第4章:ポルノ・ビデオ製作会社
(1)
言わば「親会社の役員」がほぼ全員逮捕されたのに……親会社そのものは存続していた。
役員の顔ぶれは変ったが……。
いわゆる特殊詐欺は指示役まで逮捕されたとしても、顔ぶれが変るだけで、組織や「ビジネス」は続いていくそうだが、半グレがやってるだけ有って似たようなモノなのかも知れない。
ひょっとしたら……「親会社」が「独立系」だと思っていたのは自分達だけで、本当は、どこかの
新しい役員の紹介という名目で呼び出された飲み会の帰りに、アダルト・ビデオ製作会社の雇われ社長である俺……森
しかし、吐き気がする。
オタク層狙いの作品ばかり作ってる会社を事実上牛耳ってる「親会社の役員」どもが、ほぼ全員、絵に描いたようなウェ〜イ系だと判ったら、どうなるんだろうなぁ……。
そんな心配は有るが、吐き気の理由は、それでは無い。
今時、飲み会で「一番格下」の奴が一気飲みをやらされるって、九〇年代の大学生のコンパかよ?
しかも、ボイラーメイカーだぞ。
何かのアメコミ映画にも出て来た……らしい、あの「手っ取り早く酔える」カクテル。
口から何か出そうだ。
喉元まで来てる。
油断すると絶対に出る。
でも、この辺りのコンビニは……ほとんどトイレ使わせてくれない。
ああ、クソ。
この御時世なのに、この通りだけ、朝方、ゲロが撒き散らされてる事が良く有る理由が、やっと判った。
まぁ、前の親会社の役員どもも、最悪だったが。
今時、他の組織と暴力沙汰起こして死人まで出すって……ヤンキー映画の見過ぎにも程が有る。
親会社の新しい役員からは……去年一番の大当りだった「エセ・フェミNPOわからせ凌辱調教」のパート2を作れって言われたけど……何故か、最近、あれに出た女優と連絡取れねえんだよなぁ……。
まだまだ売れ続けてんで、宣伝に協力して欲しいんだけど……。
助かった、公衆トイレが有った。
けど……。
油断した途端に少し出た。
大きい方のトイレどころか、トイレそのものの入口に入った途端に口から出た。
仕方ない。
トイレじゃなくて洗面台で吐いた。
ああ、クソ。
畜生……。
顔を上げる。
鏡が目に入り……。
まだ、酔ってんのか?
俺が二重写しに……あれ?
何で、二重写しに見える俺の片方が……こんなに悲しそうな表情なんだ?
そして、鏡の中で、俺は俺の頭をつかみ……。
ああああ……ッ⁉
何だ?
何だ?
何が起きてんだ?
俺は自分が吐き出したゲロの海に自分の頭を突っ込み……そして……。
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