(3)

『だから泊めてよ』

『行く所ないんだよ』

『マジで』

 この1時間半、送られてきたメッセージは、ずっと、こんな感じだ。

 あたしが出演した「エセ・フェミNPOわからせ凌辱調教」というAVの監督だ。

 制作会社の連中と飲みながら次回作の打ち合わせをしていたら、終電を逃したと言っている。

 でも、この辺りにはネットカフェも普通のカプセルより安く泊まれるサウナも有る。

 そこへ行けと言っても、ATMから金を下すの忘れた、と言い張る。

 「もう寝る」と云う意味で「もうシャワー浴びたから」と返信したら……「これから来てS*Xしてもいいよ」の意味に解釈とりやがって、その誤解(と言ってもわざと誤解したフリしてるに決ってる)を解くのに三〇分。

『わかりました。何もしないなら来て下さい』

 根負けして、そうメッセージを送った途端……玄関のドアベルが鳴った。

 ホラーかよ?

 傍から見ればギャグだろうが、あたしからすりゃ絶対にギャグじゃない。

 溜息を付きながら……玄関のドアを開ける。

「『部屋には上がるけど、何もしない』って約束は守るんですよね?」

「男には二言は無い……けど一物が有るんでね、げへへ……」

 やれやれ……「エセ・フェミNPOわからせ凌辱調教」の中の迷セリフだ。

 だが……奴の顔色が、どんどん変っていく。

 多分、あたしの顔色も変って……。

「お……おい……」

「え……」

背後うしろに居るの……誰?」

背後うしろに居るの……誰?」

 豚監督と、あたしの口から、ほぼ同時に同じ言葉。

 ふりむく。

 まだ……何か……居るのか?

 そこには……。

 何故?

 何故?

 何故?

 豚監督の背後に、あたしがもう1人居た……それだけで異常なのに……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る