第4話 相続税

 賢介と沙織は、テーブルの上の札束〝300万〟をまじまじと眺めていた。

沙織は、「これってZIPPOかな?」

「ZIPPOだよ‥」賢介は、ため息に近い小さい声で答えた。

声が小さいのは、怖くなってきたからである。

沙織は、「ねえ、どうする?まだ試す?」

賢介は、「いや、楽器を買いに行ってくる。あとの250万は、また考える」

沙織は、「そうだよね!賢介の音楽の夢が叶うのが1番の目標だもんね,買ってきなよ〝楽器〟私留守番してるから」そう背中を押した。

賢介は、「わかった、じゃあ50万持ってくな!渋谷と秋葉原に行くから夜には帰る」そう言って賢介は50万をバックにいれ、家をでた。

沙織に鍵をちゃんと閉めるように伝えた。


午後3時


 アパートのチャイムがなる。

「は〜い」沙織は確認もせず、鍵を開けた。

ドアを開けると〝疲れ切った女性〟従姉妹いとこの志賀美里が立っていた。


午後8時


賢介は、思い存分楽器を買い、持てるものだけ持って帰ってきた。

「ただいま〜」と沙織に声をかけるが応答がない。

リビングは、灯りが消してある状態で沙織がいた。

賢介は、「沙織!どうかしたのか?何かあったのか?」と聞いた。

沙織は、モジモジとなかなか喋りださなかった。


「山!買った⁈」賢介はまた腰を抜かした。

「しょうがないのよ!従姉妹の美里が相続税の支払いに困って!仕方ないでしょ!ほら、キャンプも行けるし、キノコも取れるじゃない?」

賢介は、「山!山!山か?山どうすんだよ!250万の方が貴重だろ‥」

暫く、賢介の愚痴は続いたが、沙織は辛抱強く〝山〟の良さを説いた。

賢介は、半ば諦めて、ZIPPOでタバコに火を点けた。

またもや、ドラゴンの炎はでた。

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