第6話 接触

そんな食事の場も終わり、ロキは一人湖の方向に散歩しに行くと言って、ライ達と別れた。

「今日は雲があるな……」

 そんなことを呟きながら湖のほとり着くと、昨日よりも少し暗い雰囲気が辺りを漂う。

(昨日の女性は今日もいるのかな?)

 湖の周りをゆっくり歩いていると、前方距離にして3mの辺りに人影が見えた。

 そして、お互いがお互いの存在を認識したため立ち止まって警戒していると、雲に隠れていた月がゆっくりと顔を出して相手を照らし出す。

「!!」

 それは、昨日の女性だと認識したロキは息をのみ、見つめていた。

 相手の女性も警戒しながらコチラを見ているため、予期せず見つめ合うカタチをとっている。


「えっと……初めまして……その……こんばんは」

「……」

 女性に声をかけるロキだが、女性は睨んだまま口を開こうとはしない。

「えっと……昨日も来てましたよね?」

「……!?」

 昨日の姿を見られていたことに女性は驚き、さらに警戒心を高める。


「その……俺の名前は『ロキ』って言います!」

「……」

「アナタの名前を聞いても良いですか?」

 「!?」

 ロキが尋ねながら一歩前に足を出した瞬間、女性は物凄い勢いでその場を駆け出して去っていく。

「あ……」


 それがロキと女性の最初の接触であり、小さな恋の始まりであった。


               続く

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