観察記録

遊bot

第1話 9月20日

趣味は"人間観察"だという人がいる。


"人間観察"とは何も特別な事をするのではない。


例えば、街中で気になる人を見つけたら、それと気が付かれないように様子をうかがい、その人の服装から人物像を想像したり、1人でいるのか待ち合わせなのか、街に来た目的を予想したりするのだ。


時にはこっそりと後をついていくこともある。


他人からすると悪趣味だとも言えるが、私はこの趣味をやめられそうにない。


なぜなら、"人間観察"をしていると思わぬ発見があるからだ。


いま私が尾行しているのもその1人である。


彼女を見かけたのは電車の中であった。


長い髪をきれいに流し、マスクできっちりと顔を隠していた。

それだけであれば気になる要素はない。だけと、彼女は全身を赤色服装でコーディネートしていた。


その服装からどうしても有名な都市伝説をイメージせずにはおられず、いまこうして観察をしているのだ。


付かず離れず彼女との距離を一定に保ち、そろそろ30分は経とうとしている。


と不意に彼女が足を早め、急ぎばやに曲がり角をまがつた。

とっさのことに私は対応できず、遅れて私も角を曲った。


しかし、不思議な事に彼女の姿はもうなかった。


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