第4話 なんて素晴らしき人生だ

どうも康孝です


今日は待ちに待った遠足

小学校の頃とはまた違って、高校生になると自由行動の時間が大半になる

つまり、楽しいも楽しくないも自分たちに全て委ねられているって訳


「18時にまたここに戻ってくるように!はい、ということで一度解散!」


先生の号令が掛かって皆が一斉に散らばっていく


「最初どこから行こっか?」

「取り敢えずあそこの浅草寺に行く?」

「そうしよっか!」


そう、今日来たのは浅草だ

浅草は平日ということもあってか、空いている


なんてことはない、なぜだろう

平日なのにも関わらず普通に混んでいる

これが休日に来たらどんなに混むのか、鳥肌だ


「これが雷門!凄いおっきいね!」

「流石というか、迫力あるなぁ」


大きく真っ赤な門に大提灯がぶら下がっている

左右に風神・雷神像があって、どちらも迫力がある

雷門と呼ばれているが正式には風雷神門らしい、俺は最近知った

確かに裏から見ると風雷神門と書かれている


「見て!この提灯の下に模様があるよ!」

「ほんとだ、龍かな?」


提灯の下には龍の彫刻が施されている

歴史とか、そういうのは全然知らないけど普通にデザインとしてかっこいい

そんなことを考えながら門を通り抜ける


「色々あるね、人形焼きとか揚げ饅頭とか」

「全部美味しそう!後でお土産に買お!」

「うん、優衣ゆいさんは何食べたい?」

康孝やすたかくん、私のことさん付けしなくていいよ?呼び捨てで大丈夫!」

「え、ほんとに?何て呼べばいい?」

優衣ゆいでいいよ!私は康孝やすたかくんのことなんて呼べばいい?」

「俺は何でもいいよ、呼びやすい呼び名で大丈夫」

「そっか、じゃあ康孝やすたかくんのことはやすくんって呼ぶね!」

「俺も、優衣ゆいって呼ぶよ」


嬉しい

言葉では言わないが死ぬほど嬉しい

飛び跳ねたい、けど出来ない


「それで、何食べたいかだよね。う~ん、私は揚げ饅頭とか食べてみたいな!」

「じゃあそれ買おっか、でも先にお参りする?」

「うん!そうしよう!」


本堂前の階段を上って、賽銭箱に5円玉を投げ入れる

隣にいる優衣ゆいさんと結ばれることを願って

あ、さん付けしちゃった

慣れないなぁ


「よし、OK!」

「私もお願いできた!」

「なんてお願いしたの?」

「うんとね、秘密!」

「秘密かぁ、願い叶ったら聞かせてよ」

「うん!良いよ!やすくんは?」

「俺も秘密~」

「じゃあやすくんもお願いが叶ったら聞かせてね!」


願いが叶った時か

本当に、叶えばいいな

それは優衣ゆい、さん次第だ

俺の努力次第といった方が良いか、だけど最終的に決めるのは俺じゃない


「それじゃ揚げ饅頭買おうか」

「そうだね!私抹茶味にする!」

「俺はチョコにする、優衣ゆいさ・・・優衣ゆい、って趣味結構渋いね」

「そうかなぁ?やすくんも食べてみない?」

「いいの?じゃあ俺のチョコも食べて」


それぞれ抹茶味とチョコ味を買って半分に割る

どっちもめっちゃ美味しい

というか、優衣ゆいと半分づつ分けたからより一層美味しくなってるのかも


「それじゃ他にもお土産買おっか!」

「そうだね、あそこにソフトクリームとかもあるよ」

「あれはお土産じゃなくて一緒に食べよ!」

「うん、いいよ」


楽しい

実はコレ、初恋なのだ

中学の頃に男子校の啓介を煽りまくっていたのだが俺も恋をしてないので

あんまり共学に通っていた意味は無い


その後も優衣ゆい、と一緒にいろんなところに行って

色んなものを買って、食べた

時間というのはあっという間に過ぎるもので気が付けば17時になっていた

そろそろ戻る支度をしないと


「そろそろ、戻らないとね」

「美味しそうに食べるなぁ、ほんとに美味しいけど」

「うん!このどら焼きすっごく美味しいよね!これ食べ終わったら戻ろっか!」


公園のベンチでどら焼きを食べ終えて、ゆっくり席を立つ

だいぶゆっくりと歩いても集合時間には間に合いそうだ

何か話しながら戻ろうか


「最近どう?」

「楽しいよ!やすくんはどう?」

「うん、俺も最近は楽しいかな」

「何かあったの?」

「この前話した啓介けいすけって奴、覚えてる?」

「うん、かぼちゃパイ持ってきてくれた人だよね!」

「そうそう、あいつと最近連絡とってることかな」


あいつは男子校に通っているからか俺が全く知らないような話を持ってくる

それはみっきーもそうなのだが、いかんせん百合を激推ししてくるから

話は面白いのだが、みっきーに学校の話題を振ると疲れる


「どんなこと話してるの?」

「あぁ、なんか色々男子校の面白い事話してくれるよ」

「そうなんだ!例えば?」

「う~ん、男子校には『男子校の姫』が本当にいるとか」

「『男子校の姫』?なにそれ?」

「あぁ、なんか男子校ってもちろん男しかいないんだけどさ。その中にはだいたいどこの学校にも男子だけど可愛い奴がいるらしいんだよ。それが本当に啓介けいすけの学校にもいるらしい」

「へぇぇ、そうなんだ!男子なのにお姫様って不思議な感じだね?」

「確かにね、まあ世の中広いからなぁ」


ケーによると女装させたら並の女子よりも可愛いらしい

だけど、可愛いからこその苦労もあるみたいだ

まあそこは今度ケーに会って聞こう


優衣ゆいは?最近の楽しい事と言えば」

「う~ん、これ!ってものはないけど、今は凄い楽しいかな!」

「えぅう」


予想外すぎて変な声出た

今楽しい?ってことは俺のこと好きってこと?

いや、油断してはいけない

ケーに『脳が単細胞で出来てそう』とかいう引くほどひどい悪口が来そう

まぁ、あいつは恋愛が出来ないから可哀そうではあるけど


「ん?やすくん、どうしたの?」

「あ、あぁいや、何でもない!俺も楽しいよ!」

「ほんと?良かった!」


夕日に彼女の笑顔が照らされて色んな意味で眩しい

こんなこと、優衣ゆいの前では死ぬほど恥ずかしくて言えない

今は夕日のせいとでも言っておこう


「ねね、それじゃあさ!今度二人で遊びに行こうよ!」

「え、ほんと?俺とで良いの?」

「もちろん!良くなかったら誘わないよ~」

「そっか!遊びに行こう!どこがいい?」

「遊園地とか行く?」

「うん!行こ~!」


話しながら歩いていたからか集合場所に戻ってきていた

今の気持ちは最高潮だ

本当に、何故か男女ペアにしてくれた先生にも感謝だ


「お、戻ってきたのか~」

「はい、15分前ですが」

「楽しかったか?」

「もちろん!楽しかったです!」

「それは良かった、もうちょっと待っててくれ」


本来の集合時間まで優衣ゆいと談笑しながら待つ

帰ったら何しよう、今日は気分が最高だし勉強してもいいかもしれない

いや、まずはケーとみっきーに連絡しようかな


優衣ゆいと遊園地に行くのか・・・

嬉し過ぎて全然実感が湧かない


「どうしたの?」

「いや、今日楽しかったな~って」

「うん!私も!」


夕日は沈みかけているのに、優衣ゆいはいつ笑っても眩しかった

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