12歳にだって性欲はある
俺たちが倒した?はずの媚薬スライムが謎のカプセルに入れられて、水中の中で浮いている。
「陛下達が倒されたスライムは、このオリジナルのスライムの分割体です。」
「正確に言うならば、このカプセルの中に居るのがマザーで、他のモンスターが子供のようなモノです。」
リアベルが自分が創り出した研究成果を自慢するように語る。
エロゲの中で、媚薬スライムが無限ポッポしてたのってちゃんと理由があったんだ。
「それじゃあ、このカプセルのスライムが消えたら?」
リアベルが慌てて、カプセルを背に体で庇う。
「だ、ダメですよ!!何故私の最高の研究結果をそのように扱うんですか?」
「駄作だから。」
「傑作ですよ!!」
リアベルを無視して、部屋の中のものを物色する三人。
「おーい、これは何?」
「四次元袋です。ほぼ無限に近い容量のただの袋です。」
「これは?」
「異次元物質装置。石をミスリルに変えたり出来るわ。」
「これも研究の成果じゃないか?」
「それは生活を便利にするのに作ったものです。私の研究テーマは主に生物関係ですよ。」
リアベルはこともなげに言うが、こんな未来道具を作れるのは彼女だけだと思う。
まあファンタジー世界観をガン無視したような設定は他にもあったりするので、定かではないが。
それでも彼女が類い希な天才であることは間違いない。
そう、残念な天才だ。
「まあ、どうでもいいけどそのスライムは危険だから持って行かせれないぞ?」
「だ、ダメです。この子は私の子供も同然なんです。」
涙目で必死にカプセルにしがみつくリアベル。
ほら。そんなことするから、スライムが溶けかけてるよ。
「ちょっと特殊ですが、とても強い子なんです。じ、実質、銀虎族を抵抗不可能なまでに追い詰めていましたし。」
「何だと!?」
まあ、確かに。
あんな一族全体の黒歴史を誰かに見られていたら、一生隠れ里から出ることなく一生を終えていただろう。
「そ、それに陛下も動きが鈍ってました!」
「は?」
ジャガーが呆けた顔をする。
「ボスは満足に動けてただろ?」
「違います。自分と目が合ったときは中腰に、」
「はいはいはい。スライム、スライムね。ペットにちょうど良いね~。」
俺は慌ててリアベルの言葉を遮る。
その時のリアベルの顔が腹立たしいほどにどや顔だった。
ウザさに勢いのまま、お尻をひっぱたいてしまった。
「あっ♡」
「それで、これで全部か?」
「はい、あとは袋に入れるだけなので待ってください。」
腰に付けていたポーチの中に次々と巨大な機械類を入れていく。
実際見ると、凄い光景だった。
「陛下、本当にあのスライム連れて行くんですか?」
「うーん、危険だけど。倒し方は分かってるだろ?」
女性のエッチな姿を見てしまえば、倒せるピュアスライム。なので女性には襲いかかれないはず。
しかし原作知識では、スライムのスケベなシーンは多々あった。
どういうことだ?
元々その耐性をリアベルが作るつもりだった?未来で?
分からない。
「まあ、ボスの命令なら従いますけど。」
「イエス。」
まあ、いっか。
「何だ?その気色悪いスライム。」
「ぶひ、ぶひひ。このスライムからは無限の可能性を感じるぶひ。」
誰も居なくなったはずの荒谷でそんな会話が為されていた。
リアベルの準備も終わり、あとは帰るだけ。
「もう大丈夫です。」
「じゃあ、行くか。」
リアベルの腰を掴む。
「えっ、陛下?」
そのまま脇に抱える。
「?」
隣で逃げようとしていた獣二人組も捕まえておいた。まあたいした重さじゃない。
「なるべく今日中には帰りたいな。」
「ボッ、」
「カイ、」
何か喋ろうとした二人の音が遠ざかっていくように、高速移動を開始した。
「てなわけで、帰ったよ。」
死屍累々。
カイザー様の後ろで口から色々漏れている大人の女性に、少しふらつきながらもカイザーにジト目を向けるジャガーとリナ。
「すみません、お迎えの準備も出来ずに。」
「いや、いいよいいよ。」
「それで、そちらの女性の方は?」
未だに四つん這いで吐き続けている女性をカイザー様が引っ張ってきてエリスの前に連れてくる。隣で見ていたゾルディスは鬼畜を見るかのようだった。
「今少し酔っているけど、彼女はリアベル。使えるから、魔王軍にスカウトしてきた。」
「それを、ですか?」
まさかのエリス姫、それ呼ばわり。
まあ初対面でゲロ吐き続けてたら、そうなるのか?
「戦闘面はカス同然だけど、研究系の頭脳においては抜きん出てる。」
そこは保障するよ。
そう話すカイザーの様子を見ながら、エリスは計算した。リアベルの優秀さは分からないが、何かと人を見る目は信用できるカイザー様のお言葉。
カイザー愛で常に溢れているエリスは、
「はい、何も問題ありません。」
OKを出しちゃいます。
人は時に愛のためならば、どんなに間違いと分かっていても、狂った選択をしてしまうことがある。そんな一瞬だった。
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