがぶつかってたら危なかったのよ? わかってる?」
「うん。でも当たらなかったし」
ものが降ってくるのは中庭か玄関。それがわかっているので、集中していればエイミーの反射能力ならば防御結界を張ったりよけたりすることが可能なのだ。だからそれほど危険はない。ライオネルのくれたブレスレットもあるし。
「ねえねえ、それよりこれ、どこで売ってるのかな? なんかこう……何かを訴えかけているようなこのちょっと不細工な顔が逆に可愛いって言うか、わたしこれがほしい」
「こんなもんどこに飾る気よ」
「もちろんわたしの部屋よ」
ものが降ってきた事実よりも、この人形の入手方法を考えて頭を悩ませるエイミーに、シンシアは首を横に振った。
「そんなに欲しけりゃ職人に頼んで似たようなものを作ってもらえばいいでしょ。いいから行くわよ、授業に遅れちゃうわ!」
「え、でもここをこのままにしておけないし……」
「ほっとけば先生たちが片付けてくれるわよ! わたしたちが散らかしたんじゃないんだから放置よ! 破片で手を切ったら危ないし! って言っている側からなにしてんの⁉」
割れた陶器人形の顔の部分の破片を拾っていたエイミーに、シンシアがぎょっとした。
「え? シンシアが職人に頼めば作ってくれるって言ったんじゃない。だからこれを持って帰って、知り合いの陶器職人に作ってもらうのよ」
「…………それ、本気でほしかったわけ?」
「もちろんよ! 可愛いでしょ。ほら、この変な顔!」
「わたしにはちっとも可愛いとは思えないけど……。もうわかったから、拾うならさっさと拾って、早く行くわよ!」
「うん!」
エイミーは拾った破片をハンカチに丁寧にくるむと、それを持ってシンシアとともに教室へ急いだ。鐘の音とともに教室に滑り込めば、そのあとからすぐに音楽の教師がやってくる。
「音楽祭には、陛下も聞きにいらっしゃることになっています。真剣に取り組んでくださいね」
国王が聞きに来ると聞いてざわつく教室の中で、エイミーは拾った陶器人の破片を見つめて、別のことを考えていた。
(どうせなら二個作ってもらって、一つを殿下にプレゼントしようっと。ふふ、お揃いって、恋人同士っぽくていいものね!)
ライオネルが心の底から嫌がりそうなことを考えて、エイミーはにまにまと笑った。
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