第10話ボルダリング再開

 仲直りはボルダリングと。

「そこ、右足上げてこ! うでは焦らない」

「考えてみて、さっきそこ落ちたよ」

 いきなり熱血指導。いつものボルダリングジムで、桜さんと6級を登っている。まだ完投してないけど。ボルダリングは自分でパズルを組み立てるゲーム。でも今はまだ桜さんに指示を仰いでいる。1人じゃ登れない。

 何日間か休んだけど、筋肉は覚えていた。むしろリフレッシュできたかも。6級にチャレンジする余裕は残っていた。

「桜さん、ありがとうございます」

「いえいえ」

 あと2手、あと少しで6級登れそう。

 吉田さんに教わって登りたかった。桜さんは吉田さんと違う教え方。これも分かりやすい。

「あ」

 登れた。6級登れた! 初めて垂壁の6級が登れた。

 ――――私も6級登れた。

「追いつかれちゃったね」

 桜さんは笑っている。ボルダリングがうまいわけじゃない。教え方も特別うまくない。でも……、ボルダリングを好きなんだ。ボルダリングが好きな人、ボルダリングを好きになってもらいたい人、そう思った。

「ありがとうございます」

 思わず口に出た。感謝の気持ち。

「じゃあ明日は部室きなね」

 駅で別れて、なんだかスッキリした。改めて桜さんをステキだと思ったし、明日は部室に行こうと思った。

 

 ボルダリング、スランプ脱出です。

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