第9話 運命の日②

「結構色々乗ったね~」

「そうだね~、そろそろご飯食べる?」

「あのキッチンカーのご飯美味しそうじゃない?どうかなぁ?」

「うん、俺も美味しそうだと思う。あと、キッチンカーだから空いてるし」

「じゃああそこで頼もっか!」


そう言って走っていった優衣ゆいに俺もついていく

正直まだ呼び捨てに全く慣れていない

心の中ですらこうなのに、どうすればいいんだ


「ねぇ、やすくんはなに頼む?」

「う~ん、ちょっと待ってね」


キッチンカーってなかなか狭いだろうに、意外とメニューがある

もちろんレストランよりは少ないものの、それでもそれなりにはある

う~ん・・・迷うなぁ


「じゃあこれにしようかな」


結局迷った末に選ばれたのは、焼きそばでした

そこそこ種類あった中でこれが一番コスパ良さそうだったし

何よりハンバーガーとか、ホットドッグとかは食べにくそうだから


「焼きそばかぁ、私はどうしようかな~」

「結構種類あって迷うよね」

「ん~、じゃあやすくんと同じ焼きそばにする!」

「まじで?焼きそばにする?」

「うん!」


え、嬉しい

何か特別なことでは無いけど

好きな人と何かお揃いってことがただ嬉しい


「あの、焼きそば2つで」

「かしこまりましたー、お会計は700円になります!」

「えっと、あ、やば。俺50円玉無い」

「あ、私も・・・」

「じゃあ俺が多めに払うよ」

「え、そんな、悪いよ!ここは、う~ん・・・じゃんけんにしよ」

「じゃあそうする?よし、勝つぞ~」

「いくよ?じゃんけん、」




刹那、店員は思った


『お~い、目の前でイチャイチャすんな。いや、それはまだいい。遊園地にはリア充が多いからなれた。でもな、はよ会計したいからさっさとじゃんけん終わらせんかい!ガキがあんまり舐めたことしてるとしばくぞ!』


彼は心に余裕がないようだ




「あ、俺の負け」

「あ・・・ごめんね」

「そんな、謝んなくていいよ。負けた俺のせいだしさ」

「でも私も100円持ってなかったし、私にも悪いところあるよ」

「そんなことないよ、それを言ったら俺だって100円持ってなかったんだし」


あ、やべ、店員さんだいぶ待たせてた


「待たせてごめんなさい、これでお願いします」

「・・・あ~いえ、全然大丈夫ですよ!では少々お待ちくださいね」

「ありがとうございます」


優しい人だなぁ

俺が店員さんの立場だったら多分・・・


『はよ会計したいからさっさとじゃんけん終わらせんかい!ガキがあんまり舐めたことしてるとしばくぞ!』


って思っちゃうだろうなぁ


「お待たせしました、こちら焼きそば2つです」

「ありがとうございます!」

「うわ~美味しそうだね!」

「じゃああそこのベンチで食べよっか」


二人でベンチに移動して座る

ここで秘密アイテム!

テッテレーかぼちゃパイ~!


優衣ゆい、この前かぼちゃパイ食べたいって言ってたよね?だから今日作ったの持ってきたから、これ食べて」

「え!良いの?嬉しい、ありがと!」

「そう言ってもらえると作った甲斐あるな」

「これやすくんが作ったの?凄いね!」

「うん、もし美味しくなかったら美味しくないって言ってくれ。その時は責任もって自分で食べるから」


そう、俺はこれを味見していない

もし俺がおやつとして食べるやつだったら、作ってる途中に味見しただろう

本当は味見くらいしたかったのだけど、優衣ゆいに渡すものだから

俺が食べるわけにはどうしてもいかなかった


「ねぇ、これ二人で食べない?」

「え?」

「私じゃ多くて食べれないから、一緒に食べよ?」

「あ、そう?じゃあ一切れ貰うね」


たしかに、焼きそばと同じタイミングでこの量食べるとなったら割とキツイな

流石にそこまで考えてなかった


「でもまあ、先に焼きそばから食べようか」

「そうだね!いただきます!」

「いただきます~」


一口食べる

うん、うん!?めっちゃ美味しい

いや今普通に美味しいって言おうとしたら、予想を裏切られたんだが?

味付けもいいし、香ばしいし、紅ショウガもすんごい細かくなってて食べやすい


「やすくん、これ美味しいね!」

「うん、正直びっくりした」


談笑しながら食べ進めていく


「あれ、もうなくなったんだけど」

「私も~もう一回食べてもいいくらい美味しかったよ!じゃあかぼちゃパイ食べよっ!」

「そうだね、まだお腹空いてるし」


いや、ただこの美味しい焼きそばのせいでちょっとハードル上がった

別にパイ作りに特段慣れてる訳でもない俺が作ったパイなのに・・・

なんか、心臓バクバクしてきた


「ちょっと、待って。俺が先に毒見しても良い?」

「そんな、大丈夫だよ~!食べれないことはないでしょ?」

「う~ん、まあそうだと思うけど」

「それじゃ、一緒に食べよ!」


うわぁマジかぁ

緊張するな、俺が作ったの他の人に食べてもらうの久しぶりだし

ましてや俺の好きな人だからな


「それじゃあ、いただきま~す!」


優衣ゆいがパクっと一口食べる

優衣ゆいの表情が・・・笑顔に変わった


「うわぁ~美味しい!」

「良かった~!」


人生で一番緊張したわ

それじゃ俺も食べるか


「え、美味しいんだけど」


思わず自画自賛してしまった

自分で言うのもなんだけど普通にお店開いていいレベル

お店開いてる父さんのレシピだから、そりゃあそうか


「やすくんありがとね!」

「いや、良かった~。こちらとしても美味しそうに食べてくれて嬉しいよ」

「うん!ほんとに美味しいから!」


これは俺が作った甲斐あったわ

父さんが作ったお会い持ってきてたらこんな気持ちは味わってなかっただろうし

良かった良かった


「ごちそう様!」

「ごちそうさま」

「じゃあジェットコースターもう一回乗りに行こっか!」

「無理無理無理!!!」


元気そうで何よりです

だけど一回休ませて・・・

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