第11話 運命の日③

「いや~沢山乗ったね!」

「だいぶ色々乗ったし、アトラクションもやったよな」

「そうだね!」


もうなかなかに日も暮れてきた

あれだけ広かった園内も、気が付けばほぼすべてのアトラクションを回り切っていた

まぁそりゃあ朝から夕方までいたら乗り切れるに決まっている


ピーンポーンパーンポーン

『閉園時間まで、残り1時間となりました。繰り返します、閉園時間まで・・・』


「あ、もうそろそろで遊園地閉まっちゃうね」

「うん、最後に観覧車乗っていかない?」

「良いよ!というか、乗ってないのはもう観覧車だけだね!」

「観覧車は良いゾ」

「やすくんは観覧車よく乗るの?」

「5年ぶりだよ」

「えぇ?(笑)」


正確に5年なのかと言われれば、定かじゃないけど


談笑しながら観覧車に向かう

幸い人はかなり少なく、すぐに乗り込むことが出来た

観覧車がゆっくりと上がっていく


「今日はすっごい楽しかったよ!」

「俺も、特にあのジェットコースターやばかった」

「あれね!グルグルって回るやつ!」


結局、ご飯を食べ終わった後にジェットコースターに乗った

この遊園地には2つのジェットコースターがあるのだが

ここで問題だったのが、よりによって回る系のジェットコースターだったことだ

ちゃんと酔った、勿論吐かなかったけど


「ちょい吐きそうになった」

「ご、ごめんね」

「いや全然良いよ、すぐに回復したしさ。なにより楽しかったし」

「それなら良かった!あ、いや、良くはないけど・・・」


こんな何気ない会話、だけど今この瞬間も俺は心臓がバクバクしている

なぜか?理由は簡単だ、最初に言った通り俺は


観覧車の頂上で、だ


「なぁ、一つ質問してもいいか?」

「どうしたの?やすくん。全然良いよ!」

「ありがと、じゃあ質問。なんで俺を誘ってくれたの?」

「え、そ、それは・・・秘密~!えへへ」

「秘密かぁ、まあしょうがない」


告白前に聞いておきたかったのだけど、本人が嫌ならしょうがない

だって思うだろ?何で急に俺を遊びに誘ってくれたんだろうって

今まではただ、隣の席だったから英語の授業でペアワークとかしてただけなのに


「あ、見て、凄い夕日が綺麗」

「ほんとだ!空がグラデーションになってて綺麗だね!」

「観覧車は夜景のイメージあるけど、意外と夕日の茜色でも綺麗なもんだな」

「そうだね!ほら、もうそろそろ頂上だよ!」


俺にとっての運命の時が、もうすぐ訪れる


心臓のバクバクを抑えるために、外の景色を見る

今日の朝一番最初にに乗った空中ブランコ、ご飯を食べたベンチ

ご飯を食べた後に乗ったジェットコースター

その他にも沢山のアトラクションと遊園地外の景色が目の前に広がる


「あ!頂上着いたね!」

「あ・・・」


頂上に、着いたようだ


「あのさ」

「ん?どうしたの、やすくん?」

「えっと、その・・・お、俺と付き合って、ください!」

「ふぇ?ぁ、え!?」

「今日、すっごい楽しかった。俺みたいな、特別何か取り柄があるわけでもない人を誘ってくれて」

「う、ううん!そんなことないよ!やすくんは、優しいし、かっこいいし、料理だって得意でしょ!私は好きだよ!」

「え・・・ほんとに?」


今、好きって言ってくれた。よな?


「うん!やすくん、もう一回言ってくれる?」

「え、えっと、俺と付き合ってください!」

「えへへ、喜んで!」


よ、良かったぁ・・・本当に。

今はただただ嬉しい

この喜びを噛みしめたい


「やすくん、さっきの質問に答えてあげようか?」

「え?」

「私がやすくんを誘った理由はね、好きだからだよ」

「え、そうだったの?」

「そうだよ!」


全く気が付かなかった

確かに嫌な態度を取られたことはないけど、まさか好きだったなんて

告白成功して本当に良かった


「そろそろ下に着くね」

「うん、緊張した・・・」

「私はやすくんの勇気出してくれるところとかも好きだよ」

「えっと、あ、ありがとう」


観覧車が無事に一周する

ササっと降りる


「逆になんで私のこと好きになってくれたの?」

「そんなの、理由はたくさんあるよ。例えばさ」

「うんうん」

「優しいし、頭良いし、気遣い上手だし、可愛いし、いつも笑ってくれるし、ポジティブだし、会話してて楽しいし、落ち着くし、服もお洒落だし、聞き上手だし、趣味もあってるし・・・」

「うわぁぁぁ!ストップストップ!嬉しいけど恥ずかしいよ・・・」


え~、まだまだいっぱいあるのに

細かいところまで上げだしたらキリが無いくらいには好き

もし、今日振られていたとすると・・・


心臓が冷たくなっていたかもしれない


ピーンポーンパーンポーン

『閉園時間まで残り45分となりました。繰り返します、閉園時間まで』


おっと、そろそろ時間みたいだ


「私ね、今日お土産買おっかなって思ってたけど。やっぱりいいかな」

「え、なんで?俺気分悪くさせちゃった?」

「ううん、その逆だよ!」

「え?つまり・・・どういうことですか」

「やすくんからの告白が最高のお土産だよ!」

「グハッ!!!」


破壊力!破壊力やばい!

好きな人からのその言葉は破壊力隕石くらいある(?)

そんなやり取りをしながら遊園地を出る


「それじゃあ、今日は解散にする?」

「えっと、うん、そうだな」

「それじゃまた明日、学校でね!今日は楽しかったし、嬉しかったよ!」

「こちらこそ!それじゃあ、また明日」


そう言って、優衣ゆいと別れる

緊張していた心が楽になってドッと疲れが押し寄せてきた

あ、でもこれだけはやって置かないと


ケー当てに、一言



『やばい待って、彼女出来た』



今日は最高の一日だ

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