第19話 一つの光る生命体
「さて皆さん!おはようございまーす!!!」
そんな元気の良い声がオタ芸の開始を知らせる
俺と
「それではオタ芸始まります!」
舞台が暗転し、暗闇に紛れて何人かが棒状の何かを持って出てくる
落ち着いたと思われるタイミングで曲が流れ始めた
なんだか、透明感のある良い曲だ
「うお、光った」
「あれサイリウムか、何気に初めて見たかも」
「綺麗だね~」
「凄いな」
サイリウムの物珍しさもあるが、何が凄いって全員の動きがウェーブ状になっている
滑らかな動きで光が動いていく姿は文化祭に相応しくない幻想的な景色を浮かべる
どうやら俺はオタ芸を見くびっていたようだ
しっかりと芸術的で見ていて飽きない
「うぉっ」
「動き速っ!」
「なんか色も変わった!」
「凄いねぇ~!」
落ち着きのある透き通った曲の転調に合わせて、サイリウムも青色から黄色に変わる
今は決して夏ではないというのに、綺麗な海が目に浮かぶような感覚に陥る
これは文化祭のレベルを遥かに超えている、そんな気がする
動きも同じように見えて少しづつ変わっているため、躍動感を感じるし
全員の動きが繊細で揃っているためか、一つの大きな光る生命体のように思える
そんな感覚を抱いているうちに曲も演技も終わってしまった
「もうちょっと見たかったな」
「確かに、面白かったね!」
「え、あれを
「僕には絶対出来ない動きばっかだったよ~」
そんなことを話していると、また最初の挨拶の人が出てきた
「皆さんありがとうございました!演技はどうでしたかー!」
大講堂全体から口々に声が聞こえるが、どんな方面からでも良かったと聞こえてくる
俺がやった訳じゃないのに、なんだか胸を張りたいような気分だ
「もう一回やっても、観てくれますかー!」
お?まじで?
是非観れるならば観たいな
「ありがとうございます!それではもう一曲踊らせていただきます!」
お~これは期待できる
「そういえばさっき俺演技が凄くて全然
「じゃあどれが
「いいよ、私は一番左で」
「僕は右から2番目かなぁ」
「俺は左から3番目」
いや、やっぱりセンターだろ
分かんないけど
まぁいい、今は演技を楽しもうじゃないか
〇●〇●〇●〇
「いや~面白かった」
そう呟いた時、ふと目に留まったのはさっき連絡を交換したJKの姿だった
うーん、ちょっと話しかけに行くには遠すぎるか
というか、急に話しかけに行ってもあっちも反応に困るだろうし
そう思っていた時、あちら側も気づいて会釈してくれた
「あれ?ケーどうしたの、虚無に向かって会釈して」
「いやいや、流石にそんなことしないよ。さっき運よく連絡先を交換した人も見に来てて、目が合ったから会釈しただけ」
「え!お前ナンパしたの!?メンタルつっよ!」
「いやいやいやしてないしてない!ただ道を聞かれたついでに『良かったら連絡先交換しませんか?』って言っただけ!」
「うわぁ、
凄さで言うなら、
成績だったら
自分を特別劣っているとは思っていないけど、飛びぬけても無い
「バランスタイプというか、突出した凄さは無いよ」
「えぇ~?そんなことないと思うけどな」
「良く言えば何でもできるってコトじゃん」
「確かに!」
確かに良く言えばそうだね
褒めてくれるなんて優しいじゃんか
おっと、
『今どこ』
『大講堂出て直ぐのとこ』
『ok』
顔を上げるとこちらに駆け寄ってくる
が、
何というか、顔色があまり良くない
「おーい!こっちこっち!」
「
「う~ん?緊張してるのかな」
少し前に記憶を巻き戻す
確かに、緊張していた
それは演技に対してではなく、演技を・・・この2人に観られることに
そうだ、思い出した
俺は本番で緊張して欲しくなかったから嘘ついたんだった
なんというか・・・
心の中でそう呟いているとやっと
「あ、あの・・・み、観てましたか・・・?」
「ばっちり」
「かっこよかった!」
「ぅ、えぁ、まじですか・・・」
「マジです、なんかごめんね」
「
その瞬間、俺を横目で恨めしそうに
仲直りのハグを半強制的に俺から仕掛け、何とか怒りを収めさせる
「一つだけ聞きたいんだけどさ、
「えっと、一応センターで踊ってた」
「すげー!センターとか、大物じゃん」
「感想が小学生」
ついでに俺の予想も当たっていた
やはり
まぁ、
しかし、ここで全員集まったな
「まあ、それじゃあ色々と観て回るか!」
「行こー!」
「12時までな?」
「そっか、
「そうなんだよ~」
「ムフフ」
みっきー・・・気持ちは分かるけど、ムフフって言うな
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