第11話獣王の策略
光の魔方陣は四角形の檻となり、世羅を囲む。その光の檻はおよそ二メートル四方ほどで、かなり狭い。
世羅はその光の檻にふれる。じゅうっと焼ける音がする。世羅の白い手のひらが焼けている。火傷はすぐに治癒される。吸血姫の自然治癒能力の高さがうかがわれる。
「そいつは俺特製の絶対魔法防御結界だ。ちょっとやそっとでは壊れんよ」
ふははっと獣王バルザックは高笑いする。
世羅は手のひらを檻にかざし、目をつむり精神を集中している。ぶつぶつと何か唱えている。おそらくだけど、この光の檻を解除しようとしているのだ。
「そいつを解除するのに三分はかかるだろうて。それだけの時間があればどうなるかな」
その言葉を聞き、世羅は呪文を唱えながらも苦々しい表情になる。
三分もあれば奴は僕たちを皆殺しにできるだろう。まさしく絶対絶命とはこの事だ。
ヒュッと獣王バルザックの姿が消えた。
僕の動体視力ではまったく追いきれない。
「させるか!!」
滝沢詩音が抜刀し、僕の前に立つ。
獣王バルザックを視認できたと思った時には奴は滝沢詩音の日本刀の刃を握り、真ん中から砕いてしまった。
「くそっ!!」
折れた日本刀で滝沢詩音は切りかかる。
「無駄だな」
獣王バルザックはその日本刀を滝沢詩音からもぎ取り、さらに彼女の体を投げ飛ばした。
滝沢詩音は数メートル吹き飛び、動かなくなる。
生きているのか死んでいるのか、僕にはわからない。生きていても重傷は免れないだろう。
滝沢詩音は僕を守るためにあのようになってしまった。僕は自分の非力に心から悔しさを覚えた。
獣王バルザックは僕の首を持ちあげ、吊るす。
「さあ世羅、俺の女になるんならこいつの命だけは助けてやろう」
首を閉められているので息が苦しい。今にも意識が遠退きそうだ。
「くそ、畜生め!!ダーリンに毛ほどの傷をつけてみろ、八つ裂きにしてやる!!」
世羅が悲痛に叫ぶ。
だけど、光の檻はまだ解除できない。
「こいつを傷つけたら何だって?」
わざとらしく聞き、バルザックは僕の下腹部をなぐる。
「ぐはっ」
今まで感じたことのない痛みが走る。内臓のいくつかが破裂したかも知れない。
だめだ、意識が保てない。
ここで眠ったら死んでしまうかも知れない。
意識がもうろうとする。
「ダーリン!!ダーリン!!ダーリン!!」
世羅が泣き叫ぶ。
女子にこんなにも思われるなんて幸せだ。
場違いな感情が頭をよぎる。
おい、兄弟よ。まだ諦めるな。
こんなところで死ぬんじゃない。
なあ、兄弟、生きてしたいことはないか?
そいつを思い浮かべろ。
サタンが脳内で早口に語りかける。
世羅のこの世のものとは思えない美しい顔が脳裏に浮かぶ。それに神様に愛されて造られたあの抜群のスタイルも頭に浮かんだ。
そうだ、そいつだ。
あのとんでもなく綺麗な女を抱きたくないのか?
まだ女を知らずに死んでいいのか?
あの世羅って女は兄弟にベタ惚れだ。きっと何だってやってくれるぞ。
そうだな、サタン。あんたの言うとおりだ。もう一度世羅の柔らかな肌にふれたい。
僕がそう思った次の瞬間、左目に熱が走る。ビリビリとした熱湯のような熱さだ。次に左手、そして左足に熱が走る。
「ギャウウッ!!」
僕は叫ぶ。
気がつけば左手でバルザックの腕をつかんでいた。
僕の左手はびっしりと鱗に覆われていた。それにナイフのような爪が生えていた。
その鋭利な爪がバルザックの腕に食い込み、出血させている。
「くそっ」
たまらずバルザックは僕を地面に投げる。
投げ飛ばされた僕はどうにか立ち上がる。
「まさか竜人化できるだと」
バルザックは驚愕の表情になる。
こんなんじゃあおさまらんよな、兄弟。あいつを死ぬよりも恐ろしい目にあわせてやろうぜ。
ああっそうだな、サタン。奴は僕の大好きな世羅をあんな汚ならしい牢屋に閉じ込めたんだ。万死に値する。
いいねえ、言うようになったじゃないか。このサタン、兄弟のこと気にいったぜ。
さあ、奴を血祭りにしてやろう。
俺の言うとおりにしな。
サタンが言う。
僕はわかったと答える。
「ディアボロスを展開する。九つの柱よ、我が糧となり、我が敵を滅ぼす力となれ」
それはまるでゲームやファンタジーアニメにでてくるような魔法の呪文だった。
洋服の内ポケットに入れていたディアボロスカードが目の前に飛び出る。
九つの角をもつ魔方陣が形成される。
ダンダリオンは飛翔能力を付与する。
セーレは防御力を向上させる。
デカラビアは攻撃力を上昇させる。
ベリアルは火炎の息の能力を付与する。
アムゥドゥスキアスは翼を授ける。
キマリスは鋼鉄の尾を授ける。
アンドレアリフスは治癒能力を高める。
フラウロスは浮遊能力を与える。
アンドラスは鋼鉄の牙と爪を授ける。
なんだ、あのエリザベス・ヴィクトリアの声がする。しかし、今はそんなことにかまっている場合ではない。
僕の体の皮膚はめきめきとさけ、とある怪物に変身した。
僕は伝説の
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