第4話

 影兎、和樹、悠の3人は、みんなが同じ高校の生徒だ。今日はゲームの発売日。

 3人は、影兎がいる1年A組の教室で昼食を食べながら、ゲームの話をしている。


 「でっ?和樹と悠はどんな名前にするんだ?」

 「名前?ん~……そのまんまじゃ駄目だよな」

 「和樹。さすがに本名は駄目だよ。少しは変えないと。」

 「和樹は樹って漢字が入っているから、英語でウッド、少し名前っぽくしてウルドとかどう?」

 「おっ、いいなそれ。じゃあ影兎がいったウルドでいいかな。影兎はどうすんだ?」

 「俺はいつも使ってるラビックって名前にするかな。」

 「影は黒いから英語のブラック、兎がラビット、だからラビックなんだっけ?」

 「そうそう。…あれ?悠にそんなこと話したっけか?」

 「だいぶ前にね。じゃあ僕はグレイって名前にしようかな。名字に入ってる月は灰色だから、英語のグレーを名前っぽくした感じで。」

 「これでゲームの中でもすぐ分かるな。」

 「そうだね。」


 影兎たち3人の名前が決まったところで昼休みの時間が終わった。

 その後、学校が終わったところで影兎たち3人はさっそく自分たちのコフィンに入ってゲームを始める。


 〈ようこそ、Cubeに接続します。貴方の旅に幸せを。〉


 女性のアナウンスとともに字幕が表示される。

 次の瞬間には、影兎は白い部屋にいた。

 影兎が部屋の中を見渡していると、影兎の後ろにテーブルとイス。そして、スマホがテーブルの上においてある。


 スマホには

"画面をタップして 設定をしてください"

と表示されていて、影兎はイスに座りスマホの画面を触って設定を進めていく。

 このとき影兎は初めてゲームの中で動いたので、違和感のなさにびっくりしていた。

 スマホでおこなう設定にはアバターの見た目や名前だけで、他のゲームにあるジョブ等の設定が一切なかった。

 また、アバターの見た目はコフィンに搭載されている数種類のセンサーによって現実の身体が最初に表示されている。

 さらに、ゲーム内で動くときに違和感がないようアバターの身長、体重などは大きく変えることはできない。


 影兎はいろんな髪型や色に悩んでいたが、最終的に疲れたため自分のベースに軽くイジった程度で設定を終了した。

 (ちなみ、影兎は軽く2時間かけてアバターの見た目をきめていました。)


 「やっと終わった〜。色とかじゃなくて細部の変更なんてしたらもっと時間かかってたな。………あっ!アナウンスのお姉さん!今度困ったことがあったらどうすんの?ヘルプ機能?とか」


 〈はい。ちょうど説明をしようと思っていた頃です。これから影兎さん、いえラビックさんの左手の甲には白天と呼ばれるものがつけられます。この白天はプレイヤーに必ず取り付けるもので、ここでは自身のステータス、使い魔、所持金など貴重品を入れるのに便利なアイテムボックスにも使え、さらに自身のゲーム内でとってきた選択と選択したあとの心理など、ありとあらゆる情報で1人のスキルが生まれます。

 ただ、生まれたスキルが強いのか使えるスキルなのかは個人差があるため私達ヴァルキリーでも返答はむずかしいです。なのでやりながら覚えて言ってください。〉


 「ありがとう!ならさっそく冒険の始まりだ!」

 〈はい。木製の扉があるのでその先が未知の場所です。頑張ってください。………あ、あと、すみません。最後にいい忘れていたことが、あの、私、影兎さんのヘルプ役になったので、影兎さんの白天から困ったことがあったら言ってくださいね〉

 「ま、ま、ま、マジですか〜!」

 「わ、わ、わ、わ、わかりました!じゃあ行ってきます!」

 「ダダダダダッ、ガチャ…、…、バタン」


 影兎は綺麗な女性の声と話しただけで嬉しくなり、あとのことを考えず扉から飛び出していった。

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