My Ordinary Life

萎びたポテト

序話 イーグルという人間について

今日も、都市の中を駆けていく。

夜中の国道を黒いバイクで走る。


常識外の人間たちがたむろする最低最悪の街の中。

彼は銃を握り、ただ金の為だけに人を殺していく。


この街で生きるなら、情などは当然持たない方がいい。


助けを乞う声も、悲鳴も、銃声に掻き消される。

火薬の匂いばかりが建物に染み付く。


やがて、彼は“掃除屋”として街の中を駆けていた。


二世代ほど遅れたデザインの携帯電話からマリンバの着信音が鳴る。

「もしもし」

『イーグル、仕事だ。詳細はメールに送った』

低い声が電話越しに聞こえた。

「OK。場所は?」

「ヤング・パイン。比較的安全だが、注意は怠るな」

「了解」

そう言って電話を切って、目的の場所までバイクは走り出す。


これは“正義”だ。悪を抹消できる手段。

俺は処刑人。悪を断罪する執行者。

人々のためなら、平然と血を被って歩いていける。

そう思っていた。


あの時、彼女に出会うまでは。


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