第10話 好きな動物

 立派なたてがみがあるライオンがいた。

 ライオンの威嚇の声を聞いて、でかい鳥は逃げていった。


「うぉっ、でっけえな〜まあよかったな無事で。セリ?」


 返事をしない私を不思議に思ったのかヴォルフが私の名前を呼んだ。

 けれど、何度呼ばれようと私は返事できない。

 それもそのはず。

 だって私が一番触れてみたかった。見てみたかった動物が目の前にいるのだから。

 まさかここで会えるだなんて思っていなかった。


「あー我慢できない‼︎」


私はライオンに飛びついて触り出した。

 思っていた以上にもふもふだ。触り心地がとても良い。ずっと夢見ていた感触を体感しているのだ。こんな感動的なことはない。


「ちょっ、おいセリ‼︎」


ヴォルフの制する声が聞こえる。

 けれど、私はもふもふを堪能し続けている。

 そんな時、ぽんっという音がした。


 もふもふしていない?なんだかごつごつしている?


「って、ええ⁈」


なんと、ライオンが短髪でガタイのいい硬派なイケメンになっていた。

 しかもしっぽと耳まである。


「なあ、離してくれないか?」

「ふぇ、は、はい……」


人の姿になったのに抱きついたままになっていた。

 ここ何年か男性には触れていなかったから緊張する。


「あ、あのごめんなさい。ライオンに会えたからって喜びすぎちゃって……」

「初めて会ったのか?」

「う、うん」

「そうか。それなら仕方ないな」


うっ、強面が笑うと破壊力すごいな。

 理解力もあるとか素晴らしい。


「なあ、アンタ獣人なのか?」

「ああ。俺はライオンの獣人だ。自由に姿を変えることができる。さっきは襲われそうなところを見かけたから威嚇しようとおもってな」

「そうなんだな。オレは獣人見たことなかったから驚いたぜ」


ヴォルフも見たことないのか。珍しいのかな。

 それはそうと……


「助けてくれてありがとう。私はセリナです」

「いや、大したことじゃないさ。俺はライオスだ。それより、セリナはなぜ木をきろうとしていたんだ?」


 そうだった。木を伐採しようとしてたら鳥が襲ってきたんだ。

 

「えっとね、木材を使って柵を作ろうと思っているの。ひよこと話をしてたらあった方がいいんじゃないかなって」

「柵というものがどんなものか分からないが、これもなにかの縁だ。俺も手伝わせてもらおう」

「さっきも助けてもらったのに悪いよ……それにこんなところにいたんだから君も用事があったんじゃないの?」

「いいや、暇だから歩いていただけだ。それと、ライオスと呼んでくれ」


うーん、正直一人で作業するのは大変だなと思っていたし、手が使える人がいるといいなとも思っていた。

 んーよしっ


「じゃあ、お願いしようかな」

「ああ、まずはどうすればいいんだ?」

「まずは木を半分にしよう。運びやすくしなきゃだし」

「分かった。じゃあ俺がやるから待っていてくれ」


そう言ってライオスは私から斧を受け取り、作業にかかった。

 みるみるうちに木が半分にされていく。

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