未確認飛行物体10
自分もそこに意見を加えていいのかと一瞬、返事に遅れるがマルクはゆっくりと口を開いた。
「僕は……。賛成です。ですが鬼一国王様がお仰った通り事前準備は必要不可欠でしょう。少しでもこちら側の安全を確保するためにも」
「そうじゃの。――そう簡単に判断を下せる問題ではないようじゃ」
「もしアレの戦力を探るならログロットが引き受ける」
するとアーサーが率先して偵察を申し出た。
「その時はグレルランの術師も何人か連れて行け。何をしてくるかわからねーが備えてておいて損は無いはずだ」
そしてここまでの内容をまとめるようにヴァレンスは現状の役割を提案した。
「ではどうじゃろうか。どちらにせよアレに関する情報は集めねばならん。その任はログロットに任せ、その間に陽花里・ベイノバ・儂の三人は協力関係を結ぶ前提で話を進めというのは?」
「ええと思うで」
真っ先に賛成したのは陽花里。
「この状況じゃそれが妥当だな」
「異論はない」
「では詳細は追って決めるとしよう」
「お前はどうする?」
すると何の前触れもなくアーサーはマルクへそう問いかけてきた。その質問に自然と全員の視線がマルクに向く。
「え? 僕ですか?」
そんな質問が飛んでくるとは思っていなかったマルクに驚きを隠す余裕は無かった。
「お前は対魔王の最前線に立つ男だ。ならその実力は確かだろう。調査に加わるか?」
「――何かのお役に立てるのなら是非ご一緒させていただきます」
一瞬の間はあったもののじっとしてはいられないとすぐに参加の意を返した。
「ではそっちの方は二人に任せるとしよう」
「ほんま次から次へと問題ばっかで難儀やなぁ」
「全く、たまにはプールでゆっくりしたいもんだ」
「うちも一日でええかからゆっくりと休みたいわぁ」
「無駄話をする暇はない。会議はもう終わりか?」
「他に何かある者はおるか?」
ヴァレンスの言葉に反応する者は誰一人おらず生まれた沈黙が代表して何もないと答えた。
「ではこれにて四ヶ国国王会議は終了とする」
会議が終わり真っ先に立ち上がったのはアーサー。そして葉巻を咥えたベイノバはハット帽を頭に被り陽花里に続いて立ち上がる。
三人はそのままドアへ向け足を進め始めたがアーサーだけはマルクの傍で立ち止まった。
「日が決まれば伝える。それまでに準備をしておけ」
「分かりました」
それだけ伝えると二人同様に部屋を後にした。
「さて、儂らも戻るとしよう」
「はい」
三人が部屋を出た後にヴァレンスとマルクも立ち上がり部屋を後にした。
それから客室に戻ったマルクはソファに腰かける人物を見ると目を丸くした。
そこに座っていたのはゴウ。彼は二人掛けソファに一人で座っており、その隣にある一人掛けソファにはアリアが、正面の二人掛けソファには宗弥とフローリーが座っていた。
「良かった……。何もなくて」
呟くような声と共に安堵の表情を浮かべるとマルクはゴウの隣に腰を下ろした。
「昨日は野宿したの?」
「あぁ、そうだ」
「夕食は何食べたの?」
「鹿を狩って食った」
「今はお腹空いてない? 何か持ってきてもらおうか?」
「マルクが完全に母親と化してるわね」
少し吹き出すような声のアリアは面白がっている様子。
「とりあえずゴウが無事でよかったよ」
マルクは不安の一つが消えたことで少し気分が楽になるのを感じていた。
「マルク。先の会議で何か決まったのか?」
すると宗弥が先ほど行われた会議の内容について尋ねた。
「詳しいことは決まってないけど、とりあえずは魔王城の上に現れたアレの調査をすることは決まったよ」
魔王のことを話さなかったのはゴウを気にかけてのことではあったが、まだ決まったことではなかった上に今は他言を控えた方がいいという判断をしたからだった。
「まぁ当然と言えば当然よね」
「それは私達だけで行うんですか?」
「いや調査をするのは僕らじゃないよ。一応、僕は参加することになったけど」
「ではどなたが?」
フローリーはそう小首を傾げた。
「アーサー国王様が指揮するログロット王国の騎士団」
「アーサー・アウレリアか」
宗弥は納得したようにアーサーの名前を呟く。彼のみならずその場に疑問を持つ者は一人もいなかった。
「あの戦う国王でしょ?」
「あの方は物凄い噂が沢山ありますよね。一人で小国に匹敵する程の強さを持っているとか」
「アタシも聞いたことあるわよ。盗賊とかそう言う界隈ではあの人の首に一生遊んで暮らせる程の懸賞金がかかってるとか」
「オレはあの鎧は十五という若さで黒竜を狩ってその鱗で作ったっていうのを聞いたことがある」
放っておけばいくらでも出来てそうな噂をマルクもいくつか知っていたが、それは伝説のようなものから呆れるようなものまで様々だった。
「俺の国にもその名は轟いていた。それに一目置いている者も多かったはずだ」
「確かソウって温羅靖の国出身だったよね?」
その質問に対して宗弥は一度頷いて見せた。
「刀の扱いに長けた人達が沢山いるあの国でも一目置かれてるって……。さすが騎士王って呼ばれるわけだよ」
マルクは腕を組むと実際に自分の目で見たアーサーを思い出しながら彼の実力を見ずともその凄さに思わず頷いた。
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