勧誘
怯えるマリンにアッシュは言った。
「マリンですらシオンの事を知らないってことは、やっぱり僕の予想は間違ってないみたいだ」
アッシュはマリンに諭すように話した。
「確かにこの世界は、あのゲームの世界だろう。しかしだ。ここに住む人達は本当に生きているんだ。ここに存在する人物達がみなゲーム通りに【成長】するとは限らないだろう。現に、お前も入学前に訓練して、チート魔力を手に入れただろう?」
ここでマリンもハッとなってアッシュを見た。
「死ねば終わりなんだ。魔王もゲーム通りの強さとは限らない。お前が狙っている攻略キャラもゲーム通りの性格や実力があるかわからない。ここを【現実】の世界として認識しないと、不慮の事故でいつ死ぬかわからないぞ?」
マリンもアッシュの言わんとしている意味を理解した。自分はこの世界のヒロインである。何があってもゲーム補正で死ぬことはなく、ゲームの進行通りに進んでいくと、心のどこかで思っていたのだ。
だが、ここは現実なのである。
死ねば終わり。
その残酷な現実を理解し不安になった。
「わ、私はどうしたら…………」
アッシュは優しくマリンの手を握って言った。
「僕に1つ提案がある。君の実力は本物だ。ヒロインと言う立場に胡座を欠かずに、しっかりと実力を付けてきたね。あのルビー嬢を追い詰めたのは凄いと思うよ。だから───僕らの仲間にならないか?」
!?
マリンは目を開いてアッシュをみた。
「ルビー嬢には決闘を負けた条件を許して貰うよう言って置くからさ」
「どうして私を誘うのよ?」
「同じ転生者ってのもあるけど、君の強力な回復魔法が欲しいからかな?僕達のパーティはアタッカーばかりだしね」
アッシュは苦笑いしながら頬を掻いた。
「……………そうね。何れは魔王討伐に協力しないといけないし………いいわよ。仲間になっても」
バンッ!
いきなり扉が開いた。
「ちょっと待ったーーーーー!!!!!」
「る、ルビー嬢!?」
ドシドシッと近付いていくとビシッと、指を指して叫んだ。
「私は認めないわよ!そんな女を仲間にするなんて!」
シーーーーン……………
「ルビー嬢、盗み聞きしてたね。高位貴族の令嬢がなにしてんの?」
「うぐっ、ち、違うから!アッシュがいかがわしい事をしないか見張っていたのよ!」
マリンは握られていた手をパッと離すと両手で身体を隠した。
「ちょっ!?変なことをいって盗み聞きしていた事を正当化しないでっ!」
「男が小さい事を気にしないの!それより、そこの女を仲間にするのは反対よ!だって私のシオンを狙っているのよ!」
マリンはキョトンとしてルビーを見た。
「それは仕方がないじゃない!あんな美少女系美少年がいたら愛でたくなるじゃない!独り占めはズルいわよっ!」
「それは激しく同意するけどシオンは私の婚約者よ!絶対にあげないからね!」
「別に私自身がシオンの婚約者になろうとは思っていないわよ!私はただ側で見ているだけで満足なんだから!」
えっ?そうなの???
ルビーが驚いた目で怪訝そうにマリンを見た。
「私はただ近くで美少年を愛でたいだけよ♪ただ見守る事ができれば満足なの♪」
頬に手をやりうっとりするマリンに、アッシュは思わず引いたが、ルビーは同意した。
「わかるっ!あの憂いた表情が堪らないのよ!」
「わかるっ!あの少し生意気そうな口調もツボなのよっ!」
アッシュはいつの間にか空気となっており、マリンとルビーはシオン談義に花を咲かせていた。
「どうしてこうなった!?」
いつも報われないアッシュなのであった。
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