〜王子の力〜 再生魔人をぶっ飛ばす

第9話 怒髪王女

「ふざけるんじゃないです」


 密談用の部屋で、解放された闘気により金髪が持ち上がった王女、ミリアは激怒した。


 激怒したが……前回、机と椅子を吹き飛ばした事を反省し、闘気は制御したまま立ち上がる。


「……」

 その横では親友である勇者、アリアが言わんこっちゃないという顔で、事の推移を見守っていて。


「うむ」

 王は慣れたものだと、泰然としている。


 その怒りの理由は単純で、前日に助け出した王子、アルスが再び魔王軍に攫われたというのだ。


「落ち着いてくだされ、ミリア様」

 その報告をした家臣はちょっと慣れてきて、王女を宥めるために提案する。


「行先は分かっておりますから、救出に出向くのは如何でしょうか?」


「教えて欲しいです。」

 少し落ち着いた王女は家臣に話の続きを促した。




「森まで王子を助けに行ってくるです」

 場所を聞き出した王女は立ち上がり、部屋のドアを開けると一言告げる。


「僕も行ってくるよ」

 勇者も椅子を立ち、王女について行く。


「征くがよい、ミリアと勇者よ」


 部屋には泰然とした王と、頭を下げ見送る家臣が残された。


 王の声を背中に受けて、廊下を速足で進む王女。


 激怒していても廊下を走らないのは、お母様との約束だ。


 ミリアに付き合って早足のアリアが語る。

「王子様も攫われるの早すぎるよね。 お城の中庭で白昼堂々と攫われたから、追跡も余裕だったみたいだけど」

「魔王軍も面白い事をしてくれるです」


 速足に通り過ぎる二人を警備の兵は気にしない。

 

「二人ともいってらっしゃい。 気を付けて!」


 陽気にミリアと、アリアへ挨拶するほどだ。


 それに二人は手を上げて答えると、城下町を白いドレスと鎧姿の少女二人が歩いていくが、いつもの事だと誰も気にしない。


「お姫様と勇者様だ~!」

「連日だけど、いつものアレかな?」


 二人は街の外に出てきて門兵に注意喚起される。


「お二人とも、くれぐれも街道を破壊しないようにお願いします。」


 その言葉に手を上げて返す二人。


「善処するです」

「気を付けるよ」


 二人は段々と走る速度を上げていくと、風になって駆け始めた。


「私の邪魔をするなです!」「そういう事だからサンダーブレイク!」


 そんな二人の行く先には、足元を見て何かを探す小鬼が居て、停止することなく王女がジャブでぶっ飛ばして小山にぶち当てると、すかさず勇者が浄化の雷を放ち燃やし尽くす。


 軽い障害を素早く取り除いた二人が見上げると、見たことのある黒い翼の三人組が飛んでいる。


『我ら黒翼三人衆、地獄の底より舞い戻った!』

『前の我等が世話になったようだな王女たち!』

『王子の回復の闘気がある限り我等は無敵よ!』


 ふざけたことに浄化したはずの三人衆が元気に飛び回って、こちらを指差し、やいのやいの言っている。


「サンダーブレイクで浄化したはずなんだけど?」


『王子の闘気はすごいぞ!』

『羽一本でこのとおりだ!』

『魔王軍は無敵の軍勢だ!』


 アリアの疑問へとんでも無いことを自慢気に語る三人衆に、そんな隙を見逃すミリアではない。


「お片付けっ再開っです!!!」


 接近していた天翔ける王女が拳を振り上げて、自慢に夢中の三人衆をぶっ飛ばした!


『ガッ!』

『ギッ!』

『グッ!』


『『『ゲゴッ!』』』

 ぶっ飛ばされた三人衆が纏めて地面に激突して、クレーターが作られる。


 そこに待つのは当然……!


「サンダーブレイクだ!」


 剣に雷纏う勇者がクレーター内を白く焼き払った!




「流石はお母様、片付けは大切です!」

 こんな事態にお母様の正しさを再確認したミリアは、クレーターを震脚で崩して片付ける。


「そういう意味じゃ無いと思うよ?」

 その様子を眺めていた勇者が、ボケている王女にツッコミを入れた。


 三人衆を倒した二人は、王子の攫われた森へと駆け抜ける。


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