第30話 そして穂信と

 冷凍庫を見たらレンジで作るご飯が大量に入っていた。紙も入っていた。


「作ったことにしたら、ちゃんと食べるから」

 と、入っていた。


 作っても選ばれませんでした。


「お母さんホラーって頼んだのにコメディ借りてきてさ、個人的にはおにぎり食わせるのがいいのよ」

 不満は無さそうだ。結局我慢出来ずに笑ってしまった。その時間が楽しかった。


「晩御飯はグラタンですからね」


「グラタン作れるのすごい!」

 夕方になって穂信はお腹が減ったと言いだした。コメディも見たが、まだ殻入り卵は三時間前だぞ。燃費悪すぎだろ。


 仕方ないので、チンっと言わせた。


「この容器変わってるね」


「耐熱皿だったら持てないので」


「さすが、よく考えているよ」

 穂信は料理に関してはアホらしい。そこも可愛いけど、将来的にはそこを修正しないといけないな。


「お腹一杯だ!」

 ちゃんと茹でたブロッコリーに面倒だったがポテトサラダを作った。絶品と言ってくれたので嬉しかった。

 ねぇねぇ、デザートは? と聞かれた。意味深に聞こえるのはおそらく私だけ。

「今日はないですよ」

「じゃ明日買いに行こうよ。柏餅とかいいよね」


「ケーキじゃなくて?」


「男の子の日だよ! ちまき、あの中華じゃない方好きなんだ。歯にくっつくなんてこと言うやつは許さんぜよ」


「実は私はあんまり和菓子は得意じゃなくて」


「明日から中華ちまきしか食べない」


「変なところで気を遣いますね」


「ケーキでもいいよ。加奈と食べるなら何でも特別だから!」

 この人、私のこと本当に好きなんだ。何かに目覚めそうになった。

 これは違う種類のやつだ


「お風呂入ろうかな」

 穂信が伸びをしながら脱衣所に向かった。


「ご飯食べてすぐ後はダメです」


「お母さんみたいなことを言わないでよー。早くエッチがしたいの! って、言わせないでよ」


「だったら一緒に入りましょう」


「ダメ! 初めてはベッドで見たいから」

 すごい恥ずかしいことを素面で言っている。私が背けた顔はきっと赤い。


「前にお風呂で見たじゃないですか」


「ちゃんとで見たいの」


「じゃ、お皿洗って待ってますね」


「うん」

 そう言って洗面所の奥に穂信は消えた。


 私は穂信とどんなことをするんだろ。キスとかハグとかはするんだろうけど、井上や真鍋先生が言っていたこと。


 中に何か入れるのは怖いかな。痛いって聞くし、考えながら洗ってないで穂信がお風呂に上がるまでには洗おう。私、今から穂信とするんだ。


 ものの二十分ほどだった。もこもこの可愛いパジャマを着ている。可愛い。


「どう?」


「すごい可愛いです」


「上で水持って待ってるから、早く来てね」

 お風呂に入る前からは考えられないほどに自然だった。


 脱衣所で脱ぐ時から緊張した。洗いながら、何度もくさくないか確認して、何度も心配になった。

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