第22話 引き返せない

「さて、次の階に行こうか」


 私は言った。

 疲れがとれるぐらいには休めた。

 だが、レベル差があるのは分かっている。

 これより下は、危険だ。

 そんなことは百も承知。私は挑んでみたくて仕方ないのだ。

 みんながいれば大丈夫だと、不思議とそう思える。


「さくさく行こうぜ」


先程まで寝ていたヴォルフは数分前に目を覚ましていた。

 早く動きたいとでも言うように、しっぽをブンブンさせている。

 そのしっぽをもふりたいところではあるが、実際にすると怒られそうなのでしない。


「もう行くのですか?」

「ダンジョン攻略は慎重さが大事だと思うのだが……」


 ニコが不安そうに、ライオスは何かが引っかかったように言った。

 そう言われるだろうというのは、予想していた。


「それは分かってるんだ。けれど、私は進みたい。この先に何が待っているのかを確かめたいんだ。ここまでが大丈夫だったから、なんて言わない。そんな甘いことは言えない。でもね、みんなとなら大丈夫。自信を持ってそう思えるから、次に進みたい」

 

 私は立って、腕を伸ばして上を見上げた。

 上に見えるものは、私達が歩んできた階。

 私のスキルでなんとかなってこの五階まではこれた。私だけの力ではないけれどね。

 六階にはどんな敵?が待っているのかな。

 あまり敵とは思いたくない。次もあんなに可愛い動物かもしれないから。

 そうだった場合は倒すのを躊躇ってしまう。倒さない方法もあるが、それが通用する相手なのかは、見るまでは分からない。


「セリナがそう言うなら、俺も力を貸すから次へ行こう」


ライオスが言葉を発した。

 少し悩ませてしまった。何かを考えているみたいだった。

 しかし、今は真っ直ぐな目をしている。

 ここから先へ進んだら引き返せないことを知っていて、覚悟を決めたからだ。

 

 五階までなら戻ることもできたと思う。

 だが、もう戻ることはできない。

 決めたのなら、もう進むのみだ。

 冒険とは、ダンジョン攻略とは、きっとそうやってするものだと私は考えている。

 

 そしてきっと、それをする誰しも一人ではなく仲間がいるのではないだろうか。

 だからこそ進めるのではないだろうか。

 私がそうなだけかもしれない。

 強い人は一人で攻略するだろうからな。


 私は強くない。弱いんだ。

 それは分かってる。だから、助けてもらうんだ。心強い仲間に。


 まだまだ先は長い。

 この階から踏み出すので精一杯。

 次の階で私達はどうなってしまうのかな。

 最後までみんな無事でダンジョンを出られたらいい。そう思う。


「よしっ、行こう!」


引き返せないところまで進んでいこう。

 私の好奇心だって、もう止めることはできないのだから。


 

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